デジャヴ



クエスト『王都騎士団の片手剣』


王都騎士団が用いている片手剣の一つが壊れてしまったらしい。

見た目の損傷も激しくないが、剣の持つ力を発揮出来なくなったということ。

捨ててしまうのならと、商人ギルドにて預かったが持て余している様だ。

どうにか修理したら、君のモノになるだろう。


報酬:王都騎士団の片手剣




『……って訳で、君には前に騎士団の片手剣を交易してもらったからね。譲る事にするよ』

「はあ……どうも」

『決して扱いに困っていた訳ではないからね! はっはっは』

「……」


そのクエストが現れたのは、少し前に交易クエストを完了させてからの事だった。

実際あの時かなり良い武器だと思ったから――まさか貰えるとは。

いやまだ壊れたままなんだけども。


『それじゃほら、コレだ』

「ああ――」


《商人の知識(武器)スキルが発動しました!》

《アイテム・『王都騎士団の片手剣』が更新されました!》


「!」

『? それじゃ後は任せたよ』

「わ、分かった」


突如となるアナウンス。

びっくりした――貰った瞬間スキルが発動するとは。


というか更新されましたって……



【壊れてしまった王都騎士団の片手剣】


クエストアイテム。

王都騎士団が使用している片手剣だが、現在は壊れてしまっており本来の力を発揮できなくなってしまった。


一見綺麗ではあるが、宝石の台座部分が歪んでいる様に見える。

その道の職人に頼めば治してくれるかもしれない。



「……もうコレ、答えだよな」


宝石の台座って事は――もう、思い当たる職人は決まっている。





「もう終わるよ、ニシキ」

「……まさかこんな簡単に」

「ホホホ、そんな程度でソレを手放すなんて騎士団も未熟さね」

「はぁ……こっちとしては助かるから良いよ」



アレから、俺はロアスさんの家へ。

正直距離的にはガーネットの方が近かったが、久しぶりに彼女の方を選んだ。


手紙で知っているだろうけど……エリアの事も話したかったからな。腕も確かだろうし。


「エリアの事も聞けたし、タダでいいさね」

「! ありがとう。助かるよ」

「ん、王都の職人は金を取るからこっちに来たんじゃないのかい?」

「いやいや違うって。こっちとしてもタダでやってもらおうなんて――」

「それじゃあ取ろうかね」

「ええ……」

「フフッ冗談さ! それじゃまたおいで」

「ああ、ありがとう」


またからかわれた。

でも、こういうやり取りは嫌いじゃない。


「それじゃ――」


彼女から剣を受け取ると同時に、俺は別れを告げた。



《『王都騎士団の片手剣』クエストを達成しました!》

《報酬として『ヴィクトリアソード』を取得しました!》


《通常フィールドに戻ります》

《ラロシアアイス・辺境に移動しました》


《ヴィクトリアソードの効果を選択して下さい》



そのアナウンスは初めて聞くものだ。

同時に持っている王都騎士団の剣の上に、ウィンドウが現れる。



「こういうパターンもあるのか……というか名前変わってるし」




【ヴィクトリアソード】


好きな効果を二つまで選択してください


[ステータス上昇(STR)]……STR+10

[ステータス上昇(AGI)]……AGI+10

[ステータス上昇(DEX)]……DEX+10

[ダメージ増加]……この剣で与えるダメージが増幅

[吸収(HP)]……この剣で敵にダメージを与えた時、確率でHPが微回復




「……決めた」




【ヴィクトリアソード】


ATK+65 AGI+10 属性[ダメージ増加][ステータス上昇]  必要DEX値20 STR値30


王都騎士団が採用している片手剣。

切れ味が良く、敵へ与えるダメージが増える。

またステータスが上昇する。


レアリティ:5


製作者:???





「うん、これはいいな……」




剣は居合の時に使うからAGIが上昇するとそれだけ脅威になる。

ダメージが増えるのも良い。ただHP吸収効果と悩んだんだが、逆境スキルの邪魔になりそうで止めた。


亡霊の魂斧ほどの攻撃力はないが、その付与効果は大きい。

うん、中々良いんじゃないか――



「――っ!?」



そうヴィクトリアソードを眺めていた瞬間。

不意に、背中を冷たい感覚が通った。


そしてそれは、複数の。

この辺境。

この殺意。

この感覚。


『デジャヴ』……そんな言葉が過っていく。



《??? level57》


《??? level47》


《??? level49》




「ほう、今度は先に気付いたか――」



それは血の様に紅く、長い髪。

見た目は青年だ。声はそれ程大きくないが、頭の中に響く低い声。

左手に盾を、右手に剣を持つ彼。


『蛆の王』の――『レッド』だった。



「久しぶりだね、『ニシキ』」

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