第28話 何が違うっていうのさ
比べるから悲しくなるなんて言うけどさ。
比べちゃうよね。
「カーブミラーに左右があるでしょ。その左側に夕日が反射してるんだ。太陽のそのままの形でね。ていうことは左側のカーブミラーは西側を向いててその突き当たりを左折すると西へ向かう道だってことだよね」
「うん」
「右側のミラーには日の光はなくてただアスファルトと側溝と家の建物が映ってるだけ。ねえ
「さあ」
わたしが簡潔に二文字ずつだけで答えるとモヤはフィルターをしゃぶる唇をすぼめて頬をこけさせてさ、ジ、てタバコの先っぽを夕日の小型みたいにオレンジ色の高温の光にしてから煙を吐いた。夕日の明るさで煙が見えなくて、エチケット灰皿に、ト、って灰を落とした。
「シャム。わたしホンキで自分の店持ちたかったんだ。でもやめてこうしてスーパーで働いてる」
「うん」
「中学出てそのまま美容師になったセエノは独立して自分の店出したんだよ?ねえシャム。わたしとセエノと何が違うの?」
「さあ」
モヤは28歳。高卒で美容師になって地元の美容室で働いてたけどお客がつかなくて結局辞めたって前に言ってた。
今聞いたセエノって子はモヤと同学年だったんだろう。わたしの感覚だけで言うと中卒で美容師になったんならモヤより3年先行してるわけだからさ。
「シャム」
「うん」
「どうして『うん』と『さあ』しか言ってくれないの」
「さあ」
スーパーの駐車場の車止めのコンクリに座ってたモヤがやっぱり隣のコンクリに座ってるわたしに笑いながら火のついたタバコを放り投げようとジェスチャーした時、カートを片付けに来た主任から声が掛かった。
「モヤさん!休憩終わりだよ!」
「はーい」
エチケット灰皿の側面で火を消してモヤが立ち上がった。
「じゃあ行くね」
「うん」
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