第6話 決意、決める時
自分の心の中で葛藤しているうちに朝になっていたらしい。
そんなに葛藤したのにも関わらず、俺の決意は決まらない。
決まりそうになると砂のように決意が消えていく。
俺はため息をついてから昨日風呂に入ってないことに気づき風呂に入る準備をする。
準備中に携帯の通知音が鳴る。
確認してみるとなーちゃんからだった。
内容を見てみると昨日、早退したことの理由と今日はちゃんと来るのか?
そんなようなことだった。
昨日の俺だったら一応行くよっというところなのだが残念ながら今の気分的に行く気にはなれない。
なのでシンプルにいかないと送っておく。
うんじゃ、風呂入るか。
着替え用の服を持って風呂に入る。
「ふぅ~~風呂気持ちよかった」
タオルで髪を拭きながら冷蔵庫まで歩く。
冷蔵庫から牛乳を取り出すと一人暮らしの特権であるパックの飲み物をラッパ飲みする。
牛乳の甘さが五臓六腑に染み渡る。
「プハァ!やっぱり風呂上りには牛乳でしょ!!」
牛乳の甘さの余韻に浸っていると家のチャイムが鳴る。
この前頼んだアニメグッズでも来たか?
そんなことを考えながら家の鍵を開けて
「は~いなんでs」
「何サボろうとしてるのよ、弘人」
俺は黙って扉を閉めようとした
「あ、ちょっと何閉めようとしてるのよ!大人しく開けなさい!」
ドアの隙間に足を挟んで扉をこじ開けようとしてくる。
「お、お前なんでここにいるんだよ!!」
「あんたからのメールみて飛んできたのよ、学校サボっちゃダメでしょうが!この!!」
馬鹿力で扉を強引に開けられる。
「この馬鹿力が!!今日は学校行かないって決めたんだよ!」
「誰が馬鹿力よ!!!なんで学校行かないのよ!」
なーちゃんにそう言われて俺は口を閉ざして目線をそらす。
目をそらすとなーちゃんはため息をついて携帯を取り出して耳に携帯を当てる
どこかに電話をかけているらしい。
「あ、もしもし。二年B組の森下です。すみません、今日少し体調が悪いので休みます。・・・・はい、わかりましたそれでは失礼します」
「あ、あのう奈波さんなにしてるのでしょうか」
なーちゃんが行った行動に思わず敬語になって質問してしまう。
「見てわからなかったの?学校を休んだのよ」
「それは見てわかったけど、なぜ休んだのよ」
「そ、それはヒロトガシンパイニナッタカラ」
「うん、何言ってのか聞こえないんだけど」
「う、うるさいわね!とにかく家に入れてよ」
なぜか逆ギレされた、なんでなん?
断ろうと思ったがなーちゃんの圧力が凄まじいので
「はぁ~いいよ。入れよ」
「えぇ、失礼するわ」
なーちゃんはしっかりとお辞儀をして部屋に入る。
「結構片付いてるのね、弘人のくせに」
「俺のくせには余計だ!なんか飲むか?」
「うん、お茶でいいわ」
部屋に入ると早速罵倒されたが文句を返してから冷蔵庫から冷えた緑茶をとりだしてコップに注いでなーちゃんに手渡す。
「ほいよ、緑茶」
「ありがと、というかあんたまたラッパ飲みしてるの?辞めなさいよ、行儀悪いから」
「へいへい、ご叱りありがとう。姑」
「誰が姑よ!!!」
顔を真っ赤にして傍にあった俺の枕を投げつける。
その枕は俺の顔面を直撃した。
「いってぇ~この馬鹿力!」
「誰が馬鹿力よ!そんなに強く投げてないでしょ!」
いや割と強かったよ、女の子が投げるにしてはなかなか強かったよ
鼻を摩りながら
「てか、なんでお前ここに来たんだよ」
「だからあんたがしんぱいだっt」
「それは建前だろ。何の理由できた俺の家に」
そういうとなーちゃんは一口飲み物を飲んでから
「あんた何か悩んでるでしょ」
ものすごくストレートに聞いてきた。
どこぞのプロ野球選手並みのストレートだよ。
「・・・ちょっとアニメの声優さんが結婚するから結婚相手をしばきまわそうとおm」
パチンっと乾いた音が部屋に鳴り響く。
一瞬俺の思考回路が停止したが徐々になーちゃんが俺の頬を叩いたことが分かった
「嘘つかないで」
「この野郎」と言いたいところだったがなーちゃんの目には涙が溜まっている。
その顔を見た瞬間、俺の怒りたい気持ちは風の前の塵のように何処かに消えてしまった。
「なんで溜め込むのよ・・・またあの時みたいに殺人鬼みたいにどこに行くの?」
目からポタポタと涙を流しながら言葉を俺にぶつけてくる。
あの時というのは二年前のことだ。
二年前、俺の親父は死んだ。
理由はシュパーラを逮捕したときのことだった、親父はその場所にいた一般人をかばい射殺された。
犯人はもちろん俺が射殺したが親父のことは救えなかった。
その時、俺は血の支配を完全につぶすことを決意した。
逮捕するなんて生ぬるい、全員ぶち殺してやる。
その憎悪のみがその時の俺を動かしていた。
そこから俺は寝ないで血の支配を殲滅するために動いていた。
学校にも行かずに活動していたのでなーちゃんにはだいぶ負担をかけていた。
そのことが原因で少しギクシャクしてしまった時があったのだ。
「・・・いやもうあんなことはしない。だから泣くなよ」
少し間を開けてからなーちゃんの涙を拭う。
「な、泣いてなんかないわよ!こ、これは汗よ。この部屋熱いから」
「はいはい、わかったから。昭和の人の誤魔化し方やめようね」
俺は笑いながら頭をなでる。
すると驚くようになーちゃんの顔が真っ赤に染まった。
「あ、あたしそ、そろそろ帰るわね!じゃあね!!」
早口でそういうと今まで見たことない速度で俺の家を飛び出していく。
何なんだあいつ?
首を傾げながらもう一度牛乳を口に含む。
やっぱ牛乳は世界一美味い!
あっという間に牛乳を飲み干すとパックに水を入れてすすぐ。
すすぎ終わるとシンクの隅に逆さまに立てておく。
それが終わると俺はテレビを付けて、洗濯などの家事仕事片づけ始める。
「よし、部屋掃除終了。お疲れさまでした!俺!」
部屋の掃除機掛けが終了し、自分自身に労いの言葉をかける。
掃除機を片付けて、時計を見てみると時刻は12:30だった。
そろそろ昼飯にするかと思ったら腹の音がなる。
よくよく考えてみれば朝飯も食べずに家事をしていたので物凄くおなかが減っていた。
なんか作るかと思い冷蔵庫を開けてみるが調味料しか入っていなかった。
「やべぇ、昨日食材買い忘れた。なんか買いにいくか」
外に行くので部屋着を脱いで黒のジャージと紺色のロングTシャツを着て財布が入っている肩掛け鞄を肩にかける。
てか食材買いに行くのはいいけどどこに行こうかな?
この地域で食材を買えるのは地元のスーパーか駅前のショッピングモールの二つしかない。
いまめちゃくちゃ腹減ってるからな~~駅前行くか。
駅までは自転車で15分くらいの場所にある。
「それじゃ行きますか!」
家のドアを開けてしっかりと施錠し駐輪所まで歩いて黒のマウンテンバイクにまたがる。
春のあたたかい日差しを浴びながら駅前まで自転車を走らせる。
「え、何この状況?」
自転車を走らせて15分、目的地にはついたのだが駅前の駐車場にはたくさんの警察車両が止まっている。
警察の人がひっきりなしに無線で指示を飛ばしているし立ち入り禁止テープの前には野次馬がぞろぞろいる。
「何が起こってるんだ?」
首を傾げながら眺めていると携帯の着信音が鳴る。
着信相手はなーちゃんだ。
「もしもs」
「助けて!弘人!」
電話に出た瞬間に切羽詰まった声で助けを求められた。
「とりあえず、落ち着け。どうした?」
「今、どこにいる?」
「駅前のショッピングモールの前だけど」
場所を聞かれたので答えると
「今私、ショッピングモールの中にいるんだけど、変な集団が銃持ってショッピングモールに立てこもってるの!」
「なっ!嘘だろ!」
「ほんとよ!今さっき、捕まりそうになったけど何とか逃げ切って女子トイレにいる、助けて!」
「ひとまずそこに隠れてろ!そいつらの特徴なんかわかるか?」
「えっと、右腕に英語のタトゥーが入ってた!一瞬だったからよくわからなかったけど多分bだっただと思う」
その言葉を聞いた瞬間、俺は言葉を失った。
昨日話していた奴らの残党がこの事件を引き起こしたのだろう。
「ちょっと待ってろ、今から強行突破して助けにいく!」
「う、うん。待ってr」
ガシャン!!何かが壊される音が電話越しに聞こえる
「逃げろ!」
そういった瞬間、電話の切れる音が俺の鼓膜を突き抜ける。
「おい!もしもし!もしもし!クソが!!」
携帯をしまって立ち入り禁止テープの方を見る。
警官が必死に野次馬を止めているのが見えた。
殴り込んでやろうと思ったが警官に止められる未来がみえている。
俺は拳を痛いほど握りながら考えた、どうすれば俺はあいつを救えるのかどうすればあいつを守れるのか。
その時俺は一つの答えにたどり着いた、もうやるしかない、覚悟を決めよう。
理由とか決意とかは後で考える!
今俺はここであいつを助けないといけないんだ!!
俺は携帯を取り出し、姐さんに電話をかける
2コール目で電話に出た。
「どうした、弘人。今こっちは忙しいんだ、用件があるなら手短にな」
「姐さん、いや隊長単刀直入に言う。俺は戦う!もう誰も失わないために俺は特殊犯罪急襲捜査課の鬼龍弘人として戦う!!!」
こうして俺は榊原弘人から2年前犯罪組織に恐れられた隊員鬼龍弘人に戻った。
史上最強隊員の事件簿 雑作家ミナト @zatusakkaminato
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。史上最強隊員の事件簿の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます