第17話 あんぱんには牛乳で合ってるよね?

 さてとランチタイムだ。


 えっ。その前にさっさとわたしの職業を明かせって?


 ノノノノ。

 そう簡単には晒さないよ、ケラケラ。


 まあ職場から少し歩くとスーパーマーケットがあってね、逆にいうとコンビニがないのさ。


 ほんとに田舎だから。


 けど、なぜか若い子たちがお昼時にランチにやって来るんだ。


 全員すぐ側にある高校の生徒たちだけど。


「うおー、俺麦茶の1リットルパック行っちゃうぜー?」

「おいおい。昼からの授業中に尿意催すぞー」

「コラ、尿意とか言うなよ。女子もいっぱいいるんだから」

「別にー。男子が尿意とか言うんならウチらは糞尿意とか言っちゃおうか」

「あーあ、だからこの高校は万年滑り止めなんだよー」


 キャラキャラ女子も男子も楽しそうに話してるのを聴くのは不快じゃない。

 なんていうか言葉がちょっとぞんざいだったとしても顔を見たら純朴そのものだし。

 女の子たちも脚を極限までに見せたりしてもいるんだけど、踝までのソックスがよく見たら年寄りのばあちゃん連中が畳の上で履いてるようなやたら色がどぎつい靴下だったり。


 男子は男子で背負ってるリュックがNORTH FACEなのに履いてるのがコンバースのデニムのペラペラのシューズだったり。


 わたしもひとのこと言えないけどね。


 さて。

 さっき麦茶の1リットルパックをお昼休みに飲み干そうという男の子が主食として買ったのはピザ風のパン。


 なんだピザ風のパンて。

 ピザトーストでもなく、ピザっぽいパン。


 ここはひとつわたしが高校生どもに模範を示して指導せねばなるまい。


「えっへん」


 誰が聴いているわけでも見ているわけでもないだろうけどわたしは自分のセンスを誇示した。


 脚を組んで今日に限ってパンツでなくスカートを履いてきてしかも裸足にデッキシューズというまあ細さだけがウリの足首からふくらはぎからハムストリングスあたりを晒しながら。


 食べたよ、あんぱんを。

 飲んだよ、200ccのビン入り牛乳を。


「おっ」


 反応した男子が何人かいる。

 彼らの腹の内を読んでみようか。


『カッコいいな、あのあんぱんを齧る顎の角度』

『おおー、粒あんかな?こしあんかな?もし粒あんだったら、小豆が口元にちょちょっと付いてる感じがえっちなシチュにでもならんかな?』

『うー。牛乳を顎の辺りまで滴らせたりしたら・・・・たまらん!』


 ふふん。

 どうしよっかなー。

 ココロの中の彼らのリクエストに応えよっかなー。


「ウチもあんぱん」


 背の高い浅黒でスレンダーな・・・・・まあはっきり言ってカッコいい女子が男の子たちの隣で言った。


「あんぱんはあんぱんでもホイップクリーム入り」

「うおー。カロリーの権化かよー」

「見て見て、んでね、飲み物は『スターバカ』のカフェモカ。ホット!」

「おおー」


 な・ん・だ・っ・て・え!


 あんぱんにカフェモカ?

 甘さと甘さを衝突させてどうすんの!?

 しかもホイップクリームがホットな液体で瞬時に溶けちゃうじゃない!


「いやー。どう?飲んだことないけど、ウインナコーヒーってやつ?」

「おいおい。どう違うんだよー、ハハハハ!」

「あんぱんにはカフェモカだよねー!」


 さて、午後からも仕事だわ。

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