反射スキル
「どうするかな……」
まさか、ここに来てソロの弊害が来てしまうとは。
一応条件としては職業縛りなんてものはない。
商人同士で……ではないだけマシだろうか。
「パーティー専用、なあ……」
ちなみに、パーティーを組んでいない状態で『氷宝玉の原石の行商』を受けようとすると――
「『一人では少し困難だ。パーティーを組んでから来てくれ」』」
NPCには何度も話しかけたが……
この通り、全く受けさせてくれない。
「……とりあえず出しとくか……」
《特殊クエスト『氷宝玉の原石の行商』を提示しました》
パーティーメンバー募集提示板に、久々にそのクエストを張る。
何週間ぶりか分からない程時間が空いたせいか、張り方も忘れてしまっている自分に焦った。
……前も今も、どうせやっても来なかったからな。
「まあ、いないよな」
何となくまた商人でクエスト募集の検索をかけたが、案の定俺しかいない。
相変わらず商人なんて事をやっているのは自分だけ――いや。
「シルバー、何してるんだろうな」
きっと、彼女は何処かで楽しくプレイしているのだろう。
……そう思っておく事にした。
☆
待つ事十分程。
当たり前だが、来ない。
気配も感じない。このままでは日が暮れそうだ。
「……狩りでも行くか」
何もクエスト募集中は、ひたすら待つ事しか出来ないわけじゃない。
募集提示板に挙げたとはいえ、パーティーの依頼が来るまでは何をしても良いんだ。
まあ、これだけ人口が多いRLで待つ事なんてほぼ無い事だが。
商人だからこそ。むしろ待ち時間に狩りが出来る――そうプラスで捉えよう。
もしかしたら、今日は狩りで終わるかもしれない。
その覚悟はしておこう。
☆
□
《スキル説明:反射スキル》
遠距離攻撃への攻撃が成功した場合、一定確率でその遠距離攻撃を跳ね返す。
ステータス、攻撃のタイミング、武器等によって確率は変動する。
レベルに応じてダメージは変動する。
□
□
《スキル説明:投擲術スキル》
武器、アイテムを投擲した際のダメージが増加する。
また、僅かだが命中しやすくなる。
レベルに応じてダメージ、命中補正は変動する。
□
特殊クエストのせいで忘れかけていた、新スキルの確認だ。
投擲術はその名の通り、投擲に関しての底上げ。
そして反射スキルは……正直、あまり分からない。
遠距離攻撃に攻撃――つまり、俺がさっきやっていた矢への攻撃みたいなものだろう。
それを行った時に、潰れず跳ね返って弓使いへと飛んでいくという事かな?
……何にせよ、二つともかなり有用なスキルだ。
反射はともかく、投擲術はよく斧を投げる俺にとってありがたい。
いつもいつも命中するわけじゃないからな。少しでも命中補正がかかるなら良いモノだ。
「まあ……やってみようか」
『ピギイ』
目の前にはラロシアアイス名物?アイススライム。
コイツ、確か距離空いてたら氷柱を飛ばしてくるから……
『ピィ!!』
来た来た。
それじゃ――
「らあ!……駄目か」
何も考えず、ただただ攻撃に対して振っただけ。
スライムの攻撃は無効化され、氷柱が跳ね返ってアイススライムに――なんて事はなく。
ただ無効化しただけとなった。
『ピイ』
来ないのか?なんて言いたそうなアイススライム。
……すまないが、まだまだ練習相手になってもらうぞ。
『ピィ!』
「――らあ!」
今度は少し遅らせて……が、意味が無い。
もっと、もっと引き寄せてみようか。
『ピィ!』
「――っと!」
寄せ過ぎて体勢を崩しそうになりながらも、何とか氷柱を潰す。
そして――
《Reflect!》
「……お」
俺の斧が氷柱を潰した瞬間、――確かに『反射』した。
初めて聞く効果音のようなアナウンス。
僅かな発光のようなエフェクトと、何時もと違う感覚が発生すると共に。
そっくりそのまま氷柱がアイススライムへと飛んでいく。
『ピギィ!!』
あ、食らった。
スピードもダメージも、その攻撃をそっくりそのまま返した様な感じだろうか。
アイススライムのHPは一割ぐらい減ってるし、『成功』さえすれば結構使えるな。
……すればだが。
あくまで確率、今の場所が良かったのかもまだ分からない。
つまり。数を重ねて――タイミングを掴むしかない。
「まだまだだな」
『ピギイ……」
恨めしげに睨んでいる気がするアイススライムに、俺は斧の刃を向けた。
☆
《Reflect!》
「よし……結構出たよな」
アイススライムには、自己回復能力がある。
……つまり、休みは無い。無限に俺に射出してくる――倒さない限りは。
VRとはいえ、流石に疲れた。多分百回ぐらい受け続けている。
そして分かった事は……ギリギリで攻撃した方が確率が高い。
引き寄せれば寄せる程良いんだが――逆に寄せ過ぎて被弾した時もあったから、狙いすぎは禁物だ。
一応そのタイミング以外でも発動はしたが、確率は低かった。
《Reflect!》
《Reflect!》
《Reflect!》
感覚が掴めるよう何度も氷柱を潰し、反射させる。
疲れはあったが、慣れてくるとそれも楽しくなってきた。
時間は気にせず、自分が納得のいくところまで。
まだま――
《『氷宝玉の原石の行商』の募集に申請されました》
《申請を受理しますか?》
《受理した場合、近くの非戦闘フィールドに移動します》
……と。
そのアナウンスが、俺の耳に届いたのだった。
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