シークレットダンジョン編

シークレット・ダンジョン①


『ね、ダンジョン行かない?ニシキ』


『びっくりした、いきなりだな』


『貸し――覚えてる?返すチャンス』


『え……そんなので良いのか?』


『ふふ、別に良いわよ』



そのメッセージは、唐突に届いた。

クマーからのそれ。


『ダンジョン』……気になってはいたけど後回しだったな。

これもレベル40、上位職に転職後解放されたコンテンツだ。

一日一回入場出来るそれは、普通に狩りするよりも豪華な報酬が待っているらしい。


ちなみに戦闘フィールドに行く必要はない。

クエスト掲示板から『ダンジョンマッチング』を選択すればそのままダンジョンへワープするんだとか。

今選べるのは『始まりのダンジョン』のみ。マップを進んでいくと、更なるダンジョンが現れるという。



『ベアー今ログインできないじゃない。だから暇なの、貴方まだ行った事無いでしょ?』


『なるほどな、俺としては願ったり叶ったりだよ……ソロで行くつもりだったし』


『それは良かったわ。なら、また工房へ来て頂戴』



俺に彼の代わりが務まるとは思えないが。

……というか、クマーが『暇』なんて事あるのか?


色々引っ掛かるが、まあありがたい話だし良いか。



《クマーから熊さん工房への招待が届きました》


《熊さん工房へ移動します》





王都ヴィクトリア、非戦闘フィールド。

そこで俺とクマーは話していた。



「これが復活の書。パーティープレイなら必須のやつ」


「こんなのあるのか」


「ええ。自分自身は無理だけど仲間はこれで蘇生出来るの。王都から使えるアイテムよ。NPCから安価で買えるわ、サクリファイスドールとは違ってね」


「……ソロだと馴染みが無いからな」


「ふふ、そう思って説明しといて良かったわね……ダンジョンではどっちみち回数制限があるけど、数は持っておくに越したこと無いわ」



まあ、確かに仲間の蘇生アイテムを忘れました――なんて言ったら嫌な目をされるだろうな。



「ダンジョンは推奨五から六人。最低四人から挑めるの。パーティー人数が三人以下だったら、人数が五、六人になる様自動でパーティを組んでくれるシステムがあるのよ」


「へえ……それは便利だな」


「でしょ?『野良』でパーティを組む以上、持つべきアイテムはしっかり持っておかないと『地雷』扱いなんだから」



……クマーが居てくれて良かった。

危うく俺は地雷原になるとこだったな。



「はい、一杯持ってるから私の分あげる」


「え。良いのか」


「ふふん!前の特殊クエストあったでしょ、あれかなり報酬美味しかったの」


「……どれぐらい貰ったんだ? 」


「まあ一万Gなんて霞むわよね」


「はは、うらやましい話だな」


「ええ――それじゃ、はいどうぞ」



《復活の書×3をクマーから譲渡されました》



「ありがとう、準備はこれぐらいで良いんだよな」


「ええ。後はマッチングを待つだけね。やり方分かる?」


「えっと――クエスト掲示板で……というかこの工房何でもあるな」


「ふふん。ここは私の家みたいなものだからね!」



工房にあるそれ。

クエスト掲示板から、新しく追加されたダンジョンの欄。

解放されているのは『始まりのダンジョン』のみ。推奨レベルは40〜になっている。


そしてそこからダンジョンマッチングで――



《ダンジョンマッチングを開始します》


《ダンジョンマッチングに成功しました》


《準備はよろしいですか?》



「早っ!」


「ふふ、このプレイヤー人口よ?」


「それもそうか……」


「あ、これまでのクエストと違って、『はい』を押したらもうダンジョンマッチングに参加するから気を付けてね」


「……って事は、半強制的にパーティを組む事になるんだな」


「ええ。それがメリットでもデメリットでもあるのだけど……まあ行きましょ?」


「ああ」



《パーティーメンバー全員の準備が整いました》


《始まりのダンジョンへ転移します》


《!》


《シークレットダンジョンへ転移します!》


《特殊条件:復活スキル・アイテム使用不可が追加されました!》


《特殊条件:制限時間が追加されました! 》


《ダンジョン内にシークレットチェストが追加されます!》



「……え?」



初めてのダンジョン。

そこへ転移する直前――そんなメッセージが聞こえたのだった。

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