アバロン①
「……で、何だ」
「あー!オマエが先に見つけたから渡す感じじゃなくなったじゃねーか!」
「はあ……?」
《†殲滅のアバロン† LEVEL49 ???》
後ろで俺をじっと見ていた正体。
キッドと同じ……名前の見えるPK職。
小さな身体に、青がかった白い髪のショートカット。
そして特徴的な黒い赤の瞳と、灰色の瞳。
そう――彼は『オッドアイ』なのだ。
「あ、あんまり、お――『我』を見つめるな!」
今俺って言いそうにならなかったか?
……まあ、ロールプレイに突っ込みを入れるのは野暮だろう。
その名前からして、かなり『深い』モノだろうし。
「あっオマエ今おれの名前見て目逸らしたな!?」
「……い、いや違うって」
「うがー!!」
「あー、周りの目が気になるしちょっと外に出ようか」
まるで野生児だ。
その名前とは裏腹に声が大きい。
結局1人称戻ってるし。
後……周囲のプレイヤーがかなり見てる気もする。
「何あれ?PK職?」
「その割に名前出してるしうるさいし何なのアレ」
「しかも喧嘩売ってるの……しょ、商人って」
「何やってんだ?」
「あの二人、アンリアルで見たような――」
……どうやら気のせいじゃないらしい。
「あっやべ。うるさかったんだ、ごめん」
「はは、別に良いよ」
そして案外、彼も素直な様で。
とにかくこのままでは色々不味いので外に出なくては。
☆
「外だ!!」
「ああ」
「って事でアンタにコレを叩きつける!オラぁ!」
「……?」
地面に叩き付けられたのは――
《果たし状》
「うあー!ミスった!今の無し!!」
「……あ、ああ」
「――う、受け取れ!」
《†殲滅のアバロン†様から果たし状が渡されました》
《受け取りますか?》
《受け取ると†殲滅のアバロン†様との決闘準備状態になります》
《お互いにメニューから『決闘開始』を選択すると決闘が始まります》
《決闘条件は『時間制限10分』・『復活不可』です》
「……こんなアイテムあるのか」
どうやら決闘の申請がアイテムになったモノらしい。
決闘の設定もあらかじめ設定してあるんだな。
ぶっちゃけ……これはメールとかで渡すもので、今の状態じゃあんまり意味無いと思うんだが。
「で、受け取ってくれるよな……?」
心配と期待が見える表情。
……まあ、流石にそれを言うと彼に悪いか。
「はは、ああ。勿論」
「! よっしゃー!」
《果たし状を受け取りました》
《†殲滅のアバロン†様との決闘準備状態になりました》
「……うおーすげー!果たし状ってこんな感じなんだ!」
「ああ。俺も初めてだよ」
無邪気に喜ぶ彼を見ると、やはりそれは初めてだった様で。
正直、ますますなんで俺に決闘を挑むのか分からない。
が……。
これを叩き付けた時点で、彼なりに理由があるのだろう。
そこから当然逃げる気は無い。
「俺は何時でもいけるぞ」
「もちろんおれもだ!」
「はは、それじゃ――」
《お互いに『決闘開始』が選択されました》
《決闘専用フィールドに移動します》
「――よろしくな、アバロン」
「……おう!」
《決闘申請が受理されました》
《決闘は三十秒後に開始されます》
「……で、アバロンはどうして俺に決闘を?」
「この世界の『師匠』サマに言われたからだ!」
「師匠?」
「ああ!万に一つ、王都で見るからに強そうな『商人』を見つけられたら闘ってみろって言われた」
「なんだその適当な……というか王都でって、どれだけのプレイヤーが歩いてると思ってる?」
実を言えば、レンやドクを連れて歩いている時から視線には気付いていた。
元々『商人』である俺を見る目線は多いんだが……彼のそれは、まるで俺を『獲物』として見ているようで。
喫茶店に入れば――なんて思ったがその時には既にかなり近くまで彼は居た。
ほぼ同じタイミングに店内に入ったせいか、同じチャンネルの喫茶店に入ってしまったのだろう。
「そりゃ――商業エリアの上から眺めてたら運良くアンタを見つけたんだよ!おれぁ目が良いからな!」
「……どんな目だよ」
「へへへ……あんま褒めんな。オマエみたいな商人なんて、さっさと倒して師匠に報告するぜ!」
「はは、そうか」
照れる様に笑う彼。
上からプレイヤーの山を見た時、当然だが全プレイヤーの名前や職業表示なんて見えない。表示すると多すぎて訳が分からなくなるだろうからな。
だから『商人』と判断するには、その膨大な量の人の外見から何とか判別するしかない訳で……とんでもない規模の間違い探しをしている様なモノだ。
それを苦にも思わず行ったってのは――
《決闘は十秒後に開始されます》
「……?おいおいあんまり見るなよ!」
「そういう訳には行かないな」
このゲームを持ってる時点で子供ではないと思うんだが、その表情はレンやドクよりも幼く見える。
彼の防具は軽そうなローブに、武器はナイフ。それも『一本』。
どうやら盗賊や暗殺者の様な純近接職ではないらしい――PK職ではあるんだけどな。
だとすれば、あの水魔法を扱った彼の様に魔法を使ってくる可能性がある。
……その割に杖は持ってないが。
《決闘はまもなく開始されます》
とりあえず戦闘のプランは立てた。
彼に通用するかは分からないが――
まあ、やるだけやってやろうか。
《決闘を開始します》
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます