ウェーブ1
☆
『ゲギャギャギャ!!』
「――『スラッシュ』!」
『ギャ……』
《経験値を取得しました》
《レベルが上がりました!任意のステータスにポイントを振ってください!》
「……ふう、やっぱりコイツらは弱いな」
取引掲示板で消費したアイテムも買い戻して。
キッドの助言通り、俺はゴブリン達を狩っていた。
狩りの効率はこれまでで一番かもしれない。
それほどまでに、魂斧の威力が凄まじいのだ。
……でも。
「本当に、コレで良いのか?……『パワースロー』!」
『ゲギャァ!!』
「――っ、らあ!」
『ギャ!』
考えながら、魂斧を次のゴブリンに投擲。
そして走って落ちたそれを拾い上げ、追撃を。
「――っと、『スラッシュ』」
『ゲギャ……』
《経験値を取得しました》
《緊急クエストが発生しました》
《特殊クエスト:『餓鬼王からの挑戦状』が発生しました》
《高難易度クエストです!パーティーでの挑戦が推奨されています》
《『餓鬼王からの挑戦状』を受けますか?》
《受注しない場合、クエストは即破棄されます》
「――!?なんだ」
あ、頭が追い付かない。
緊急だったり特殊クエストだったり……って一緒か。
きっとこれが――キッドの言っていたモノだろう。
「……『受ける』」
元々そのつもりだった訳で。
俺は、魂斧を握りしめそう答えた。
《『餓鬼王からの挑戦状』を受けました》
《クエスト開始に伴い、専用フィールドに移動します》
☆
「……ジャングル?か、ここは」
見渡せば、そこは草原というよりかは森だった。
暗く光があまり届かない――見るからに危ない場所。
明らかに、『何かが襲ってくる』と教えてくれるモノだった。
□
特殊クエスト『餓鬼王からの挑戦状』
迷い込んだのは餓鬼王の領域。
死ぬまで戦え。
彼の手下が居なくなるまで。
報酬:???
死ぬ、あるいは降参した場合クエストが終了します
□
「なんだ、このクエストは――!?」
クエスト説明をゆっくり見る間もなく、気付く。
《ゴブリン LEVEL35》
《ゴブリン LEVEL35》
《ゴブリン LEVEL35》
《ゴブリン LEVEL35》
《ゴブリン LEVEL35》
《ゴブリン LEVEL35》
「……そういう事か」
森の深く、遠くからやってくるゴブリン達。
俺を殺すべく――徒党を組んで、彼らはやって来る様だ。
『ギャギャギャ!!』
『ギャ?』
『ガギャギャギャ』
『ガギャ?ギャギャギャ!』
『ギャ!!』
『ギャギャギャ!!』
聞こえる鬱陶しい声。
……どうやら、見つかったようだ。
「――準備、して来て良かったな」
インベントリ、次々と出して地面へと放るスチールアックス。
対多人数戦闘用の戦闘態勢。
それは――コイツらにも使えるはずだ。
ただ、基本は魂斧で迎え撃つ。
折角の人型モンスター特効だからな。
☆
『ゲギャギャギャ!!』
「――っ、らあ!」
『ギャギャ!!』
一体、また一体と襲い掛かってくるゴブリン達を相手していく。
周囲に放ったスチールアックスのおかげで、彼らはそれを避けて攻撃してくる。
言うなれば、攻撃方向を絞れるのだ。
攻撃方法も石斧で殴りかかるのみ。
だから――俺は、それにカウンターをしてやるだけで良い。
『ゲギギャガギャ!!』『ギャギャギャ!』
「『スラッシュ』、らあ!」
『グギャ……』『ギャギャ!?』
一匹を武技、一匹は首を掴んで地面へと叩きつける。
《経験値を取得しました》
《経験値を取得しました》
『ギャギャギャ!!』『グギャア!!』『ガギャギャギャ!!』
鬱陶しい声が三つ。
ほぼ同時に前方と右から――なら。
「『パワースウィング』!!」
『ギャ!?』『ギャッ――『――ギャ……』
纏めて三匹。
その武技を当てれば、面白い程に吹っ飛んでいく。
《経験値を取得しました》
《経験値を取得しました》
《経験値を取得しました》
「……こんなものか?」
流れるアナウンス、現れる静寂。
キッドが言っていた割に、『軽い』。
しかし。
呟いたその言葉は――
《第1ウェーブをクリア》
《三十秒後、次のウェーブに入ります》
《失ったHPとMPを回復します》
やがて、取り消すことになる。
地獄は――まだ、始まってすらいなかった。
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