序章・ミドルフェイズ7 銀嶺城に月の懸かりて

◆ミドルフェイズ7 "不夜の街"ログレス 銀嶺城


 番人であるダイアゴーレムを退けた一行は、遺跡を通り抜け、目的とする銀嶺城の地下に辿り着いていた。


マジカルイワシ:エベントンと姫様はどっちも西の塔だったよな。ここでいいのか?

GM:はい。間違いなく目的の場所へ辿り着いています。そもそもアンナ姫の脱走経路ですから、アンナ姫の部屋から近くないとおかしいのです。

カイン:シュペンガー伯が居るのは1階の懺悔室で、マリアは3階でしたね。「では、ここからは一人仕事でしょうか」

GM:3階にはカインだけで潜入するわけですね。

カイン:そういう言伝でしたからね。『ドレスブック』で警備兵の姿になります。

GM:お前も面妖なアイテムを使うのか。

マジカルイワシ:頑張れよ。


 エベントンを救出するメンバーは、1階の懺悔室へ。カインは、単身3階へ向かうことになった。シーンを分けて描写していく。



■エベントン救出組


GM:ではカインと別れたところで。何やら遠くから声が聞こえてきます。残った皆さんは【感知】判定、難易度は16です。


カイン:デイジーさん? 私はこの場には居ないのでしょうか。

GM:そうですね、カインは3階へ駆け上がっているところです。

マジカルイワシ:「あの女が手を引いてるのか?」2D+6、12で失敗だ。

クラゲカマキリ:私も失敗だな。

紗綾:《トリビアリスト》します。2D+10で、あ、低い。14……振り直しで。もう一度2D+10! 19で成功!

GM:では紗綾ちゃんは、城門のほうから聞こえる声を聞き取ることができます。「倒幕あるのみじゃああああああああああ、貴様らああああああああ、邪魔をするなあああああああ」と叫んでいるようですね。

紗綾:ほんとにデイジーさんじゃねぇか! 「……なんでデイジーさんが? え? ……え?」

GM:何やら揉み合っているらしい物音と、警備兵が城門の方へ駆け付けていく音も聞こえます。

紗綾:「…………急ぎましょう。好機です。これは好機です」

GM:では、エベントンさんのいる懺悔室まではすんなり行けるよ。扉には簡単な鍵が掛けられています。エベントンさんも流石に騒ぎを聞きつけたようです。「騒がしい……何があったのだ? ……まさか彼らが……いや、いくらなんでも」と。ルネス残留組がここまで謀反を働きに来たのかと心配していますね。

紗綾:「……エベントンさん。私です」

GM:「!? 紗綾くんか!?」

紗綾:簡単な鍵は簡単に開けられそうですか?

GM:簡単に開けられそうだから簡単な鍵って言います。

紗綾:はい。じゃあ『マジカルキー』で開けます。

マジカルイワシ:「……なんのためにそんなものを持ち歩いてるんだ……」

GM:犯罪の臭いがします。

紗綾:「いやえーと、備えあれば患いなしかな、と……」

ロット:「あ、それ魔法の鍵って奴ですよね」

ぽんぬ(野次馬):かぎばあさんの亜種かな? あの人もバッグから無限に物が出てくるし。

クラゲカマキリ:かぎばあさん懐かしいな。


 児童書『ふしぎなかぎばあさん』シリーズ。家に入れなくなった鍵っ子を助けてくれる不思議なおばあさんの話。一押しは、ピッキングを極めてかぎばあさんになろうとしたクソヤバ異常者が出てくる『にせもののかぎばあさん』。

 何の話だこれ?


GM:「な、なぜ、どうやってここまで……いや、それはいい。無事かね?」

紗綾:「えぇ。むしろ、エベントンさんの方こそどうですか? 大丈夫でしたか?」

GM:「ああ。裁判の根回しもさせてもらえん軟禁状態だがな。しかし、まさかワシを連れ出しにきたというのか。……そんなことをしても、何にもならんというのに」

紗綾:「えぇ、ちょっといろいろあって……今回に限れば、ベアトリスさんは味方です。表立っては厳しいみたいですが。あの人はあの人で、ログレスを浄化したいみたいです」

マジカルイワシ:「すでに姫様を攫いに行ってるから、来てもらえないと困るな」

GM:「……あの女が何を考えておるかわからぬが」で、イワシの方を見て、目を丸くして言うよ。「……今何と?」

マジカルイワシ:「カインが、あんたを助けるために、姫様を攫いに行った」

GM:「……」エベントンさんは絶句していますよ。

マジカルイワシ:「以上だ」

GM:「……いや、何も言うまい……もはやこれまで、毒食わば皿、いや食卓までか……」

紗綾:「今回はお姫様も味方みたいです。お姫様は、父のことを心配していて、だからこそ止めたいみたいです」

マジカルイワシ:「一発逆転に掛けようじゃないか、なぁ」

紗綾:「さて、いま外で、なぜか、なんでかわからないんですが、デイジーさんが暴れてます。なぜかは本当にわからないんですが、いまのうちです。早く行きましょう」

GM:「……わかった、一緒に行く。出るアテはあるのかな?」

マジカルイワシ:「脱出より先にカインと合流だ」

紗綾:ですよね!

マジカルイワシ:「あいつ、今頃うまくやってるだろうか……。まぁ、やるときはやる男だろうし、問題はないだろうが……変な事を言い出さないかが不安だ」



■城門前


 なお、そのころ。


エリオット:「よし、撤退だ。おウサ様がなんとかしてくれるって手紙には書いてた」

ミリー:「そりゃ追われるのには慣れてるが……って怪しげな闇の組織にすらその認識か!!!」

GM:流石じゃん、撤退戦のエキスパート。


 エリオットはデイジーを引きずって撤退を始めていた。

 引いても動かなかったら、ミリーが《ハリケーンブロウ》でドリブルすれば大丈夫。



■カイン


 一方カインは、警備兵に扮し、アンナ姫の寝所へと向かっていた。完全に、王女に狼藉を働く逆賊である。


GM:なんか警備は手薄になっていて、すんなり向かうことができるよ。

カイン:何があったのでしょうね。

GM:王女の部屋の前の兵士も、「おいお前、ここは任せた。俺は様子を見に行く」って行っちゃった。ドアの中から「騒がしいですよ、何事ですか」って声がします。

カイン:では、ノックをして入ります。(コンコン)

GM:「何事ですか。説明をなさい」

カイン:「マリア様、私です。扉を開けていただけませんか」

GM:「……その名を呼ぶお前は何者ですか」

カイン:「カイン・ライヴァン。あなたの騎士でございます」

GM:「……夢ではないのですね?」と言って扉が開けられる。アンナ様が顔を出すよ。で、カインを見るなり「誰!?」って狼狽えます。

カイン:ああ。『ドレスブック』を解除します。

GM:「あ、ああ、驚いた。魔法かしら?」

カイン:「そのようです。詳しい仕組みは分かりませんが、いずれにせよ便利なものですね」

GM:「カイン、来てしまったのですね。私は、逃げろと命じたのに」俯いて言う。

カイン:「はて。マリア様からの直々の命令は頂いておりませんが」

GM:「お前はそれでも騎士ですか!?」これはおこですよ。

カイン:「えぇ。間違いなく」

GM:「……仕方ありません。改めて命じましょう」


ぽんぬ(野次馬):昔のエロゲってそういうシーンでピアノかオルゴールの曲かかったよね、わかるわかる。

えびふらい(野次馬):それっぽいのを自分で流しています。

GM:君たち。


 気を取り直して。


GM:「我が騎士カイン。……妾を連れて逃げなさい。妾をどこまでも守ると、誓いなさい」そう命じてから、続ける。「……わたくし、あれからたくさんのことを学びました。そして、わかりました。わたくし、このままここに居ては、殺されてしまいます」


 怯えたようになり、少しだけ素の顔を見せたアンナだが、すぐにまた王女然として言った。


GM:「妾は一人では何もできぬ。しかし、我が第一の騎士たるお前と、邪神をも打ち破ったという仲間の助けがあるなら……このエルーランに新たな風を吹かせること、できるやもしれません。……ベアトリスの受け売りですけども」

カイン:「私には過ぎた評価です。私には、他人を守ることなどできません。しかし、ご命令とあらば従わぬ理由もございません。このカイン、あらゆる非道を尽くし、騎士道に反してでも、主マリア様をお守りすることを誓います」

GM:「お前は騎士だという。妾が道を違え、お前の承服しかねるような命令をしても従うか?」

カイン:「残念ながら、私は裏切りの騎士ヴェインの末裔です。そのようなことがあれば、きっと私に流れている血はあなたに刃を向けさせるでしょう。ですが、それが私の最大限の忠誠であると、ご理解いただきたい」

GM:「なればこそ、お前は我が騎士にふさわしい……」そう言ってから、ぱあっと笑って、「ふふ、夢じゃないのね。この未熟者を、もういちどマリアにしてくれるのね?」と。


えびふらい(野次馬):頼りない月明かりだけが2人をぼんやりと照らしているんだろうな~~~~~~~~~~~~~~~~~~。

紗綾:めっちゃいい雰囲気だな~~~~~~~~~。

ぽんぬ(野次馬):あ〜〜〜〜〜良さありますね、これは。


カイン:「はて、何を仰るやら。初めてお仕えしたときから、私はずっと『マリア様の』騎士ですよ」

GM:「外が騒がしい、行くなら今のうちね。大丈夫、走るのは慣れてるわ。行きましょう!」カインの手を取り、トントンと靴を直して言うよ。


ぽんぬ(野次馬):カインくんドチャクソかっこいいんだよな。

GM:台本なしでこのシーンをぶん投げても、まあカインとこのPLなら何とかするだろうと思っていました。

ぽんぬ(野次馬):わかる。

GM:でも思ったよりもかっこよかったなあ~~~。



■合流


GM:では、それぞれ目的の人物を保護した皆さんは、例の遺跡に繋がる地下室で合流します。姫は楽しそうです。「まあ。こちらカインのご友人たち?」

カイン:「普段世話になっている人たちです」

GM:「素敵な方達ね。……貴方、邪神を討ったと言われる、"神々の御子"サーディン様ではなくて?」イワシの方を見て言う。

紗綾:「あなたがアンナ様ですね。私は——」と軽く自己紹介はしておこう。それはそれとしてサーディン様。

マジカルイワシ:「あぁ、そういえば会ったことがありましたね……カインに変な事はされていませんか?」

GM:「ええ。……カイン、お前は妾に変なことをするのですか?」

カイン:「ははは、ご冗談を。そんなわけないでしょう。私はマリア様の騎士ですよ」

ロット:(変な事……? お姫様抱っこしたまま毒の沼地歩き回って自滅して経験値稼ぎしたりとかかな)

GM:本当に変なことなんだよな。あと、アンナ様はカインに耳打ちします。「(ひそひそ)ねえ。サーディン様、お話にあった通りの容貌ね」

カイン:「(ひそひそ)彼にも複雑な事情があるのです」

GM:そんで、エベントンさんがアンナ様の前に出てきます。「……こほん。アンナ様、憚りながらお目にかかり申す、私、ルネスを任されておりましたエベントン・シュペンガーという者。失礼ながら……まことに、そこな騎士と共に、この銀嶺城を後にすると仰いますのでしょうか」

カイン:(騎士! エベントン様も私を騎士と! これは名実ともに騎士ですよ! 見てますか我が祖よ!)

GM:「?」

カイン:?

GM:話進めますね。「? 妾が、城を出ると言って、出なかったことがありましたか?」アンナ様はとぼけるけど、「今や、事は御戯れでは済ませられぬ状況。姫様の真の心胆をお伺い奉ります」エベントンさんはあくまで真剣。

ロット:「お姫様についてよく事情は呑み込めてないですけど……カインさんが引き連れてきたということはきっと義があっての行動なんでしょうね」

マジカルイワシ:(カインに対しての過大評価が過ぎるだろう)

紗綾:デイジーさん効果も長続きしなさそうだし、長居してるのもまずそうかな。

GM:まあひとしきり話がつくまでは大丈夫ってことで。アンナ様も真剣にエベントンさんに向き合って、「我が騎士カインは、妾をどこまでも守ると誓いました。ならば、どこへ向かおうと構わないでしょう。妾とてもはや無知な小娘であろうと思ってはいません。ルネス伯シュペンガー、そなたの忠誠は王位にありますか、それとも、エルーランにありますか」と問います。

カイン:光栄です。

GM:「……許されるのであれば、我が忠義は正しき祖国とその民に」エベントンさんも迷いなく答える。姫が「ならば妾の共をせよ。そなたの領地へ案内せよ。よいな、エベントン?」と言うと、「身に余る誉れにございます。心より歓迎いたしましょう」と言って、臣下の礼を取ります。

紗綾:つまり、アンナ様がルネスに来る?

マジカルイワシ:本当に王女誘拐じゃないか。やるなカイン。

GM:アンナ様はそこまでやってから、皆さんの方に向き直って、「……ふう、畏まるのはやはり疲れてしまいますね。皆さん、今はどうかわたくしに協力してください。カインとそのご友人の力があれば、わたくしでも何かを為せましょう」と頭を下げます。

紗綾:「えぇ、もちろんです。現状を打破したい気持ちは変わりません」


 一行はアンナとエベントンを伴い、遺跡の廊下を引き返していく。永遠の輝きと言うだけあり、ダイアゴーレムはすっかり元通りになっていたが、アンナが秘石アステリアを取り出し、掲げる。


紗綾:「それが、王の証ですか……」

GM:「王の証……アステリア、確かに……」となって、ダイアゴーレムは動きません。

カイン:マリアはこうやって城を抜け出していたわけですね。


 あとはアンナとエベントンをルネスへ連れ帰るだけ――と、思われた。


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