変えていく世界

銀色の少女


《ラロシアアイスへ移動しました》


「……懐かしいな」


なんだかんだ、俺はこのラロシアアイスが好きだ。

兄と出会った場所であり、亡霊と戦った場所であり、後は――


《――「商人ならシルクロードとか憧れるよなぁ。RLにもあるんかな」――》


《――「ははは、アレ何千キロあると思ってるんだ?」――》


商人NPCの居るこの場所は、人が寄りつかない『商人スポット』だった。

アスパイアともここでよく会っていた記憶がある。

そして俺は――この前、彼と話したんだよな。未だに実感が沸かない。


久しぶり繋がりで……あっちにも行ってみるか。



《始まりの街に移動しました!》


――「おい、アレ」「確か例の」「なんでこんなとこに」――


レベル10程度の者が集うその町に。

移動した瞬間、目線が痛かった。

確かにレベル50間近だけど、そこまで変か?


ちなみにRL、レベル49から凄くレベルが上がりにくくなる。

通称50の壁。本格的にレベル上げをしていない俺はまだまだ程遠い。弟子に抜かれたら考えよう。



「……っ」


降りかかる目線を避けるように歩く。

早足で戦闘フィールドへ。ゆっくり街でも見たかったのに。


《スライム LEVEL1》


「うわっ懐かしい」


思わず呟く。

恐らく今の自分なら、武技じゃなくても一撃で終わるだろう。


《――「えへへ、スライムですよ!」――》


「本当に懐かしいな……」

『ピギ』


今はもう、随分セピア色に染まったその記憶。

そういえば人に教えたのは、レンやドクが初ではなかった。

シルバーに武技を教えたのが初めてなんだ。


今の俺なら、彼女にどう教えるだろう。


「斧は、遠心力を生かして――」

『ピギ!?』


《経験値を取得しました》


「時には投擲も――」

『ピギッ!!』


《経験値を取得しました》


「基本攻撃は敵の一撃を避けてから――」

『ギッ……』


《経験値を取得しました》



いつも武技ばかり使っていたから、斧本来の攻撃を連発するのは新鮮だった。

気付けば熱中し――



「何やってんだ俺は……」


経験値ほぼゼロのモンスターに、平日の貴重な数十分を費やしてしまった。


レベル49の商人がレベル1のスライムを延々と狩る風景なんて、傍から見ればヤバい奴。


商人のイメージすら下げかねない、本当に何を――


「っ――!?」


――視線を感じた。

後ろから。

そして、そこに居たのは。



《シルバー 商人 LEVEL20》


「ぇ……」

「……シルバー?」



本当に久しぶりに見る、銀髪の少女だったのだ。

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