第5話 戦う理由
「・・・理由を聞いてもいいかな?なぜ戻りたくないんだい?」
「理由は辞める時にも言った通り、もう戦う理由がないからです。要件はそれだけですか?これだけなら俺は帰ります」
俺は立ち上がって帰ろうとする。
「待ちたまえ」
その一言で俺は立ち止まる。
「要件はそれだけではない、君にとって最悪の事態が判明したんだ」
俺は振り返って首をかしげる。
俺にとって最悪の事態?もしかして俺の推しの女性声優が結婚するとか!?
そんなことは世界が許しても俺が許さん!!!
「弘人、たぶんだが今お前が考えてることは全く違うぞ」
エスパーかよ、姐さん
「
その言葉を聞いた瞬間、頭を銃弾で貫かれたような衝撃を受けた
「そ、そんな俺と父さん、姐さんたちが壊滅させたはず。それにあいつは今監獄にいるんじゃ」
「あぁ、奴は今も監獄にいる。それにあくまでも可能性の話だ」
二年前、多くの人が殺害された事件通称『終末事件』。
この事件を引き起こした黒幕が血の支配。
組織人数は200人を超え、日本各地の主要地域で爆破テロや立てこもりテロなどを引き起こし、社会問題になった。
そしてこいつらを逮捕するために俺と親父、姐さんたちは血の支配を追っていた。
そして多くの犠牲者を出したが首謀者である血の支配のリーダー、
「ではなぜ奴らが復活したと?」
疑問を口に出すと、長官は胸ポケットからとある写真を取り出した。
その写真を見てると男の右腕が写されていた。
それだけなら別に普通なのだが、その右腕には筆記体でbと書いてあるタトゥーが彫られていた。
俺はこのタトゥーに見覚えがあった、忘れるはずがないものだったからだ。
「これは奴らのタトゥー、なんでこれがこのタトゥーが彫られた奴らも今は監獄にいるはずじゃあ」
「あぁ、これは一週間前とある殺人事件の犯人の男の腕なんだ。私も驚いたよ、まさかまだ奴らの残党がいたなんて」
長官も驚いているが俺も驚いている、なんせ俺が辞める前の最後の事件で完全に奴らを撲滅していたと思っていたからだ。
「このタトゥーが出た時点で我々の仕事は大忙し、しかもこの部署には人員が足りない。だから君の手が借りたいんだ、弘人君また一緒にやってくれないか」
長官は頭を下げて俺にお願いしてきた。
「ちょ、長官。頭をあげてください」
姐さんが少し焦って止めに入る。
俺は目をつぶって少し考える。
今の俺にあいつらと戦えるだけの力と覚悟はあるのだろうか?
「・・・長官、少し考える時間を頂けないでしょうか」
俺も頭を下げた
「今の俺に奴らと戦うだけの力と覚悟があるかどうかわかりません。そのことも含めて俺に考える時間をください、お願いします」
「・・・わかった。考えることができたら白峰君に電話してくれ」
「はい、わがままを聞いてくださりありがとうございます」
「いや、いいんだよ。あそこで無理に決めてしまうよりもよかったよ。それに君と久しぶりに喋れてよかったよ」
「はい、俺も長官たちと喋れてよかったです。それでは俺はこれで失礼します」
ぺこりとお辞儀をして部屋を出る。
その後おっちゃんたちにいろいろ絡まれたりしたがノリと勢いで何とか逃げ切り警察庁の外に出た。
ここから俺の記憶はない、いつの間にか自宅についていた。
本来なら、アニメ見ながらカップ麺とポテチを食べていたはずだった。
だが何度も奴らが犯してきた事件のことが頭を横切り俺にまだ覚悟が、いや戦う理由があるのか悩み続けていた。
そして悩んでいたらいつの間にか、朝日が俺を照らしていた。
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