序章・オープニングフェイズ 負傷兵の報せ

■"温泉の街"ルネス街門


 エルーラン王国北部に位置するルネスの街。それを目前に、街道で隊商の荷馬車が何やら立ち往生している。倒木でもあったようだ。

 ルネス自警団と、街に駐留する社会保障支援機構ルネス温泉支部のメンバーがそれを助けているようだ。


GM:最初のシーン、登場しているのはロットとクラゲカマキリです。二人は荷馬車を助けてあげました。【筋力】判定とかあったんだと思います。お前たちなら通るよ。

ロット:助けました。

GM:「いやあ、剣士様は本当に頼りになるお方だよ」商人がお礼を言ってくれる。君たちの他にも、ルネス自警団の現リーダーであるガルバン君がいるよ。


 ガルバンは屈強な種族である、ドゥアン・有角族(セラトス)の男性。先代団長ヤヴァッチがセクハラスキャンダルで街を追われた後を継ぎルネスの平和を守る、心正しき若者である。


GM:初登場なので列伝とかはないです。「ええ。社会保障支援機構の皆さんが来てくれて、ここら一帯は本当に安全になりました」と。

ロット:「いえいえ。喜んでいただけて何よりです」

クラゲカマキリ:「ふむ。こうして人助けをするのは善きことなのでな」

GM:そうしていると、街道の脇の森から声がする。

クラゲカマキリ:「んん?」

GM:騎士が現れるよ。どうやら矢傷を負っている。「すまない、誰か、誰かいないだろうか」

ロット:「んっ、大丈夫ですか!?」

GM:「私はエルーラン王国、赤枝の騎士団に所属する、ルートという者。誰か、この手紙を届けてくれないか」


 ルートはかつて【ダブルイメージ+】で登場した、エルーラン王国の騎士である。その際にギルド・社会保障支援機構に助けられたことをきっかけに、依頼の仲立ちをするなど同ギルドとは親しくしている。アイコンはエネミーの「騎士」だった。


GM:そういうわけで久々登場のルートくんだよ。エネミーっぽいアイコンだけどエネミーじゃないので安心してあげて。

ロット:「クラゲカマキリさんは周囲の警戒をお願いします! 僕が手当てをするので!」

クラゲカマキリ:「承知した!」

GM:では、ルートくんは君たちに手紙を渡します。「私は、さる高貴なるお方に遣わされた者だ。この手紙をどうか届けてくれ」

ロット:「手紙? いったいどこへ?」

GM:「届ける相手は——社会保障支援機構の、騎士カイン」

ロット:「……!! わかりました!」

GM:「ひどい怪我だ……早く街へ。ルネスには、傷に効く湯もありますので」ガルバンくんが彼を担いでくれます。ドゥアンなのでガタイがいいんですよね。

クラゲカマキリ:「なぜそのような怪我を?」

GM:「これは……恥ずかしながら、仲間であるはずの者たちから。奴らはこちらへ向かっています。この手紙を、早く」

クラゲカマキリ:「なに? 仲間からだと? それは随分と辛い思いをしただろう。承知した。確かに追っ手が来ては太刀打ちできないからな」

GM:「社会保障支援機構……彼らなら、きっと」

ロット:(仲間であるはずのものから攻撃……? 《連携攻撃》の都合上やったとかじゃないのかな)

GM:よろしくない教育が為されているなロットくん。

クラゲカマキリ:「ああ、私達のギルドならきっと大丈夫だ」



■「社会保障支援機構ルネス温泉支部」ギルドハウス

https://platycodon.wiki.fc2.com/upload_dir/p/platycodon/f29d79fc04f3c4ef1c8b9dc1a18a404a.png

 ギルドハウスのイメージ画像。


GM:ではシーンを切り替えます。ルートくんはガルバンが馬車に乗せて街中へ運んでくれるので、君たちはルネス温泉にあるギルドハウスまで来ました。みんな登場してOK。エベントンさんと君たちで手紙を見ているよ。


エベントン・シュペンガー。プリプレイで列伝が紹介されたルネスの領主である。


クラゲカマキリ:(改めて思うが、このギルド社会への影響度高いな)


 なお、この「社会保障支援機構」という名称だが、公的な機関というわけでは全くない。ギルドマスターのプラチコが勝手にそのように名付けただけである。


マジカルイワシ:自分は帰ってるの?

GM:ああ。イワシは先日まで別支部で精霊王の武具の探索に加わっていましたね。

マジカルイワシ:神殿とやり合って来たぞ。

GM:ハンドアウトにある通りクラゲカマキリに呼ばれて戻ってくることになるんですが、まあ急いで呼ばれたので帰ってきたってことでいいでしょうか。

マジカルイワシ:じゃあ『マーメイドシールド』の効果で【魔法防御力】が15から20になる。じゃぶじゃぶ。

GM:温泉で遊泳状態になるな。

ロット:では「カインさん、傷ついた騎士団の方があなた宛てだと」

カイン:「私に手紙、ですか。ともあれ、ありがとうございます。ちょっと失礼」読んでます。

GM:手紙の内容はこんな感じです。


「親愛なる我が騎士カインへ。

 まだルネスに居ることと思います。大変なことになりました、このような無粋な手紙でお伝えすることをお許しくださいね。

 ログレスでは、ルネス伯シュペンガー様に、王都への反逆の意志ありとする意見が強まっています。神聖帝国と密通し、我がエルーランの転覆を図ろうとしているのだと。貴方の所属するギルドがその手引きをしているのだと。

 一部の貴族たちがそのように言っているのですが、未熟なわたくしでもわかります。彼らは、ルネスが欲しいのです。ただ自分たちの利益のために。

 父はいつものように、彼らの言いなりです。王命により、円卓の騎士団が動くことが決まってしまいました。

 父はルネスを攻めようとしておられます。カインさん、いいえ、我が親愛なる騎士ライヴァン卿。これは汚名ではありません。誰も貴方を責めはいたしません。どうか貴方だけでもお逃げください。わたくしは、それを裏切りとは思いません。

 遠く離れようとも、貴方はわたくしの騎士です。どうか、達者で」


GM:差出人は書かれておりませんね。

マジカルイワシ:神聖帝国と密通。

カイン:知らんが。

GM:お前のPCだぞ。



▼PC列伝 プラチコ・フロルス

https://platycodon.wiki.fc2.com/upload_dir/p/platycodon/295cc117b6fd7698b48fc8d1c4d8e639.png

 鈍い色の髪に、長身。所謂エルフ的な種族、エルダナーンの男性。らんどうのPCであり、社会保障支援機構のギルドマスター。ある依頼の成り行きから、パリス同盟北東部、エルガル山の麓のとある村を統治することになった。

 その後、かつての教え子である神聖ヴァンスター帝国皇帝ゼダンと再会。神聖帝国によるパリス同盟・エルーラン王国方面への侵攻を取りやめさせることに代わり、自身は帝国の辺境伯として、現在の領地を神聖帝国領"鐘の街"フロルスガルトとして治めることとなる。


 なお、舞台となるエリンディル西方の地図はこのようになっている。

https://platycodon.wiki.fc2.com/upload_dir/p/platycodon/a5733d5332043d35ae9f587095597d36.png

 いくつか、公式に無い街が当然のように増えたりしている。


紗綾:密通はともかくヴァンスターと関係があるのは事実なんだよなあ。

GM:ここでの円卓の騎士団って言うのは当然風の時代の円卓ではなく、それに因んで名付けられたエルーラン王国の騎士団ですね。少数精鋭のエリートが円卓、国境防衛の正規軍が赤枝って感じです。

紗綾:で、エベントンさんに容疑が……。

GM:そのエベントンさんは一連の話を聞いて、「……この手紙を持っていたという騎士はどこに?」って。

ロット:「ガルバンさんが付き添って馬車でこちらへ向かっています」

GM:ではちょうど、そのルートくんがガルバンに肩を貸してもらいながらシーンに登場します。「皆さん、聞いてください。私は赤枝の騎士団のルート。円卓の騎士団、その第三隊がこの町へ向かっています。彼らはこのルネスを包囲するつもりです……」

カイン:「なるほど」

紗綾:「なんと傍迷惑な……」

GM:ひどくない?

yktn(野次馬):人の心。

紗綾:いやだってそうでしょ!

マジカルイワシ:(呼ばれた以上力は貸すが…正直ゆっくり休みたい……)

クラゲカマキリ:「なんだと!? なぜそのようなことに……」(動乱になったら我が組織が地域密着しづらくなってしまう)

カイン:「ギルドマスター、紗綾。この手紙に書いてあることは事実なのですか? あ、私が騎士であるのは事実です。そこ以外を」

GM:そこ以外は事実なんだよなあ。

紗綾:プラチコさんから聞いているだろうから……。「神聖帝国と通じている、というより交流を持っているのは事実ですね。ただ反逆の意思を持っているかと言えば当然否定します」

GM:ではここらへんで、大きな声が聞こえてきますね。

紗綾:え?

GM:「シュペンガーの大将はええ大名じゃろおがあ! 幕府のモンは何を考えちょるんじゃあ!! 戦争じゃあ!!」

カイン:「!?」

紗綾:「デイジーさん」

クラゲカマキリ:「ああ……」



▼PC列伝 デイジー(妙光寺大慈)

https://platycodon.wiki.fc2.com/upload_dir/p/platycodon/16dc85fae5dcea0dfb1cb91f670dfac6.png

 美しい白髪に抜群のプロポーション、身体はエルダナーンの美女。

 社会保障支援機構ルネス支部に所属する、ぶっぱのPC。《アーシアン:転生》から《イモータリティ》のエルダナーンになったため、異世界転生から百年以上こちらで過ごしている。転生前は明治時代初期の土佐藩士だった。

 本名は大慈だが、名前を聞かれる度に「でぇじじゃ、でぇじ」と言い続けていたため、デイジーで定着してしまった。

 歴史ある国土を外敵に蹂躙されることに強い敵意を持つゴリゴリの攘夷志士で、転生後は主に妖魔に対して敵意を向けている。なぜか刀と《ホーリーライト》を併用する謎のアコライト。



 このシナリオでは、今回PCとしてシナリオに参加していないルネス支部のメンバーの反応が展開に関わってくるため、この「PC列伝」がたくさん続くことになる。


GM:はい、デイジーさんですね。「戦争じゃああああああ!! 倒幕あるのみじゃあああああ!!」とかなりヒートアップしているようです。

マジカルイワシ:「……」

カイン:「事実になってしまいましたね」ほら、謀反の企てですよこれ。

GM:そうしてデイジーさんが暴れていると、助け船が来るよ。「うん、わかった。デイジーさんは俺が抑えとくから、お前らは連中と話を着けに行ってくれ」と、鎧の青年が割って入る。

カイン:「申し訳ありません。どうかよろしくお願いします」

紗綾:「……感謝します、エリオットさん」



▼PC列伝 エリオット・ミュール

https://platycodon.wiki.fc2.com/upload_dir/p/platycodon/7576395e0b1128131e81be4168eaac9f.png

 金髪碧眼の、ヒューリンの男性。ヒョロい体格に無理して全身金属鎧を着ている。

 同じくぶっぱのPC。惚れた女(グランフェルデン支部のアルスロー)を守れる男になりたい一身で魔術師になり、隣の大陸まで修行に出かけ、無理して全身鎧を着込み、何かできるようになってしまった男。アルスローのたっての希望により、グランフェルデンから最も遠いルネス支部に配属されている。キモいから。

 アルディオン大陸での修業時代、グラスウェルズ王国の軍師ルーカスに弟子入りし、用兵について学んでいる。その知識は今後このエルーランで生かされることになる、かもしれない。



GM:「……騎士団だか何だか知らんが、この人より話が通じないってことは無いだろ。大丈夫、美人エルダナーンの癇癪には慣れてるからさ」と、エリオットはデイジーさんを止めてくれています。

紗綾:ぶっぱさんがぶっぱさんを抑えた。

GM:大変なんだからな。

カイン:「貴方の腕に、ルネスの命運がかかっています」

GM:で、円卓の騎士がルネスを包囲しようとしているらしいです。

紗綾:「——で、どうするかっていうと……どう動きます?」とシュペンガー伯へ

GM:「街に入れるわけにはいくまいな。……門を出て、用向きを聞く。君たちにも同行願いたいが……巻き込んでしまうことになる」

ぺんぎん(野次馬):これ自分喋ってもいいの?

GM:いいですよ。君のPC、ミリーはこの場にいます。

ぺんぎん(以下ミリー):じゃあ。「……また権力者の勝手に振り回されるのか。僕らの土地は。」


▼PC列伝 ミリー

(画像削除)

 ぺんぎんのPC。獣人であるヴァーナで、兎族(アウリラ)。このシナリオでは、NPCとして登場しているが、GMが演じているのではなく、野次馬のぺんぎんが自分で喋らせている。エリオットと親しく、おウサ様と呼ばれている。ロットはオーサさんだと思っている。

 複数のセッションで敗走するハメになるが、その度に持ち前の機動力で逃走を助け、無事にパーティを生還させている。絶対に逃走を成功させる"兎の足"というジンクスだとか、"狡兎"ミリーの二つ名で知られるようになった。

 エルーラン王国西部、スプンタリル村の出身。神聖ヴァンスター帝国がエルーランへ侵攻していた際、村は戦火により焼き払われた。ミリーはその生き残りである。

 仇としてヴァンスターの神官戦士を追っていたが、ヴァンスター帝国の聖騎士ゴウラと対話したことで、事件の真相を知る。スプンタリル村を焼き払ったのは、故郷であるエルーラン王国だった。難所である死人の沼地を越えた先にある村を占領され、敵の拠点となることを恐れてのことだった。

 ミリーは、その復讐心をどこへ向けるのだろうか。


 ミリーは、このキャンペーンで重要な役割を果たすことになるキャラクターである。そのため、列伝が長いのはやむを得ない。


紗綾:「私はそれ自体は構いません」

GM:それっていうのは、エベントンさんに同行することですよね。

紗綾:はい。

GM:あとエベントンさんは、「ここを去るならそれもよかろう。君たちの転送装置を使うといい」って。機構支部同士は転送装置で繋がっていますからね。コストがかかるとかそういうので無暗には使えない設定にしてるけど。

紗綾:「ただ、他の方は——、」とデイジーさんとエリオットの方は見ずに視線を回す。

カイン:「私は、ひとまず事情を見極めさせてください」

紗綾:「なら、カインさんはぜひ同行をお願いします」

マジカルイワシ:「円卓の騎士団とかいうのをぶっ倒してさっさと帰ろう」

紗綾:「数は多いと大変ですが、少ないと困ります。できれば護衛も兼ねて、ロットさん、カマキリさんはついてきていただけると助かるんですが」

マジカルイワシ:いっそデイジーさんを投射すればいいんじゃないの。

紗綾:シナリオが終わりそうなので……。ところで、カマキリさんでいいの? 呼び方。そうだよ、お前なんて名乗ってるんだよ。

クラゲカマキリ:カマキリかな。

GM:カマキリなのかよ。

紗綾:OK。

クラゲカマキリ:クラゲカマキリがフルネーム。

GM:君、真名はドロシィって書いてたじゃんww

紗綾:まじだ……。

GM:だから真名って何なの?

クラゲカマキリ:何だろう?

GM:うん、進めるね。エベントンさんは「では、私は向かう。付いて来てくれる者は、来てくれ」って。

カイン:「ではご一緒します。マリアの……いえ、名前も知らない誰かの厚意を無下にするのは心苦しいですが」

GM:あ、そうそう。あの手紙は差出人が誰だか一応わからないようになっているんですよね。万一敵の手に渡っても言い逃れができるように。

カイン:ハンドアウトに書いてありましたからね。

GM:じゃあ、このへんで「儂に任せい!!」って威勢のいい女の声がですね。

カイン:「エリオットさん、どうか」

GM:はーい。「どうどう。デイジーさんはこっちね、こっち。頼んますよ」

紗綾:「デイジーさんは、街の警護隊などの戦力を一度整理していただけませんか? 万が一があるかもしれないので」デイジーさん、たぶんたまに訓練混ざってるでしょ。たぶん。

GM:そうですね。なにせ現代地球の段階で従軍経験があったから……。って、現代じゃねえわ、近代だわあの人。

マジカルイワシ:(ほどほどにサボっても怒られないよな……)

GM:あ、街の警備の話ならガルバンが「自警団には警戒態勢を伝えてある。侵入者対策に回っている者もいるので、出来る限りになるが」って言います。

紗綾:「ではガルバンさん、忙しいところ追加で申し訳ないですが、デイジーさんと一緒に装備の確認なども含めてもう一度お願いします」

GM:「分かった。君たちも気を付けて」ガルバンは言われたとおりにするよ。

紗綾:たぶんそうするとエリオットは察してデイジーさんフォローに行ってくれるはず。信じてる。

GM:さて、どうでしょうね。では皆さんは、街の外へ出向くことになります。

カイン:はい。


 負傷した騎士ルートを迎え入れ、その話を聞くにはどうやら騒乱の予感。

 ルネス市街の外で待ち受けているものとは?

 物語は本番、ミドルフェイズへ突入する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る