地元に帰った

島尾

老けていること

 とうとう4留が決まり、親に従うしかなくなった。地元で1年休学し、もう1年で四年に上がる。


 昔は、卒業なんて当たり前にできるものだと信じて疑わなかった。1回も留年せずに四年で卒業できる、と。成績は悪いが、何とかストレートで卒業できる、と。


 今でも、当然できて当たり前だと思う。



 親父は老けていた。白髪だらけのくせに「老けてない」と言い張り、元気な声をあげていた。俺がガキのころ、白髪を抜いてあげたことを忘れているのだろう。黒から白を選び、その中の波打った毛を選び、抜いてあげていた。今同じことをしてあげたら、ハゲ山のような汚い頭になりそうだ。


 祖母は、信じられないほど老けていた。声が、明らかに弱っていた。しかし元気ではあるから、やはり信じられない老けように違いない。


 母親はなぜか老けていなかった。親父は「太っているから肌が張っているのだ」と言っていたが、若いという意味からは極めて遠い罵りだと思う。実際の母親は歩き方が前より遅くなっていて、肌も皮がたるみ気味だった。


 食卓での会話で。

 いとこのAちゃんは、仕事して稼いでいるらしい。近く、結婚するという。俺と同い年である。


 今日、弟の顔を拝めなかった。玄関を歩いている姿を数秒見たけれど、それは漬物石のような巨大な後ろ頭で、一種の怪物かとも思える。


 皆、老けていることを知った。そして社会に出て一生懸命働き、お金を稼ぎ、子供にかかるお金を払っている。


 たった一人追放され取り残された、未来の見えない子供に。


 

 老けたなぁ。 老けてるなぁ。


 俺は自然と、祖母にそう言った。


 父親が部屋に戻って来るやいなや、「このフケは多すぎるぞ」と言われ、「今週中に病院行けよ」と言われた。俺は「明日行こうかな」と答えた。高校生くらいから俺はフケが多かったのに。


 老けた姿が懸命に働いて生成した結晶なら、俺の結晶は粉のように順調に砕けている。

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地元に帰った 島尾 @shimaoshimao

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