Ⅱ章・オープニングフェイズ 砂漠の隊商

◆オープニングフェイズ 砂漠の隊商


 突然、ギルドハウスに転がり込んできたミリー。おおらかなミース支部のメンバーはその求めに応じ、彼女をルネスまで送り届けるとともに、窮余の食糧を輸送する手伝いをすることを承諾した。


GM:皆さんですけど、ギルドハウスでミリーを回収して、キャラバンを出してもらって出発しています。

シェンメイ:キャラバンというとやはりあの人?

GM:そうですね。皆さんには馴染みの隊商主がいます。ドゥアン・有角族の男性、ウォールドさんです。


▼NPC列伝 ウォールド

 キルディア共和国、"黄金の街"カルカンドに本部を構える大規模な隊商連合「ベルターザ・キャラバン」の一員。"新しき街"ミースを拠点とするの輸送を引き受け、パリス同盟方面からエルーラン方面まで、広く扱っている。リーダーのベルターザとは親友である。

 かつて護衛の任務を社会保障支援機構に依頼したことがあり、その道中彼らが魔獣に襲われる開拓村を守り抜く様子の一部始終を目撃。快く寄り道に付き合ってくれたのみならず、彼らのことを高く評価し、親しく交流するようになった。

 その後も輸送の任務を依頼したり、求めに応じてラクダを貸与するなど、同ギルドのミース支部とよく助け合う関係を築いている。



ミナカ:前にもお世話になったね。

GM:皆さんは"新しき街"ミースを出まして、ウォールドのキャラバンに同行して南下。中継地点として、"迷路の街"メアンダールを目指して移動中です。

ミリー:メアンダール?

GM:キルディア共和国領内の街です。ミースとカルカンドの間にあって、ここから南西へ向かい、エリン山脈を迂回する街道を通るとルネスへ行けます。そのルネスへ向かう街道の国境付近にあるのが、今回ミリーが守っていたレニワン砦となります。

フォニエ:"迷路の街"って?

GM:キルディアの都市は遺跡がベースになった所が多いです。メアンダールは特に街路が複雑なのでそんな風に呼ばれています。

ゲッカ:遮蔽物が多いステージじゃん。

GM:うるせえ。


 今回、メンバーの合流から出発までは告知とハンドアウトで済んでいるので、既に出発していることになり、オープニングフェイズはその道中から始まっている。


GM:さて、ウォールドさんですが今回のミッションについて話をしてくれます。まず、「しかし、いきなりキャラバンを出せと言ってきたときは驚いたぞ」と。

シェンメイ:「無理を言ってすみません」

ミリー:「一刻も急ぐ事態なんだ」

GM:「まあ、無理はしたが……君たちの頼みと言う事なら、まあ構わんさ」と言って荷台に目をやります。

ゲッカ:「物資補給も立派なスコアだし、ね?」

GM:みなさんの後ろには、ガラガラの荷台がありますね。

ゲッカ:もう積んであると思ってたけど、これから物資確保やってく感じ?

GM:そのへんをウォールドさんが説明してくれるよ。「キルディア共和国は……まあ、分かるとは思うが、食糧生産に向いた土地とは言えん。どちらかと言うと、こちらの方がおたくら……エルーラン王国さんから買わせてもらっているんだよ」

ミナカ:あー。

フォニエ:砂漠だしねえ。

GM:はい。当然、食糧は輸入に頼っています。それこそエルーランみたいな国から。「……だから、積み出していけるような食糧はほとんど無いと言っていい」と言っています。

ミリー:「アテはあるんだろう」

GM:「むろん、蓄えというものはあるから、多少は積ませてもらったがね。これは苦肉の策というものだ。良心的な価格とはいかないよ」というわけで、積まれている食糧はわずかで、それも高額となることが予想されます。

フォニエ:「あ、もしかしてそこら辺の魔物から調達したりするやつ?」

GM:そんな無茶が通るならキャラバンなんてやってないです。

ゲッカ:「最悪、砂でも食わせればいいでしょ。醤油かければ案外いけるって聞いたよ」

シェンメイ:「流石に砂はクラウスでも食べてなかったですし」


 ゲッカが言っているのは、GMぶっぱのPC、ユーコが砂漠で遭難したときの話だろうか。確かにサソリを捕まえて食ったりする描写があったが、いくらなんでも砂は食えない。


GM:で、ウォールドさんの話を続けるよ。「まあ、君たちの頼みということなら、と言ったのはアレだ。ずいぶん大きなギルドになったようじゃないか。これからもどうか仲良くやってもらいたい」

ミナカ:いいよ!

GM:「それに、だ。君たち最近はずいぶんと羽振りがいいようじゃないか、砂竜狩りの話、聞いたぞ」ニヤっと笑いますね。

ゲッカ:あ、その話有名になってるんだ。

フォニエ:確かにあれはいい稼ぎになったよね。さすが商売人。

ミリー:(モノさえあればいい。もとより商人に良心など期待していない。)


 ミース支部が少し前に参加したシナリオ、【サドンワーム】の話である。

 無限の砂漠に住まうサンドワームを現地のハンターと協力して狩りに行き、その貴重なドロップ品を複数手に入れたのだ。サンドワームだけでなく、姿を消すヒドゥンワームとか、突然動き出すサドンワームとか、訳の分からないエネミーが続々出てきた。GMは、ゲッカのPLらんどう。


ゲッカ:「なあなあ、なんか良い仕事あったの? 私抜きで?」(こそこそ)

GM:お前のシナリオだぞ。

ゲッカ:だからだよ。

GM:まあ、ミリーに答えますよ。「さて、アテということだが。まず、我々はメアンダールへ向かう。そこでこちらの荷下ろしをする。それくらいのついでは構わんよな?」

フォニエ:それは当然。

ミリー:タダでキャラバンを出してもらえるとは思ってない。

GM:はい。でもまあメアンダールも砂漠の街なので、「そこでも持ち出せる食糧は募る予定だが、まあ期待はできん。そこで、エルーラン王国に入ったらルネスに直行はしない」と。

ミリー:ほう。

GM:地図の、ルネスよりも西の方。エルーラン北西の国境付近を指して言います。「そこのヴァーナのお嬢さんは知っているだろうが、ここに"大河の街"ウィンディアという都市がある。恵まれた気候から、農業で栄えている街だよ。うらやましい限りだが、我々のキャラバンは普段からここで食糧の買い付けをしている」

ミナカ:これ?

ゲッカ:公式の地図にある街だね。

GM:名前しかないから設定は全部捏造なんだけどね。

フォニエ:そういうもんだよね。

シェンメイ:でも、山裾の平野で大きな河川がありますから、これは確かに自然。

GM:さすがわかってくれるか。で、「しかしこの町は、君たちの……ええと、何と呼ぶのだったか。アンナ女王の治めるルネス朝とは違う。旧ログレス朝に占拠されている街だ。まあ、私にとってはいずれにしてもよき商売相手なんだがね」と。現状北朝の勢力圏はルネス周囲の限られた地域のみに留まります。改めて地図にするとこう。


https://drive.google.com/file/d/14UsVEEbn4h5dg03TqP8ouCFPFiJ53OjC/view?usp=sharing

 現在のエルーラン南北朝勢力図。


ミリー:赤いところが北朝の支配地域ってことか。

GM:そう。ルネスとウィンディアの間のこの○がレニワン砦です。

ミリー:最前線じゃないか!

GM:だから君が行かされてるんだぞ。

シェンメイ:これは、食糧があっても輸送できる気がしないですね。

フォニエ:ところでGM、このシナリオって虚無じゃなかったっけ。

GM:虚無だぞ。


 シナリオ考えてキャラハンドアウト書いて地図作ってエネミーデータ用意して諸々2時間。NPCの会話は台本なしである。


GM:さて、ウォールドさんの話の続きね。「大っぴらにルネスに運ぶと言っても売ってはもらえんだろう。捕まるのがオチだ」

ミリー:「ミリーだ。」一応名乗っておく。それから……「ではどうする。あんたにとってもよろしくやりたい相手なんだろう。」

GM:はい。そう尋ねるとですね、「我々はいつも通りに、織物と工芸品を売り、食糧を買い付けるよ。その後カルカンド、ミースと渡るつもりなのだが、途中、北朝の勢力圏を通る。不運にも積み荷を奪われないとは限らないな」って。

ミナカ:ふーん?

ミリー:何が言いたいんだ。

GM:皆を見て、「そのために君たちに護衛を頼んだのだ、まさかそんなことにはならないだろうが。まさかな。まあ、そのようなことになったら、ギルド社会保障支援機構は身内の暴走を詫びて、我々に纏まった金額を振り込んでくれるだろう」と。

フォニエ:これこそぶっぱのNPCって感じだな~~~~。

シェンメイ:本当それ。

GM:まあ、ニヤリと笑って、「だろ?」と。

ミナカ:「あー」

ミリー:何だ、要するに僕達に積み荷を奪わせて、代金は後でギルドから受け取るつもりか。

GM:そういうことですね。北朝の支援をしたのではなく、あくまでも事故で、社会保障支援機構から受け取るのはその補償だと。「おっと、メアンダールが見えたぞ」ここらでシーンを変えたいですけど。

フォニエ:「前から思ってたんだけど、このギルド名ってどういう意味なの?」

シェンメイ:「私も詳しくは」

ミリー:「今その話するか?」


 本部ギルドマスターであるプラチコ・フロルスの理念を表しているそうだが、実際誰にも分からない。公的機関などでないことは間違いない。


GM:まあ、話が続くならウォールドさんももう少し喋ろうかな。「まあ、君たちが居れば安心だからね。食糧を積んだ後、我々は荷車を置いて夜遊びでもしているだろうさ」

シェンメイ:「はい。お任せください」

ミナカ:「安心安全ですよ」

ミリー:「そうだな、依頼人の命に代えてでも積み荷は守ると約束しよう。」

GM:そこに代えないでくれ。


 こうして一行は、"迷路の街"メアンダールに到着。ウォールドのキャラバンは、積み荷の整理を行うので、それを待つことになった。


GM:皆さんはメアンダールでキャラバンの支度を待つことになります。食糧よりも、ウィンディアで売るためのものを主に積んでいますね。

ミリー:仕方ないだろうな。

GM:ウォールドさんは皆さんに、「明朝、出発する。何かと危険の多い街道だ、護衛は頼むぞ」と伝えていきます。

ゲッカ:「守れるかどうか分かんないけど倒すから大丈夫」

シェンメイ:お力になれる範囲でしたら。

ミリー:物さえ手に入るならいくらでも戦う。

GM:では、シーンを終えましょう。次は、"大河の街"ウィンディアを目指して出発することになります。

ミナカ:おー。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る