ラロシアアイス・攻略①
「……ああ、アラーム切り忘れてたか……」
朝六時。
土曜日だというのにアラームで起きる――そんな勿体無い事をしてしまった。
いや、勿体無いってのは逆かもしれないが。
何時もは土曜日は疲れを癒す為ただ寝るだけの日だった。
ただ今日は、そこまで疲れを感じない。
金曜日は定時だったし。
「どうするかな」
……本来は、明日にやろうと思ってたことだけど。
せっかくだしやってしまおう。
一人暮らしだから、色々とやる事があるんだ。
面倒くさい事は先やってしまうに限る。
☆
「中々頑張った」
溜まった洗濯物処理、部屋、風呂、排水溝の掃除。
家計簿管理、書類整理。
適当に作った昼飯を食べながら、綺麗になった部屋を眺める。
我ながらよくやったもんだ。褒めてくれる人なんて居ないが。
……そういや、昨日のハルは生配信者だとか言ってたな。
このゲームには――そういう名目でプレイする人も居るんだろう。
暇つぶし程度にちょっと見てみるか。
「結構あるんだな」
某有名動画サイトで、ゲーム名を検索するだけでそれらしき動画は沢山現れる。
実際、RLは自身のプレイ風景を動画に残すサービスがある。
その動画を編集して、声を入れて――みたいな感じの動画が大多数だ。
生配信はまた別で、違うサービスになる。
同じ動画でも色々とあるものだ。
「……意外と面白いな」
人のプレイ風景なんて見て何が面白いなんて思っていたが、結構良いものだった。
編集も凝ったモノが多いし、人を楽しませようとしているのが分かる。
何より――個人個人でプレイスタイルが違っているから、見てて楽しい。
「動画投稿、か」
呟く。
それは、一つの道かもしれない。
商人である俺が、楽しくプレイしている光景を配信出来れば――
「……まずは、もっと上手くならないとな」
強くならなければ。
そうすれば、色々と選択肢も増えてくるだろう。
まだまだ俺は――戦闘経験が足りない。
「――ん?これ……」
やっと一つ見終わり、何となくで『ランキング』の欄に飛ぶと――ある『動画』が目に入った。
……それは、見知った顔。
「ハルの動画じゃないか?これ……ランキングにのるなんて凄いな」
『商人さんとの行商クエスト☆ミ』。
ゲームカテゴリの中、それは真っ先に目に入った。
恐らく生放送を動画化して、アップしているんだろう。
……って事は、もしかして。
『「!よろしく、えーっと……は、ハルホシ、ミさんかな?」』
『「え、あ、あー!えっと、ハルです」』
『「そ、そっか。よろしくハル」』
それをクリックすると、一瞬置いて流れる俺の声。
「……きっつ!」
――ほぼ反射的に、俺は動画が流れるパソコンを閉じる。
どうやらそれは、俺とのクエストを切り抜いて動画化している様で、開幕から俺の顔が映し出されていた。ドアップで。
自分をこういう視点で見ると、こんなにも恥ずかしいモノなのか……?
別に、ハルは悪くない。あの件ではむしろ、俺は感謝している。
生放送の許可もしっかり俺に取ってたし。
……でも、自分で見る分には絶対無理だ。
俺がまだまだ未熟だと感じているのもあって、そんな姿を世界に見られるのがまた恥ずかしかった。キャラメイク、もっと自分と違うモノにすればまた別だったかもしれないが……今後悔しても遅いしな。
「RL、するか」
しばらくして……ようやく落ち着きを取り戻した所で。
食べ終わった食器を片付け、俺はVRデバイスに手を伸ばした。
☆
《ニシキさん、RLの世界へようこそ!》
せっかくの休日。
時間も沢山あるし、今日はモンスターを狩りながらゆっくりレベル上げでもしよう。
ハルとの戦闘では、モンスターに大分手こずってしまったから。
……きっとそれも、コメントで色々言われてたんだろうな……やめておこう。
☆
ラロシアアイス、戦闘エリアに入ってすぐ。
「あ、そういえば新しく武技が増えてたっけ」
そういえば忘れてた。
昨日、ハルとのクエストの最中の事。
片手斧スキルのレベルが十に上がったと同時に新たな武技が解放されたのだ。
□
≪スキル説明:片手斧≫
片手斧を扱った攻撃にダメージボーナスを与える。
レベルが上がる毎にボーナスは増え、またレベルに応じた武技を扱えるようになる。
≪現在扱える武技≫
スラッシュ:消費MP10 クールタイム3秒
片手斧で斬り付ける攻撃を行う。
攻撃力に依存したダメージを与える。
パワースウィング:消費MP20 クールタイム10秒
片手斧を力強く振り下ろす攻撃を行う。
隙は大きいが大ダメージを与えられる。
□□□□□□□□□□□□□
このパワースウィングというのが新しい武技だ。
スラッシュと比較すると、MPは二倍、クールタイムは三倍以上とかなり重い。
まあ、スラッシュが軽すぎるだけか……実際MP切れなんて滅多に起きないからな。
MPはHPと違い自然回復、及び攻撃がヒットすれば回復していく。MP消費技を連発して、かつ敵への攻撃を全部スカしたりすればMPは切れるかもしれないが。
だから前衛の職業は基本MPではなくHPに目を向けておくモノだ。後衛は逆……いや両方か。
何にせよ、これで『幅』が増えた。
選択肢は多い方が良いからな。決着が早められる良い武技かもしれない。
隙が大きいってのが気になるが……試してみないと分からないな。
「『パワースウィング』!」
発動すると同時に、腕を大きく振り上げて――
「っと!」
濃い青いエフェクトと共に、斧が振り下ろされる。
……うーん。まあ、想像していた通りではあるな……
だが、結局実戦で使ってみないと分からない。
『ピギイ』
あ、こんな所に都合良くスライムが。……戦闘エリアだから当然だけどさ。
『ピィ!』
「っと」
氷柱を飛ばすアイススライム。
俺はそれを、斧で斬り払う。
《Reflect!》
「お」
今日は中々ついてるな。
初っ端から反射出来るとは。
まずはこの調子で少し感覚を取り戻そうか。
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