反射スキル


「どうするかな……」



まさか、ここに来てソロの弊害が来てしまうとは。

一応条件としては職業縛りなんてものはない。


商人同士で……ではないだけマシだろうか。



「パーティー専用、なあ……」



ちなみに、パーティーを組んでいない状態で『氷宝玉の原石の行商』を受けようとすると――



「『一人では少し困難だ。パーティーを組んでから来てくれ」』」



NPCには何度も話しかけたが……

この通り、全く受けさせてくれない。



「……とりあえず出しとくか……」



《特殊クエスト『氷宝玉の原石の行商』を提示しました》



パーティーメンバー募集提示板に、久々にそのクエストを張る。

何週間ぶりか分からない程時間が空いたせいか、張り方も忘れてしまっている自分に焦った。

……前も今も、どうせやっても来なかったからな。



「まあ、いないよな」



何となくまた商人でクエスト募集の検索をかけたが、案の定俺しかいない。

相変わらず商人なんて事をやっているのは自分だけ――いや。



「シルバー、何してるんだろうな」



きっと、彼女は何処かで楽しくプレイしているのだろう。

……そう思っておく事にした。





待つ事十分程。

当たり前だが、来ない。

気配も感じない。このままでは日が暮れそうだ。



「……狩りでも行くか」



何もクエスト募集中は、ひたすら待つ事しか出来ないわけじゃない。


募集提示板に挙げたとはいえ、パーティーの依頼が来るまでは何をしても良いんだ。

まあ、これだけ人口が多いRLで待つ事なんてほぼ無い事だが。

商人だからこそ。むしろ待ち時間に狩りが出来る――そうプラスで捉えよう。



もしかしたら、今日は狩りで終わるかもしれない。

その覚悟はしておこう。








《スキル説明:反射スキル》


遠距離攻撃への攻撃が成功した場合、一定確率でその遠距離攻撃を跳ね返す。

ステータス、攻撃のタイミング、武器等によって確率は変動する。


レベルに応じてダメージは変動する。





《スキル説明:投擲術スキル》


武器、アイテムを投擲した際のダメージが増加する。

また、僅かだが命中しやすくなる。


レベルに応じてダメージ、命中補正は変動する。




特殊クエストのせいで忘れかけていた、新スキルの確認だ。

投擲術はその名の通り、投擲に関しての底上げ。


そして反射スキルは……正直、あまり分からない。

遠距離攻撃に攻撃――つまり、俺がさっきやっていた矢への攻撃みたいなものだろう。

それを行った時に、潰れず跳ね返って弓使いへと飛んでいくという事かな?



……何にせよ、二つともかなり有用なスキルだ。

反射はともかく、投擲術はよく斧を投げる俺にとってありがたい。

いつもいつも命中するわけじゃないからな。少しでも命中補正がかかるなら良いモノだ。



「まあ……やってみようか」



『ピギイ』



目の前にはラロシアアイス名物?アイススライム。

コイツ、確か距離空いてたら氷柱を飛ばしてくるから……



『ピィ!!』



来た来た。


それじゃ――




「らあ!……駄目か」




何も考えず、ただただ攻撃に対して振っただけ。


スライムの攻撃は無効化され、氷柱が跳ね返ってアイススライムに――なんて事はなく。

ただ無効化しただけとなった。



『ピイ』



来ないのか?なんて言いたそうなアイススライム。

……すまないが、まだまだ練習相手になってもらうぞ。



『ピィ!』


「――らあ!」



今度は少し遅らせて……が、意味が無い。

もっと、もっと引き寄せてみようか。



『ピィ!』


「――っと!」



寄せ過ぎて体勢を崩しそうになりながらも、何とか氷柱を潰す。


そして――



《Reflect!》



「……お」



俺の斧が氷柱を潰した瞬間、――確かに『反射』した。


初めて聞く効果音のようなアナウンス。

僅かな発光のようなエフェクトと、何時もと違う感覚が発生すると共に。

そっくりそのまま氷柱がアイススライムへと飛んでいく。



『ピギィ!!』



あ、食らった。

スピードもダメージも、その攻撃をそっくりそのまま返した様な感じだろうか。


アイススライムのHPは一割ぐらい減ってるし、『成功』さえすれば結構使えるな。

……すればだが。


あくまで確率、今の場所が良かったのかもまだ分からない。

つまり。数を重ねて――タイミングを掴むしかない。



「まだまだだな」


『ピギイ……」



恨めしげに睨んでいる気がするアイススライムに、俺は斧の刃を向けた。





《Reflect!》



「よし……結構出たよな」



アイススライムには、自己回復能力がある。

……つまり、休みは無い。無限に俺に射出してくる――倒さない限りは。

VRとはいえ、流石に疲れた。多分百回ぐらい受け続けている。


そして分かった事は……ギリギリで攻撃した方が確率が高い。

引き寄せれば寄せる程良いんだが――逆に寄せ過ぎて被弾した時もあったから、狙いすぎは禁物だ。

一応そのタイミング以外でも発動はしたが、確率は低かった。



《Reflect!》


《Reflect!》


《Reflect!》




感覚が掴めるよう何度も氷柱を潰し、反射させる。

疲れはあったが、慣れてくるとそれも楽しくなってきた。


時間は気にせず、自分が納得のいくところまで。

まだま――






《『氷宝玉の原石の行商』の募集に申請されました》


《申請を受理しますか?》


《受理した場合、近くの非戦闘フィールドに移動します》




……と。

そのアナウンスが、俺の耳に届いたのだった。




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