攻略・ヴィクトリア深部③


《200,000Gを取得しました》

《200,000Gを取得しました》



「……最高だ……」



インベントリに入って来る大量のゴールド。

アレから横も来ないし――


《ゴールドスライム LEVEL48》

《ゴールドスライム LEVEL48》

《ゴールドスライム LEVEL48》



「……ほんとに夢じゃないよな――『アックスブーメラン』!」


周囲はしっかり見ていたから、安心して俺は斧を放つ。

もしコレが当たってしまったら厄介だしな。


『『『『ピイ!』』』』


聞こえる金貨の大合唱。

いつまでも聞いていたい――



「――!?」


殺気。

後ろから。

これは――



《ペリリトン LEVEL48》

《ペリリトン LEVEL48》

《ペリリトン LEVEL48》

《ペリリトン LEVEL48》

《ペリリトン LEVEL48》


《はると 神聖騎士 LEVEL49》

《狩り狩りクン 格闘士 LEVEL48》



「――ハハッオーライオーライ!」

「ちょっと集めすぎじゃね……?」


『ッカアー!!』

『カー!』

『カアー!!』

『ッカアー!!』

『カアッー!』


耳を劈くペリリトンの鳴き声。

それは間違いなく水辺エリアのモンスターだ。

なのに、この草原エリアに迷い込んでいる。

いや――迷い込むというより『誘導』された、が正しいか。



「……周囲の目とか気にしないのか?」


「ああ!? っとアブね……」

「さっきからお前ムカつくんだよ、だから死んどけ」



俺の前へと移動し――周囲をペリリトンがぐるぐると飛んでおり、今にも降下攻撃を行いそうだ。

このまま彼らがゴールドスライムの近くに居れば、俺の攻撃がペリリトンに当たりターゲットがこちらに向く。


いわゆる――MPK(モンスタープレイヤーキル)ってやつだろう。



『ピイ!』

「『スラッシュ』――っ!?」


『カア――!!』

「くっ、『高速戦闘』!」



ゴールドスライムへ武技を入れた瞬間、前の神聖騎士を狙った水弾が軌道上に居る俺へと飛来。


やむを得ず高速戦闘を使って避ける。

そして当然、避けた先は――



「――うわぁ!? くそッ当たれよ!」


「そんな面倒な事しなくても……君達自身が俺に向かって来ればいいじゃないか」


「はぁ!? んな事してお前を倒せばPKペナルティ付くだろうが!」

「バカじゃねーの」


「……そうか。『スラッシュ』――っと!」


「ぐぅ!?」



《200,000を取得しました》



ゴールドスライムへ一撃、滑空してくるペリリトンを屈んで避ければ――また彼らに攻撃がいく。


ちょっとでも期待した俺が馬鹿だった。

このゲームは狩場でプレイヤーに手を出したらその時点で名前がPK職と同じ『赤文字』になる。

そりゃそうだよな、MPKするぐらいだからソレに手を染めたくないか。



「……なら」



MPKなんて、滅多にないPKの種類だ。

彼らには『感謝』しないとな。

もしかしたら今後、そういう敵が現れるかもしれないし。



「申し訳ないが――もう少しだけ俺を眺めていてくれ」





『カアー!!』

『ッカアー!!』

『カアッー!』



「――っ、『アックスブーメラン』!」



降り掛かるペリリトン三匹。

それらに当たらない様――軌道を予測し斧をサイドスロー。

狙いは二匹のゴールドスライムだ。


『ピイ!?』

『ピ……』



《200,000Gを取得しました》



「ぐあッ!!」

「何でコイツさっきから当たらねーんだよ!!」



大体6時間の練習は嘘を付かない。

片手斧の挙動は――しっかりと、ペリリトンと彼ら二人を避けて俺の手の中に戻って来る。



「――『スラッシュ』」


「ピィ……」



《200,000Gを取得しました》



「終わった!!き、来た!やれ――」


「――『ラウンドカット』」



《ゴールドスライム LEVEL48》

《ゴールドスライム LEVEL48》

《ゴールドスライム LEVEL48》



『「『ピィ!?』」』



「……ごめんな、早い者勝ちなんだ」


「クソッ!! うわぁ!?」

「ま、前!!」


「あ」


身をかがめて、ゴールドスライムへのラウンドカット。

その上空をペリリトンが通り過ぎて――彼らの一人は死んでしまった。

……。



「――もう、良いか」



思わず嘆く。

正直――ストレスだった。

我慢するのも、攻撃をひたすら避けるのも。


俺は魂斧を構え直す。

迫りくるソイツに向いて。


「ひっ――!」



こうして彼らも一人になった。

そろそろ潮時。

さっきから――『ソレ』を倒したくて、仕方が無かったんだ。



「……本当に、感謝するよ。君達には」



身体も随分温まった。

今なら、やれる気がする。


俺は魂斧を振りかぶった。

サイドスロー。目標は勿論――




「――『アックスブーメラン』!!」


「や、やめ――うわッ……」



飛んでいく斧。

それは――『上空』へ。



『カアー!?』

『ッカ!?』

『カ――』



この、『ペリリトン』の集団に。

自分を試したくて仕方が無かったんだ。


はは。流石にプレイヤーは倒さないぞ。

俺は商人だからな。



《200,000Gを取得しました》

《200,000Gを取得しました》


「……はー、最高だったな……」


アレから俺のHPは1割まで減少。

ポーションも使いながら……ペリリトンの群れに奮闘する事数十分。

それでも何とか倒せたよ。


アックスブーメランが楽し過ぎる、対人戦では扱いにくいけどな。

モンスター相手だと動きが予想出来るからかなり輝くんだ。



「ご、合計で三百万か。はは……」



思わぬ収入。ホクホクだ。

充実した時間に報酬も得られて……彼らには感謝だよ。

明日は弟子達の特訓もあるしここらで落ちておこう――今日はぐっすり眠れそうだ。


……あ、ちなみにもう一人はゴールドスライムの突進に巻き込まれて死んだ。

策士策に溺れる――はは、少し意味合いは違うかもしれないな。

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