変えていく世界
銀色の少女
《ラロシアアイスへ移動しました》
「……懐かしいな」
なんだかんだ、俺はこのラロシアアイスが好きだ。
兄と出会った場所であり、亡霊と戦った場所であり、後は――
《――「商人ならシルクロードとか憧れるよなぁ。RLにもあるんかな」――》
《――「ははは、アレ何千キロあると思ってるんだ?」――》
商人NPCの居るこの場所は、人が寄りつかない『商人スポット』だった。
アスパイアともここでよく会っていた記憶がある。
そして俺は――この前、彼と話したんだよな。未だに実感が沸かない。
久しぶり繋がりで……あっちにも行ってみるか。
☆
《始まりの街に移動しました!》
――「おい、アレ」「確か例の」「なんでこんなとこに」――
レベル10程度の者が集うその町に。
移動した瞬間、目線が痛かった。
確かにレベル50間近だけど、そこまで変か?
ちなみにRL、レベル49から凄くレベルが上がりにくくなる。
通称50の壁。本格的にレベル上げをしていない俺はまだまだ程遠い。弟子に抜かれたら考えよう。
「……っ」
降りかかる目線を避けるように歩く。
早足で戦闘フィールドへ。ゆっくり街でも見たかったのに。
《スライム LEVEL1》
「うわっ懐かしい」
思わず呟く。
恐らく今の自分なら、武技じゃなくても一撃で終わるだろう。
《――「えへへ、スライムですよ!」――》
「本当に懐かしいな……」
『ピギ』
今はもう、随分セピア色に染まったその記憶。
そういえば人に教えたのは、レンやドクが初ではなかった。
シルバーに武技を教えたのが初めてなんだ。
今の俺なら、彼女にどう教えるだろう。
「斧は、遠心力を生かして――」
『ピギ!?』
《経験値を取得しました》
「時には投擲も――」
『ピギッ!!』
《経験値を取得しました》
「基本攻撃は敵の一撃を避けてから――」
『ギッ……』
《経験値を取得しました》
いつも武技ばかり使っていたから、斧本来の攻撃を連発するのは新鮮だった。
気付けば熱中し――
☆
「何やってんだ俺は……」
経験値ほぼゼロのモンスターに、平日の貴重な数十分を費やしてしまった。
レベル49の商人がレベル1のスライムを延々と狩る風景なんて、傍から見ればヤバい奴。
商人のイメージすら下げかねない、本当に何を――
「っ――!?」
――視線を感じた。
後ろから。
そして、そこに居たのは。
《シルバー 商人 LEVEL20》
「ぇ……」
「……シルバー?」
本当に久しぶりに見る、銀髪の少女だったのだ。
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