掲示板回:氷雪の英雄②


《レベルが上がりました。任意のステータスにポイントを振ってください》

 

《魔力変換スキルのレベルが上がりました!》


《魔法剣スキルのレベルが上がりました!》


《レベル40になりました!》


《昇進クエストを受ける事が出来ます!商人ギルドに向かってみましょう!》



「うおー!来た来た!昇進クエストだ!!」


「いいねえ」

「ユウキ一番乗りか!話には聞いてたがやっぱレベル40なんだな」

「羨ましいぜ……」



ここは、王都ヴィクトリア戦闘フィールド。


『商人一号』、『そうきゅう』に『カトー』。

リーダーは居ない……が、何とかやってきた。


今は王都のモンスターを倒していた所だ。



「知ってんだぜ俺は!ユウキお前裏で相当練習してただろ!レベルが物語ってるぜ」

「な!もう誰もお前を『カスヒーラー』何て呼ばねえって!」

「お前が『仮リーダー』になってから、効率滅茶苦茶上がったもんな」


「や、やめてくれ!俺は必死にやってるだけだって。リーダーにはまだまだ敵わないし」



皆がそう言ってくれるのが、口ではこうだが内心はかなり嬉しかった。


リーダーが居なくなってから俺達はかなり苦戦していたんだ。

そこで、俺は色々と『魔法剣士』について見直した。


その職業の可能性を模索しながら、何とかこのパーティで戦える立ち回り方を出来るようになった……と思っている。それでもリーダーには全然敵わないけど。



「ユウキが基本タンクで、きつくなったら俺達が代わり……その間はユウキがヒーラー専念と。こうして聞いたら大分便利な職業だよな」

「開いた穴を綺麗に埋めてくれるって感じ」

「それもユウキの努力あってこそだぜ」


「は、はは……照れるな何か」



思わず顔を背ける。

そう言ってくれるのなら……頑張って来て良かったよ。



「可愛い奴だな!それじゃ明日はユウキの昇進クエストで決まり! !」

「おっけー!」

「だな!それじゃ時間も時間だし解散するか~」


「やった!ありがとう、楽しみにしてる!」


「良いって良いって!それじゃあなー」

「また明日!」



《そうきゅうがパーティーから離脱しました》


《商人一号がパーティーから離脱しました》


《カトーがパーティーから離脱しました》





「ふう、遂に明日は昇進か……いやいや!まずはクエストをクリアしなきゃ駄目なんだし」



魔法剣士の上位職――それは、スレの中でも聞いた事が無い。

楽しみだ!


それで……この俺達の中に『彼』も居てくれたら、もっと楽しかったんだけどな。



「『リーダー』……今、どうしてんだろ」



そうきゅう達も、口には出していないが気になっている筈だ。

『氷雪の亡霊』……あのボスを倒すのは、俺なら一生かかっても無理な気がする。

けれどリーダーなら、そう思って俺達は彼を待っているんだ。


俺達は、あんまり声を掛けたら邪魔になると思って全くコンタクト取ってないし……

まあ考えても仕方ない!


落ちる前に、久しぶりの掲示板チェックだけして寝よ――



◇◇◇



【オールラウンダー】魔法剣士スレ☆19☆【器用貧乏?】



110:名前:名無しの魔法剣士

アイスウルフ君ボコるの楽し~ww

これでレベル35まであげちゃお


111:名前:名無しの魔法剣士

まあ効率的にはそっちよな

ソロなら


112:名前:名無しの魔法剣士

商人達と最近パーティー組んでるけど、効率段違いだぜ

アイツら普通に戦闘が上手い


113:名前:名無しの魔法剣士

案外片手斧って強いのね


114:名前:名無しの魔法剣士

俺達がタンクもヒーラーも出来るのもあるし、パーティだとやっぱり違うわ


115:名前:名無しの商人

おいおい照れるぜ


116:名前:名無しの魔法剣士

>>115

いつもありがとう!!!

最近はマジでよく見るようになったな!ラロシアアイスじゃ特に


117:名前:名無しの魔法剣士

アイスなあ……王都行きてえ


118:名前:名無しの魔法剣士

な、なあ……これ見てくれよ


http://wwwn8329gj/syounin


119:名前:名無しの魔法剣士

>>118

おいコレ王都の景色じゃん!!!最前線たちの!!


120:名前:名無しの魔法剣士

>>118

SUGEEEEEEE


121:名前:名無しの魔法剣士

うわあああ一瞬先越されたああああああ


http://wwwn8329gj/syounin



122:名前:名無しの魔法剣士

え、皆どうしたんだ

あのボスどうやったんだよwww


123:名前:名無しの魔法剣士

じ、実は俺も……


http://wwwn8329gj/syounin


124:名前:名無しの商人

最近こっちでも報告来てる 

何か、ボス討伐に困ったら飛んでくる凄腕商人が居るらしいぞ


125:名前:名無しの魔法剣士

恥ずかしながら俺もそうなんだわ

あの人が居なかったら絶対まだアイスに居た


126:名前:名無しの魔法剣士

お、俺も……

黄金の一撃も蘇生術も躊躇せず使っていくんだよ


指示も滅茶苦茶上手いし 場数どんだけ踏んでんだよって


127:名前:名無しの魔法剣士

ただ王都に行こうって誘っても、すぐ消えちゃうんだよなあ

……もしかして俺達助けてくれたのって同一人物か???


128:名前:名無しの魔法剣士

こういうの名前出して良いのかな


129:名前:名無しの商人

商人ならニシキの例もあるし 別に良いと思う


130:名前:名無しの魔法剣士

んじゃ、遠慮なく……その商人のプレイヤーネームは『アスパイア』だ

いつかお礼しなきゃと思ってる


131:名前:名無しの魔法剣士

『アスパイア』だよ 一緒じゃんwwwww


132:名前:名無しの魔法剣士

俺も一緒wwwwアスパイアさんだ


133:名前:名無しの魔法剣士

……なんか、その名前どっかで見なかったか?


134:名前:名無しの商人

いやそれ、あの最前線がやった『大鷲動画』のパーティーリーダーさんだよ!


135:名前:名無しの魔法剣士

あの滅茶苦茶強かった商人かwwwww


136:名前:名無しの魔法剣士

納得だわwwww


でもなんで?王都にはもう最前線たちが行ってるはずじゃ


137:名前:名無しの魔法剣士

分かんね


たしか王都に行ったらもうボスには挑めねえだろ

そんな感じの事最前線達が言ってたし……



◇◇◇



忘れる訳も無い。

その名前――『アスパイア』は、正真正銘彼の名だ。



「『リーダー』……?」



思わず声を上げる。

なんで、その名前がそこに出ているんだ?



「亡霊に挑んでるはずじゃ……というか、黄金の一撃も蘇生術も使ってるって」


「何やってんだよ、『リーダー』は」


「……訳分かんないって。王都に住人を送り出してるって」



思わず嘆く。

分からなかった。


どうして――彼は、そんな『自分の首を絞める事』をしているのか。亡霊打倒への道を遠くするような事をしているのか。


俺は……『リーダー』を待ってるのに。

彼が居ない穴を、必死に補おうと頑張ってるのに。



「……」



何故かは分からない。

でも――今、全く落ち着かない自分が居るんだ。



「……決めた」



明日の夜。

俺は――彼に会いに行く。

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