掲示板回:苦戦する者達

【半生産職】RL商人専用スレ 十G目 【半戦闘職?】


89:名前:名無しのプレイヤー

アイスウルフ強すぎワロタ

俺もうコイツに百回以上死体にされてる


90:名前:名無しのプレイヤー

>>89

アイススライム君「どうして僕をスルーしたの?」


91:名前:名無しのプレイヤー

テメエはアイスウルフより厄介だろうが

回復するとか聞いてねえんだよ


商人の火力舐めんな!!!!!(涙目)


92:名前:名無しのプレイヤー

まあ多分一番ラロシアアイスで楽なのはアイスウルフだろ

俺達はそれに手こずってんだけど


93:名前:名無しのプレイヤー

皆頑張ろうぜ

あ、俺はもうグリーンソルデで狩るから……


94:名前:名無しのプレイヤー

>>93

諦めんなw



◇◇◇



「ハハ、皆やっぱ苦労してるんだな……」



俺はしがない商人、レベルは23。

ようやくグリーンソルデを卒業……したと思いたい。


ラロシアアイス、非戦闘エリア。

狩りの休憩中に、ゲーム内で俺は掲示板を開いている。

『アレ』から、ポツポツとこの掲示板の住民はRLにログインする様になった。俺もその一人。


……正直、かなり辛い。

俺のレベルでは本来ラロシアアイスのモンスターにも相手出来るはずなんだが、未だにアイスウルフすら倒せていない。



◇◇◇



106:名前:名無しのプレイヤー

俺もグリーンソルデ行こうかな


流石に辛くなってきた


107:名前:名無しの冒険者

え?ラロシアアイスの適正レベルって20って聞いたんだけどアイスウルフ『程度』に手こずってんすか??

あ、商人さん(爆笑)だけは30だったかな?ww


108:名前:名無しのプレイヤー

>>107

まだいたのかお前


109:名前:名無しのプレイヤー

まあ、頑張ろうぜ……


110:名前:名無しのプレイヤー

次負けたらログアウトしよ


111:名前:名無しのプレイヤー

中々うまくいかないもんだなあ



◇◇◇



「……はあ」



ため息を一つ。

そもそも、生産職がソロで狩り、なんて事自体がおかしいからな。


でも――あの時、『彼』は……



「――そうだ」



ふと思い立って、俺はある『動画』を探す。

それはハルハルの過去配信だ。


『彼』――ニシキが、俺達を変えたそれ。



「……ずっと、PKKの所だけ見てたっけな――あ、あった」



その動画は、俺のお気に入りだ。

商人という不遇の職が、格上のPK職を圧倒する、そんなシーン。


でも――彼はずっとその前にも、俺達に示してくれている。

それは、ハルハルとの狩りのシーン。

俺は――それを、何回もリピートしていった。




《経験値を取得しました!》


《投擲術スキルを取得しました!》



「……本当に倒せちまった」



勿論かなり手こずったが。

動画を見て、得たヒント。


まずは『投擲』を加える事で、確実にアイスウルフに一撃を与えられる。


その後は斧を拾って怯んだ所に武技を入れる――文字にすれば簡単だが、実行出来たのは十回死んだ後だ。


トライアンドエラーの繰り返し。だからこそ、今――



「やった、やったぞ俺は……!」



たかがラロシアアイスの雑魚モンスター。

でも――俺には、これ以上ない達成感があった。


初めて、狩りを楽しいと思えた。



「……ニシキには、感謝だな」



商人掲示板の住人の中では、もはや知らない者は居ない彼。

彼は、俺達の事は全く知らないだろうが……

こうして、また助けてくれた。


武器の扱い方。

武技のタイミング。

スキルの選択。


俺に、彼の様な戦闘スキルは無い。

でも――それを自分で学んで、広める事は出来る。



◇◇◇


112:名前:名無しのプレイヤー

ムリぽ グリーンソルデにかえりゅ……


113:名前:名無しのプレイヤー

っぱグリーンスライムよ


114:名前:名無しのプレイヤー

俺達には早すぎたんだ


115:名前:名無しのプレイヤー

>>112

>>113

>>114


お前ら、騙されたと思って投擲使えって

アイスウルフはそれで攻略出来るからさ!


116:名前:名無しのプレイヤー

投擲ってお前……アイツに憧れたのか?

無理無理、彼は人間辞めてるから


どんだけ命中させるの難しいと思ってんだ


117:名前:名無しのプレイヤー

まあ気持ちは分かるぞ、何かアイツの真似したら行けそうに思えるよな


118:名前:名無しのプレイヤー

>>116

>>117


あーうだうだ言うな、試してみろ!

証拠にほら↓


image/n8329gj


119:名前:名無しのプレイヤー

ホントに倒してるじゃん

え、マジ?まさか本人?


120:名前:名無しのプレイヤー

>>119

ちげーよwww

良いか?アイスウルフが飛び掛かってくる瞬間に、怖がらずに顔面に投擲するんだ

それならリアルスキル関係なく当たるから


それで、怯んだところを間髪入れずに武技だ

ここで一瞬でも止まったら武技の途中に噛み付かれる


俺の死体十個分の情報だ、皆使ってくれよ!



◇◇◇



「……これで良し、と」



俺が得られた情報が意味を成すかは分からない。

でも――きっと、やらないよりはマシだ。



「一匹程度で、調子に乗ったらダメか」



もっと、戦わないと。





《経験値を取得しました!》


《レベルが上がりました!任意のステータスにポイントを振ってください》


《投擲術スキルのレベルが上がりました!》



「はあ、はあ……一人じゃしんどいけど、上がるのも早いな」



通算十匹目のアイスウルフを倒した後、俺は呟く。


疲れたが、充実した時間だった。

倒せば倒すほど、効率化されていく。

彼に近付いて行く――そんな感覚が、楽しかった。



◇◇◇



150:名前:名無しのプレイヤー

>>120

おかげで今倒せたわ

ありがとう


151:名前:名無しのプレイヤー

っぱアイスウルフよ


152:名前:名無しのプレイヤー

経験値旨過ぎワロタwww


153:名前:名無しのプレイヤー

えっ?グリーンソルデから出ていいのか?


154:名前:名無しのプレイヤー

調子乗って進んだら熊に殴られて死んだわ


155:名前:名無しのプレイヤー

>>154

調子乗んなww



◇◇◇



「……良かった」


どうやら、皆も成功した様だ。


これはこれで、何か嬉しい。

同職が、俺のおかげで進めたのなら――




《 《 《『ニシキ』様が、ラロシアアイス・フィールドボスⅢの初見撃破に成功しました!》 》 》




「え?」



ぼーっと充実感に耽る間もなく――そのワールドメッセージが耳に入る。

『ニシキ』。

間違いなく、『彼』だ。


――フィールドボスⅢって、三種の内ソロ限定の最難関ボスじゃなかったか……?

それを確かめる様に、俺は掲示板を見る。



◇◇◇


198:名前:名無しのプレイヤー

おい、今の聞き間違いか


199:名前:名無しのプレイヤー

今、ニシキって言ってたよな??


200:名前:名無しのプレイヤー

今の聞いた?


201:名前:名無しのプレイヤー

ヤバすぎワロタwww


202:名前:名無しのプレイヤー

あーあ、ついにワールドメッセージデビューか


それも一番ヤバいやつ


203:名前:名無しのプレイヤー

商人最強!商人最強!


204:名前:名無しのプレイヤー

確かラロシアアイスの最難関ボスだろアレ?


それを初見ってwwwやっぱ人間じゃねえわw

商人最強!商人最強!


205:名前:名無しのプレイヤー

俺達、アイスウルフでヒイヒイ言ってんのに


206:名前:名無しのプレイヤー

っぱボスよ(震え)


207:名前:名無しの攻略組

攻略スレの者です

商人の情報があまり無いので直接お聞きしたい


何か特別なスキルが存在したりするのですか?


208:名前:名無しの検証者

検証スレの者ですが……商人のスキルについて聞いてよろしいですか?


あまり情報が無いモノで、申し訳ない


209:名前:名無しのプレイヤー

何か来てワロタwww


ごめんけど俺は知らないわ


210:名前:名無しのプレイヤー

商人が強いって事ぐらいしか分からないかな……


211:名前:名無しのプレイヤー

>>120さん、ボス倒す方法教えてー!!!



◇◇◇



「ハハ……流石に、無理だわ」



荒れに荒れるスレを見ながら、笑う。

彼は一体、どれだけこの掲示板を騒がせるつもりなのだろうか。


まあ、本人は何も知らないだろうけどさ。


『近付いていく』――なんて言っていたさっきの自分が恥ずかしくなる。



「……行くか」



もっと、レベルを上げないと。

次はアイススライムにしようか?それとも頑張ってアイスベアーにでも行ってみるか?


相棒の片手斧を持ち、掲示板を閉じて立ち上がる。

試行錯誤の日々。決して強くは無いこの職業だが――

アレから、俺はRLが楽しくて仕方がない。



「ありがとな、ニシキ」



ずっと遠い場所に居る彼に俺はそう呟いて――ラロシアアイスを駆けて行った。



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