迫り来る者共



≪スキル説明:環境利用≫


環境を利用した攻撃、移動にボーナスが加わる。


≪現在まで扱った利用技≫


砂かけ:地面に砂が存在する時利用できる。微量のダメージと低確率で相手に状態異常『暗闇』効果。

状態異常『暗闇』:相手の視界が遮られ、敵はこちらへ狙いを付けにくくなる。





《スキル説明:高速戦闘》


戦闘中一度だけ発動できる。

五秒間二倍のスピードで動く事が出来る。




「……これは、結構良いな」



王都ヴィクトリア。

そこで、俺は新たなスキルを眺めていた。


環境利用は、プレイヤーだけでなくモンスターにもかなり有効だ。

あの時使ったのは全く別の用途ではあるんだが……こっちがメインかな。

それに、これから色々増えていくのも大きい。


砂かけが行けるなら……草木に隠れる事による隠密行動とかか?


そして高速戦闘は、三秒から五秒になっている。

単純な強化だがこれも良いな。



「早速、狩りにでも行こうか」



昨日は対人戦闘フィールドで終わってしまったから、今日は王都のモンスターを見に行こう。


普通逆なんだけどな……それだけ、対人戦闘が楽しいって事なんだ。

実際、昨日までずっと対人はお預けだった訳だからな。


……まあ、今日は違うから。

方向は昨日と反対側。南へ行った、その先だ。





南に歩いていった先、沢山のプレイヤーが出入りしている大きな門。

そこを抜ければ戦闘フィールドな訳なんだが、親切な事にその周辺に色々な店が並んでいるのだ。


回復アイテムにバフポーション、簡単な武器防具。


俺みたいに忘れていたプレイヤーにはとても助かるな。



《スチールアックス×8を購入しました》

《HPポーション×30を購入しました》

《MPポーション×30を購入しました》




「……とりあえずこんなものだろ」



取引掲示板で色々と見て買った後、最後にNPCから購入。

そういえば、額もかなり最初に比べて安くなったな。


『交渉術』が大分レベルが上がったからだろう。案外馬鹿にならないもんだ。



「よし、行くか」



さて。

それじゃあ――モンスターを、倒しに行こうか!



《王都ヴィクトリア・戦闘エリアに移動します》






《??? level36》



「ぐッ――クソが!!こんな商人なんかに――『エネミーバック』!」


「っ……『スラッシュ』」


「がはッ――!!」



《経験値を取得しました》


《賞金首を倒した事により、110000Gを取得しました》



目の前の小刀を持った……恐らく盗賊だろう。それが霧になっていく。

流れるアナウンス。


『エネミーバック』。

これまでに何度か対応してきたから、逆にそのスキルはこちらの絶好の反撃機会になっていた。


タイミングは少々プレイヤーで違うが、根本的なものは一緒。

発動したと同時に武技を発動して、『合わせ』ればいい。



「……で。何で、一番最初の経験値がPK職なんだよ」



事の発端は、門を抜けてすぐ。

非戦闘エリアに居た多くのプレイヤーが嘘の様に、門を抜けた先は人が居なかった。

居るにはいるが、遠目に見ているなーって程度だ。

どれだけのサーバーに分けられているか分からないが……それは凄まじい量なんだろう。


そして――この草原を歩いている途中。

『察知』スキルの音がしたと思ったら、直ぐにこちらを襲ってきたのだ。



「それにしても、賞金首か」



『賞金首』。

そのアナウンス通り、このフィールドからPK職を倒せばGが得られるらしい。


……そのPK職がどれだけPKしたかによって、額が変わったりするのだろうか?

何にせよ――この額がPK職の強さの、一つの指標になるのかな。

倒さないと額が分からないのが微妙な所だ。



《スライム LEVEL 36》



「……お、懐かしいな」



歩いていくと、見えてくるその透明な身体。


始まりの街でも全く同じ姿を見たが……レベルは段違いだ。

ちなみに大きさもデカくなっている。

俺の腰ぐらいまであるから、かなりじゃないか?



『――!』



試しに突っついてみると、反応してこちらにタックルしてくるスライム。



「よっ――らあ!」


『ピギィ……』



それを躱して、勢いを付けた斧を振るえば、怯むスライム。


その巨体のタックルは、かなりの迫力だ。

スピードも意外とある――でも、ある程度構えていれば余裕で避けられる。



「――『パワースウィング』」


『ピギ……――ギィ!』



怯んだスライムに向けて、その武技を放つ。


一気に減るHP――そして、何かスライムの様子がおかしい。

小刻みに震えて、何かをしようとしている様な――



「ふ、増えるのか……」


『ギィ!』『ギィ!』



見れば、大きな巨体が丁度二つに割れたのだ。

そして半分になったサイズのスライムが二匹になり、俺の前にいる。


厄介なのは――何と、満タンに体力が戻っているのだ。



「っ――らあ!」


『ギィ……』『ピギィ!』


「っ、『スラッシュ』!」



先制で一匹に通常攻撃、もう一匹が攻撃してきた所に避けて武技。


かなり危なげだったが、何とか成功した。



「……まあ、そうだよな」


『ギィ』『ギィ』



そして当然の様に、放置したら回復を始めるスライム『達』。

どうやら――今回のスライムも、楽には倒させてくれないらしい。




「『スラッシュ』!」


『ギィ……』


《経験値を取得しました》


《7000Gを取得しました》



「さっきのPK職の方が楽だったな」



思わず嘆く。

このモンスターの嫌な所は、『回復』だ。


一匹を放置してしまうとHPがどんどん回復してしまうから、二匹同時に――なんて考えるとドツボにハマる。

戦闘が長引いて、削って回復されてのループ。


恐らく正解は、一匹を徹底的に攻めて確実に一匹ずつ処理していくことだ。

邪魔してくるもう一匹は、頑張って避けるに限る――



「――っ!」


『ギャギャギャ!!』


「……今度は何なんだ」



突如背中に迫る声――横に跳んで避けると、自分が居た場所にソイツは居た。



《ゴブリン LEVEL 36》



「お!ついにゴブリンか」



反省一つ、させてくれる時間も無い。

RPGじゃお馴染みの――醜い顔に、緑色の小さい身体。


何か、石斧の様なモノを武器にしている様だ。



『ゲギャギャギャ!!』



汚い声を出しながら突進してくるゴブリン。

……これ、苦手な人はかなりキツイだろうな。


幸い――PK職を相手にしてきたから、こういう『人型』のモンスターは慣れている。



「――『スラッシュ』」


『ギャ……』


「……?滅茶苦茶減ったな――あ」



武技を振るえば、先程のスライムよりごっそりHPが減るゴブリン。

……『人型』。


つまり、この魂斧には絶好の相手だ。



「――っ!」


「ギャギャ……」



動きも、かなり人に似ているからやりやすい。


急所もスライムと違って分かりやすい――なんせ、人型なんだから。



「ギャギャギャ!!」


「――『パワースウィング』」


「ギャ……」



突進してくるゴブリン。

そのままパワースウィングをゴブリンの首元に振り上げれば、そのまま吹っ飛んでHPがゼロになった。



《経験値を取得しました》


《ゴブリンの石斧を取得しました》



「お、おいおい……終わったぞ……」



いくら何でも早すぎる。

この魂斧、ゴブリン特効なんじゃないかってぐらい『刺さる』んだ。



「本当に、ベアーとクマーには感謝だな」



経験値もかなり貰えるし。

効率で言えばスライムの二倍……いや三倍以上。


これは、レベル40ぐらいまでなら直ぐかもしれない。



「よし……ここ辺りでレベル上げでも……」



思わぬ発見。

俺は、次のゴブリンを探しに――



《――◇◇◇!◇◇!》



「……え?」



方角、西南。

『PK職』を、知らせる音。


そして。



「早く狩りてえよお」

「もうゴブリンで良くね?さっきからパーティーばっかでうぜぇわ」

「どっかにソロの嬲れる丁度良い奴いねえかな」

「……ん?」

「おい!アレ――」



《??? LEVEL 35》

《??? LEVEL 35》

《??? LEVEL 39》

《??? LEVEL 35》

《??? LEVEL 36》



「商人じゃん」

「商人だ」

「アイツ――この前聞いた奴か」

「嘘だろ!『G』じゃん!」

「おいおいツイてるな」



遠くから、やって来る『奴ら』。


その目は――確実に俺へと向いていた。

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