劣勢


「――ぐあっ!! 嘘だろ、今までどこに――」

「グラ!?」



落ちていく内藤さんとドラゴン。


助けないと。

このままでは、ニシキ君と後衛の追撃で――



「――『ウィンドアロー』!」


「っと、そこか――!?」



彼へと放った一矢は、また余裕で避けられた。

しかも――顔を見られてしまった。


逃げなきゃ、逃げないと……!



『……息していい?』

『ニシキさん固まった?』

『多分ハルちゃんだとバレた』

『何にせよチャンス!!』


『……あっ駄目だわ ニシキ再起動した』

『内藤さーん!!』

『ヤバいって』

『あっちゅーまに体力三割www 後衛の威力やべえぞ』




「っ――くそっ、バイオレット!」

「グラ……」


「――『パワースウィング』」

「ぐっ!!」



バイオレットちゃんはまだ怯み中。

ニシキ君の後衛の姿はアレから見えない。

しかし内藤さんはもう、後衛の存在で『ドラゴンコール』を使えない。


今、ニシキ君との地上戦で――完全に劣勢に立たされている。

HPは二割を切った。



「……っ」



どうする?

プランFは崩壊した。

後衛が居るという認識を私達から消す為にずっとニシキ君は一人で闘っていた。

そして完全に油断した瞬間を捉えられ一気に劣勢に。精神的にもかなり追い詰められた。


私達二人でニシキ君を抑えられたけれど、それに後衛が加わっているとなれば話は別。

……どうすれば良いの?



《っ――ハルちゃん》

《は、はい!》


逃げながらもメッセージを飛ばす内藤さん。

その声には、何かの意思があった。



《プランFは破棄。ハルちゃんはあの後衛を何とか止めてくれ》


《俺は――ニシキにバイオレットと、全力でぶつかってみたい》


《っ、良いかな?》



途切れ途切れのメッセージ。

でも、どこか吹っ切れた様な声。


そんなの――断るワケないじゃない。



《任せて!》


《……ありがとう。10秒後にドラゴンコールだ――》


《了解!》



「っ、よし……『アローチャージ』」



メッセージの後、廃墟の階段を上り二階の窓へ。

そして同時に溜めスキルを発動。


……この広いデッドゾーンで、後衛を見つけるのは至難の業だ。


それでも――止める手段はある。

というか、今考えたわ!



《避けて下さいね、内藤さん――!》



「――『ストーンアロー』!!」



ニシキ君と内藤さんが向かい合う中。


私はその中間地点に、高所からのストーンアローを放った。

狙うはその地面。

その矢は『石』で出来ており――『砂漠』にそれが衝突した時。



「っ――!!」



大量の『砂埃』が舞い上がるのよ!


「……『ストーンランス』――」


「『ドラゴンコール』!!」

「グラァ!」


『すげえよハルちゃん、土壇場でよく考えた』

『うおおおアっぶねえええ!』

『浮上したああああ!』

『もう乗れないかと思ったよ』



狙い通り……砂埃のおかげで、後衛の狙いが逸れた。

そのまま内藤さんは空中へ。


そして――『彼女』の場所も分かった!



「――『ウィンドアロー』!」


「――っ……」



彼女が隠れているであろう、廃墟の影に牽制。


内藤さんには攻撃させない。

攻撃するのは私よ!



《内藤さん、頑張ってくださーい!!》


『がんばれーーー!!』

『ニシキを倒せるのはサブマスしかいねえ!』

『うおおおおお!』

『普通なら応援するの商人側なんだけどな……』



彼にエールを。

この決闘、絶対勝つんだから!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る