アバロン②



《決闘を開始します》




「『瞑想』――『パワースロー』」


「ふっふ、いきなりだなぁ!当たる気しねえけど……『邪眼術じゃがんじゅつ毒眼どくがん』」



《瞑想状態となりました》


《状態異常:毒になりました》



「!?」


「ほらほら、来ないとそっちが死ぬぜー?」



俺のスチールアックスによる投擲は、道端の石を避ける様に簡単に避けられた。


そして――彼の両目が今赤く光ったと思えば、今俺のHPがじわじわと減っている。

毎秒1%程度か……かなり痛い。


どう考えても、あの『目』が何かしているのは分かるが。



「――い、言っとくけどコレはチュウニビョーってヤツじゃねえからな!そんな見んな!!」


「はは、だからそういう訳には行かないっての――『スラッシュ』」



目をそらして地面にやるアバロン。

それに返しながら走り、接近。そのまま取り出していた魂斧で武技を発動した。



「ん――やっ、と……『邪眼術じゃがんじゅつ能奪のうだつ』!」


「!な――」



《状態異常:毒が解除されました》


《状態異常:移動速度低下になりました》



俺の足に目をやっていたはずの彼は、華麗に武技の筋を見切って避けた。


そして――アバロンの右目が今度は『緑』に光り。

一拍置いて、俺の足が鉛の様に『重く』なったのだ。



「ふっふっ当たらないね、『スティン――ッ!?」


「――おいおいこれも避けるか、良い目を持ってるな」



俺が逃げられないと分かり確かに彼は油断していたはず。

小刀を振りかぶろうとした瞬間、俺は右手に持っていた麻痺毒を彼に掛けたのだが……避けられてしまった。


早々にこの手を使わされるとも思わなかったし、まさか回避されるとはな。



「……オマエ、汚い戦法!」


「はは、あいにく俺はこういう闘い方しか出来ないぞ」


「うおおー!成敗だぜ……『眼術がんじゅつ弱視じゃくし』!」


「! 今度は――」



《状態異常:弱点公開になりました》



次は右目が白く光り――俺の『胸』に、赤い印の様なモノが現れる。

……これクマーのスキルに似てないか?


というかさっきから新しい状態異常出過ぎ――



「――『スプリント』……『スティング』!」


「くっ――!」



――なんて考えてる暇も無い!


バフによるAGIを上げ、武技を発動するアバロン。

足も重いままで避けるのは不可能。



「がっ!!」


「ふっふう!まずは一発――」


「――らあ!」


「っと、見えてたぜぇ!『ダブルエッジ』!!」



凄まじい目の良さだ。

カウンターで振り上げた斧も避けられ、更に武技を俺へと発動する彼。


……まずいな、コレは。

とにかくこの連撃を何とかしなければ。



――考えろ。


どう考えても、このデバフは長く続きすぎている。

何か――『解除』の手があるはずなんだ。


そう。

例えば、今もなお光っている、彼の『目』から逃れるとか。



「――貰ったぁ!!」



ゆっくりと進む時間の中。


迫る刃。

避けられない。


でも――避けられなくとも、『反撃』は出来る。

不格好でも良い。

とにかく今は彼の目から逃れるんだ!



「ぐっ……らあああ――っ!」


「!? う、うわぁ!!離せぇ!『スティング』!!」



俺は胸への連撃を食らいながら――右手を彼の眉間に持っていく。

衝撃を何とか耐え、そのまま彼の視界を防いでやった。




《状態異常:移動速度低下が解除されました》


《状態異常:弱点公開が解除されました》



「っ――がっ!」


「ぐうッ!!く、クッソぉ、強引すぎ――はあ、はあ……」



暴れる彼の一撃を食らってしまったが、狙い通りその状態異常は解除された。



「なるほどな……右目、左目で一つずつその魔法が使えると。最初の毒は両目を使うんだな」


「んあ!?」


「それと一番大事なのは――術の継続の為には、君が俺を見ていないと駄目だって事だ」


「……さっきから何だよ!そんな当たり前のこと喋って!」


「いや、一応君に確認しておこうと思ってな。教えてくれてありがとう」


「……?あ、オマエ……うああムカつく!!」


「ははは」



どうやら俺の予想は100点だったらしい。

彼の単純さは利用してて少し心が痛いな。



「オマエ、自分の状況分かってんのかよぉ!おれに一撃も当ててねえんだぞ!」


「それは重々承知の上だよ」



俺のHPは早くも半分を切っている。

『弱点公開』によるダメージの増幅が痛かった。あそこで武技を二度食らったしな。


対して俺はまだ彼に一度も攻撃を食らわせていない訳で。



「……うああムカつく!さっきの手は食らわねぇ、もうアンタは俺の視界から逃げさせない!」


「ははっそれはどうかな」



あの眼術とやらは距離の制限もあるのだろう……じりじりと近付く彼。


俺はそれに――インベントリからあるモノを取り出しながら言葉を返した。

マコトには使わなかった……その『瓶』を。




「来い、アバロン。しっかりと――『俺から目を離す』事の無いようにな」

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