商人の上位職



《商人ギルド》



あれからエリアと別れ、商人ギルドへ。

勿論理由は――



「……昇進、か」



まさか会社より先にそのワードを聞くとは思わなかったが。


上位職……どんなのものだろう。

中々に楽しみな自分が居る。


商人という職業がどうなっていくのかは、俺も予想がつかないから。



『おめでとうニシキ。商人として大きく成長したね』


「……ありがとう」



面と向かってそう言われると恥ずかしい。

でも、嬉しいな。



「君は――この先、どんな商人でありたいかな?」



《商人の上位職が解放されます》


《転職先を選択してください》


《ニシキ様は――『武器商人』・『防具商人』・『雑貨商人』に転職出来ます》




「うおっ、びっくりした……」




突如現れる選択肢達。

てっきりクマーの例で『上級商人』とかだと思っていたから、中々予想外だ。





≪説明:武器商人≫


武器に精通した商人。

STRとAGIにボーナスステータスが追加される。


片手斧以外の片手武器もある程度使えるようになる。

また、武器の製作を行う他の生産職とパーティーを組むことで、製作品の質が上昇するスキルと製造コストを削減するスキルを獲得出来る。


この職業がお勧めなプレイヤー:生産職でも戦闘がしたい、武器製作の手伝いがしたいという方に!




≪説明:防具商人≫


防具に精通した商人。

DEXとVITにボーナスステータスが追加される。


防具を装備している時に発動できる、様々なスキルを獲得できる。

また、防具の製作を行う他の生産職とパーティーを組むことで、製作品の質が上昇するスキルと製造コストを削減するスキルを獲得出来る。


この職業がお勧めなプレイヤー:戦闘は攻撃よりも防御という方、防具製作のお手伝いがしたいという方に!




≪説明:雑貨商人≫


様々な雑貨アイテムに精通した商人。

全ステータスに微量のボーナスステータスが与えられる。


ポーションなど、特定のアイテムに関した様々なスキルを獲得できる。

また、雑貨アイテムの製作を行う他の生産職とパーティーを組むことで、製作品の質が上昇するスキルと製造コストを削減するスキルを獲得出来る。


この職業がお勧めなプレイヤー:消費アイテムを沢山使う方、雑貨屋さんのお手伝いがしたい方に!





「……」


『選択は一度きり、存分に迷って良いよ』


「どうも……」



その3つの選択肢は、どれもこれも俺にとってありがたいものだった。

武器も防具も雑貨アイテムも――かなりお世話になっているからだ。


というか、かなり戦闘によったモノになってるよな。

例えば自分があまり戦わなかったりしたら、別の転職先が表示されるんだろうか。


まあ、知る由何て無いんだけど。



「……二つに絞るなら、武器か雑貨か……」



武器は勿論、消費アイテムも麻痺毒なりポーションなり使ってるからな。


でも――うーん、やっぱり……



「申し訳ない、ちょっと聞きたいんだけど」


『なんだい?』


「商人で、もう既に転職したプレイヤーとか居たりするのか?人気の転職先とか知りたい」


『……いいや、居ないね。君が初の転職者だよ』


「そ、そっか……」



言葉に詰まる。

俺が正真正銘、RL初めての商人の昇進者だったとは。



「……なら」



この選択に、正解か不正解かなんてモノは無い。


でも。この職業で――俺は、これから先進んでいくんだ。


想像する。

この二つの選択肢、どっちが自分に合っているのか。

俺がもっと『強く』なるには、どちらを選ぶべきなのか。




『……決まったかい?』


「ああ」



商人NPCにそう答える。


選んだ答えは――





「――『武器商人』に、転職するよ」





《武器商人に転職しました!》


《ステータスが変化します》


《商人の知識(武器)スキルを習得しました》


《商人の改善術(武器)スキルを習得しました》


《商人の簡易売却術スキルを習得しました》


《称号:昇進者を習得しました》


《新たな職業クエストが追加されました!》


《様々な新コンテンツが解放されました!》


《昇進おめでとうございます!RLをこれからも楽しんで下さいね!》














「いやあ、色々スキルも増えたし、ステータスも降らないといけないし……やる事だらけだな」



商人ギルドの出口を向かいながら呟く。

スキルの確認に――何といっても片手斧以外の『片手武器』が使えるようになったんだ。



「……ふう」



誰もいないこの場所を眺めて息を吐いた。

いつか――この商人ギルドへ、自分のように昇進者が現れるんだろうか。


色んな種類の商人達を見れる時が来るのだろうか。



「楽しみだな――」



俺は、出口へ辿り着く。


そこは――いつもの様な、プレイヤー達が居る王都ヴィクトリアの光景。



……の、はずだった。



《上位職への転職を確認しました》


《取得称号『復讐者』・『断罪者』・『返り血に染まる者』を確認しました》


《これより???へ移動します》


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る