シークレット・ダンジョン⑨
☆
《ヴィクトリアゴーレム LEVEL45》
『GOAAAAAAAAAAAAAAA!!!』
「う、うるさ……」
「デカいな……」
大地が震える様な鳴き声。
火山口の様な広がる空間に、そのモンスターは居た。
地面を見下ろす様に俺達を見る石の巨体。
大きさにして――五メートルはあるんじゃないか?
ただその代わり、動きは遅そうだ。
「――『パワースロー』!」
『GOAAAAAAAA!』
こちらへ向かって来るゴーレムに向け、まずはスチールアックスで投擲を。
的は大きい。とりあえず急所っぽい頭を狙ったが――
「……え、減ったのか?今」
「大丈夫、無敵って訳じゃないわ。よく見たらミリ……いやマイクロメートル減ってる」
「それほぼゼロだろ……」
思わず嘆く。
見た目通りっちゃそうなんだが、幾らなんでも硬すぎるぞ。
「まあ、こんな時の『鑑定士』なんだけど――『弱点分析』!」
『GOAAA?』
彼女が、これまでかなり活躍してきたそのスキルを発動。
すると――その赤い印は、ゴーレムの『右腕』の先、『拳』に表示された。
「ふふっ、隠していた弱点が丸見えね」
「そうだな――これは流石に気付けない」
まさか、今その巨体が振り下ろそうとしている拳が弱点だったとは。
というかソレで攻撃して減らないのはどうなんだ……?
「予定通り、クマーはヘイトに注意しながら補助、余裕あれば攻撃してくれ!」
「ええ!勿論よ――暴れてきて!」
クマーが後ろへ下がっていくと同時に、俺は斜め前へと進む。
このままじゃ、俺はこの土塊の下敷きになるからな。
『――GOOOOOOAAAAAAA!!!』
「う、うおお!」
大振りな攻撃。
俺の横で、巨大な拳が地面を叩いた。
「っ――『スラッシュ』!!」
赤い印は目の前!
足元が揺れる中――何とか俺はその弱点へと武技を命中させる。
『GOAAAAAA!?』
空気が揺れる悲鳴を上げ、ゴーレムは再度右腕を振り上げた。
……大丈夫、コイツは迫力はあるが――その動作はかなり遅い。
「――『瞑想』」
《瞑想状態になりました》
ゴーレムがまた腕を振り下ろそうとする中、俺はそのスキルを発動した。
鳴るアナウンス。
こういう時こそ、落ち着いて行動しないとな。
「――『パワースウィング』!」
『GOAAAAAA!?』
大振りな攻撃を避けながら、ジャンプして振り下ろされた腕の赤い印にその武技をぶつける。
悲鳴と共に――そのボスのHPは、残り9割になっていた。
「……これは、何とか行けそうだ」
☆
ゴーレムの攻撃パターンは単純。
攻撃が近距離でこちらに集中している場合は、拳の振り下ろし攻撃と足の踏み下ろす攻撃のみ。
どちらも攻撃前、中後全てに隙が大きく――正直当たる気はしなかった。落ち着いてさえいれば。
現実で瞑想していた甲斐があったよ。集中力が欠けて――そして一発でも貰ったらどうなるか分らないからな。
「思ったより余裕だったわね!『弱点分析』!」
「ああ、でもクマーのおかげだよ――『パワースウィング』!」
経過時間は1分と少し。
その魂斧で、残り1割となったゴーレムへ最後の武技を当てる。
『GOAAAAAAAAAAAAA!?』
そのHPバーがゼロへと向かって、そのまま巨体が地面へと倒れていく。
――そして。
「……へ?HPバーが復活して――全快してるじゃない!?」
倒れたはずのゴーレムは再度立ち上がり、HPバーを『張り替えて』いた。
全回復したように見えたHPバーの横には――確かに、『×4』の表記が現れている。
「いや、アレは――単純に、『一枚』剥がしただけだな……」
「……タチの悪いギミックねもう!最初から表示しときなさいよ!」
土埃、再度俺達を見下ろすゴーレム。
そしてその姿には――あるモノが追加されていた。
「……つ、『翼』ぁ!?」
「はは……不格好にも程があるが――」
『GOAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』
それを羽ばたかせ、この洞窟の中で飛び上がるゴーレム。
そして――その羽ばたいた翼から、一メートル程の大量の石柱の様なモノが飛ばしてくる!
「――クマー!俺の後ろに!」
「分かったわ!」
迫る石柱。
クマーが背中に来た事を確認して――俺はそれに構える。
……大丈夫。
数こそ多いが、実際にこちらへ向かってくる石柱は一つだけだ。
なら、それだけに集中すれば良い。
「――『パワースウィング』!」
《Reflect!》
「――行け!」
反射によって石柱が逆にゴーレムへと向かっていく。
羽ばたいている翼の元へ一直線に――
『GOAAA!?』
激突。
そしてその浮かんでいたゴーレムが地面へと落下し、轟音を響かせる。
見れば――HPも三割近く減っていた。
そして倒れている巨体。
「――よし!チャンスだ、『パワースロー』!!」
『GOA!?GOAAAAAAA……』
「こっちも攻撃出来るのよ!『ウォーターブラスト』!!」
「――っ、『スラッシュ』!」
俺とクマーの遠距離攻撃が、弱点である拳に到達。
その後魂斧を拾って再度一撃を入れて。
『GOAAAAAAA!?』
一気に半分まで減った。
翼を持ったことで逆にやりやすくなったが――まだ、HPバーは三枚あるんだよな。
この後もずっと同じ形態で居てくれたらいいんだが。
……まあ、そういう訳にはいかないよな。
「まだまだ――」
俺達は、またヴィクトリアゴーレムへと向かっていった。
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