ウェーブ1


『ゲギャギャギャ!!』


「――『スラッシュ』!」


『ギャ……』



《経験値を取得しました》


《レベルが上がりました!任意のステータスにポイントを振ってください!》



「……ふう、やっぱりコイツらは弱いな」



取引掲示板で消費したアイテムも買い戻して。

キッドの助言通り、俺はゴブリン達を狩っていた。

狩りの効率はこれまでで一番かもしれない。


それほどまでに、魂斧の威力が凄まじいのだ。


……でも。



「本当に、コレで良いのか?……『パワースロー』!」


『ゲギャァ!!』


「――っ、らあ!」


『ギャ!』



考えながら、魂斧を次のゴブリンに投擲。


そして走って落ちたそれを拾い上げ、追撃を。



「――っと、『スラッシュ』」


『ゲギャ……』



《経験値を取得しました》


《緊急クエストが発生しました》


《特殊クエスト:『餓鬼王からの挑戦状』が発生しました》


《高難易度クエストです!パーティーでの挑戦が推奨されています》


《『餓鬼王からの挑戦状』を受けますか?》


《受注しない場合、クエストは即破棄されます》




「――!?なんだ」



あ、頭が追い付かない。

緊急だったり特殊クエストだったり……って一緒か。


きっとこれが――キッドの言っていたモノだろう。



「……『受ける』」



元々そのつもりだった訳で。

俺は、魂斧を握りしめそう答えた。



《『餓鬼王からの挑戦状』を受けました》


《クエスト開始に伴い、専用フィールドに移動します》





「……ジャングル?か、ここは」



見渡せば、そこは草原というよりかは森だった。


暗く光があまり届かない――見るからに危ない場所。

明らかに、『何かが襲ってくる』と教えてくれるモノだった。




特殊クエスト『餓鬼王からの挑戦状』


迷い込んだのは餓鬼王の領域。

死ぬまで戦え。

彼の手下が居なくなるまで。


報酬:???


死ぬ、あるいは降参した場合クエストが終了します




「なんだ、このクエストは――!?」



クエスト説明をゆっくり見る間もなく、気付く。



《ゴブリン LEVEL35》

《ゴブリン LEVEL35》

《ゴブリン LEVEL35》

《ゴブリン LEVEL35》

《ゴブリン LEVEL35》

《ゴブリン LEVEL35》




「……そういう事か」



森の深く、遠くからやってくるゴブリン達。

俺を殺すべく――徒党を組んで、彼らはやって来る様だ。



『ギャギャギャ!!』

『ギャ?』

『ガギャギャギャ』

『ガギャ?ギャギャギャ!』

『ギャ!!』

『ギャギャギャ!!』



聞こえる鬱陶しい声。

……どうやら、見つかったようだ。



「――準備、して来て良かったな」



インベントリ、次々と出して地面へと放るスチールアックス。


対多人数戦闘用の戦闘態勢。

それは――コイツらにも使えるはずだ。


ただ、基本は魂斧で迎え撃つ。

折角の人型モンスター特効だからな。





『ゲギャギャギャ!!』


「――っ、らあ!」


『ギャギャ!!』



一体、また一体と襲い掛かってくるゴブリン達を相手していく。


周囲に放ったスチールアックスのおかげで、彼らはそれを避けて攻撃してくる。

言うなれば、攻撃方向を絞れるのだ。

攻撃方法も石斧で殴りかかるのみ。


だから――俺は、それにカウンターをしてやるだけで良い。



『ゲギギャガギャ!!』『ギャギャギャ!』


「『スラッシュ』、らあ!」


『グギャ……』『ギャギャ!?』



一匹を武技、一匹は首を掴んで地面へと叩きつける。



《経験値を取得しました》


《経験値を取得しました》



『ギャギャギャ!!』『グギャア!!』『ガギャギャギャ!!』



鬱陶しい声が三つ。


ほぼ同時に前方と右から――なら。



「『パワースウィング』!!」



『ギャ!?』『ギャッ――『――ギャ……』



纏めて三匹。

その武技を当てれば、面白い程に吹っ飛んでいく。


《経験値を取得しました》

《経験値を取得しました》

《経験値を取得しました》



「……こんなものか?」



流れるアナウンス、現れる静寂。

キッドが言っていた割に、『軽い』。


しかし。

呟いたその言葉は――




《第1ウェーブをクリア》


《三十秒後、次のウェーブに入ります》


《失ったHPとMPを回復します》




やがて、取り消すことになる。

地獄は――まだ、始まってすらいなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る