エリアの願い④
「……で。どうし――」
「――ううう!!……もうあの人キライです!!わたしにイタズラな事ばっかり……!!」
大分と彼女は鬱憤が溜まっている様だ。
声を荒げ、目頭を真っ赤にして叫んでいる。
「落ち着けエリア。次は何て言われたんだ?」
「うう――聞いてくださいニシキさま!エリア、頑張ってファントムレッドを加工して、過去最高傑作の指輪を作ったんです!そしたら……」
「そ、そしたら?」
彼女はまた身を乗り出す様俺に話す。
「――『で?』って言ったんですよ!!もうエリアゆるせませーーん!うあああー!!」
ゴロゴロと地面を転がり出すエリア。
泣いているから心配だったが元気そうで良かった――これはこれでどうなのかと思うが。
というか少しは周りの眼を気にしてくれ。
……いや、まあプレイヤー達は居ないから良いんだけど……
――ん?
「お、おいおい何だよアレ……」
「え、何あの可愛いNPC!初めて見た!」
「アレ確か『エリア』ちゃんだっけ?可愛いー!!」
《アザキ 狩人 level36》
《とうふちゃん 調理士 level35》
《アメ~〇~ 弓士 level39》
「……嘘だろ?」
そこ辺りに居るのは、紛れも無いプレイヤー達だった。
「……ニシキさま?」
「あ、あー、ちょっとこっちに来てくれるか」
「へぇ?別に良いですが……やぁっ!っと!」
「ええ……」
器用に転がって俺の元へ戻ってきたエリアは、その後一瞬で立ち上がる。
それは元気に着地ポーズまで決めて。さっきまでのこの世の終わりみたいな顔はどこへやら。
……とにかく今は、突っ込んでいる余裕は無い。
☆
デッドゾーン前。
ここは本当に人が少なくて助かる。
もしプレイヤーが周りにいたらまずい光景かもしれないけど。
……全く、なんで特殊フィールドじゃないのか。
「ここちょっと雰囲気がこわいですね……」
「あーごめんな、何も起こりはしないから」
「……ニシキさまが居るから安心です!だいじょーぶです!」
「はは、なら良かった――で、さっきの続きだけど」
嬉しい事を言ってくれるエリアに、笑って俺は話を戻す。
「……あ!そうでした――あの後、『で?大層頑張って作ったみたいだけどアタシにはその価値分かんないね、証明出来るのかい』って……」
「ああ……なるほどな」
申し訳ないが、その時の光景は現場に居たかの様に想像できる。
でも――大分厳しい師匠?なもんだ。
「そんな事言われたって、エリアにはどうしようもないのです……」
「うーん……」
二人して黙り込む。
ただ、宝石職人の師匠なら価値は分かるんじゃないのか?
過去最高傑作と言っているエリアの事だ、その出来はきっと悪いモノじゃない。
恐らくその彼女のイタズラというか、『試練』みたいなものなんだろうが。
「ちょっとその指輪、見せてくれないか」
「!はい!大事にしてくださいね――あ、後コレも返すの忘れてました……」
《エリアから幻竜の指輪を譲渡されました!》
《エリアから餓鬼王の印が譲渡されました》
指輪、そして印。
そういえば、完全に忘れてたよこれ。
□
【幻竜の指輪】
宝石職人見習い、エリアが作製した指輪。
製作者:エリア(NPC)
□
「……」
「……」
「……うう、せめて何か言ってくださいーー!」
沈黙に耐え切れずエリアが叫べば、人の居ないこの場所へ声が響いた。
いやあ、何も言えないんだよな。
「うーん、正直俺には……ん?」
この現状について、今一度考える。
『何故か特殊フィールドではない』この状況。不親切過ぎる『アイテム説明』。
過る、『あのNPC商人の言葉』。
《――「私達商人は、他の生産職達を繋げるような役割を担ってるんだ」――》
まるで、RLのプレイヤー達の力を借りろって言ってるようなモノだよな。
「――エリア、ちょっと待っててくれるか?ちょっと『熊』に連絡してみるよ」
「……へ、へぇ?」
意味が分からないといった顔をするエリア。
はは、そりゃそうだよな。
……さて。
彼女に『暇』があれば良いんだが――
☆
【悲報:聞いてくれ……】
1:名前:名無しの戦士
今日久しぶりに『彼女』を見た
でも、その横には知らない男が居たんだ
2:名前:名無しの戦士
楽しそうに話しててさ、そしてそのまま路地裏に……
3:名前:名無しの戦士
う、う、うああああああああああああああああああああああああ!!!!!
4:名前:名無しの戦士
でも何か、案外こういう時って怒りは湧いてこないんだよな
ひたすらにあの時失敗したら自分が情けなくなって終わっちまった……
5:名前:恋する名無しさん
分かりますよ その知らない男に突っかからなかった貴方は立派です
自分を褒めてあげましょう
後ついでに、板間違えてませんか
6:名前:名無しの戦士
ごめん ついつい気付いたらここで叫んでしまった
7:名前:恋する名無しさん
>>6
いえいえ 貴方に幸せが訪れますように
8:名前:名無しの戦士
ありがとう
俺は君に、そう声を掛けてもらいたいからこのスレに書き込んだのかもしれないな
これは――『恋』なのか??
9:名前:名無しの戦士
……あ、あの~
10:名前:名無しの戦士
あの、流石に無視はやめて……
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