第4話 オーガと呼ばれた男


「・・・それで俺にまだ戦う力が残ってると思いますか?姐さん」


 少し間を開けて答える。

 姐さんはにこりと口角をあげて

「あるに決まってんだろ、まぁ昔よりはスピードは落ちてるけど戦えるだけの力はあるな」


「ならよかったです、それでなんのために俺の力を測ったんですか?」


「おっと、それについてはここでは話せないんだ。というわけで弘人、面貸せ」


 あんたはヤンキーかよ、面貸せってめちゃくちゃ

久しぶり聞いたわ。


「まぁいいですけど、どこに行くんですか?」


「警察庁だ、今から行くぞ」


 と言って来た道を戻っていく。

 俺もそのあとを追う。

 少し歩くと路肩に黒のサイドカーが止まっていた。


「相変わらず、CBR250のカスタム乗ってるんですね」


「あぁ、こいつが私の愛車だからな。ほれ」


 とヘルメットを投げ渡してくる。

 しっかりとキャッチしてヘルメットをかぶる。

 被り終わると結菜がサイドのほうに、俺が姐さんの後ろに乗った。


「ちゃんと乗ったな、じゃあ行くぞ!」


 キーをONにしてエンジンをかけ、勢いよく発進する。

 このとき、思いっきり踏ん張らないと重力の関係で後ろに持ってかれるので注意が必要だ。

 バイクに乗っていると自分が風になっている感覚がするので大好きだ。

 風を楽しみながら、目的地に向かう。






 風を楽しむこと15分、警察庁の地下駐車場に到着した。

 バイクを降りて、ヘルメットを脱ぐ。


「弘人、こっちだ」


 姐さんの後を追いかけエレベーターに乗る。

 エレベーターに乗ること数分、エレベーターが止まった。

 エレベーターが止まったのはB4階。

 

 エレベーターから降りると昔と変わらず段ボールが散乱している。


「相変わらず、汚いなここ」


「うっせ!仕方ねぇだろ!!!私は片付けが苦手なんだよ。まぁついてこい」


 段ボールをかき分けながら姐さんについていく。

 段ボールをかき分けた先には指紋認証付きの頑丈な扉があった。

 姐さんは扉の鍵を解除して中に入る。

 俺もそれに続いて部屋に入る。

 部屋に入るとコーヒーと鉄のにおいが鼻を突き抜ける。

 部屋の中は職員室みたいな感じでデスクとパソコンが並んでいて人が忙しそうに働いている。

 その中の一人、白髪交じりで少しよれっとしたワイシャツを着ている五十代の男が帰ってきた姐さんのほうをみた。


「おぉ、帰ったか。まったくどこにいってたんだ

よ、白峰しらみね


 と近づいてきた。


 そして姐さんと近くにいた俺に気づいたのか


「うん?お前、どっかで見たことがって弘人じゃねぇか!?おっきくなったな!!!」


 とても驚いた顔をして俺の肩を叩く。


「久しぶり、渋谷のおっちゃん」


 この人の名前は渋谷京太郎しぶやきょうたろう

 昔の仕事仲間で仕事の先輩にあたる人で気安くおっちゃんと呼んでいる。

 性格は見ての通り、大阪のおっちゃんだ。


「いや~~ほんとに何年ぶりだ?最後にあったのは二年くらい前だろ」


「そうだね、おっちゃんも元気そうでよかった。相変わらずいい筋肉してるね」


 と自分の二の腕の筋肉を叩きながら言う。


「まだまだ、現役だからな!鍛えまくってるぜ!そういうお前も筋肉は衰えていないな。安心したぜ」


「まぁね、筋トレしてないと寝れなくてさ。ずっとやってるよ」


「弘人!こっちにこい。長官がお呼びだ」


 おっちゃんと話していると姐さんが手招きしてい

る。


「了解、うんじゃまたあとで」


「おうよ」


 姐さんのところに走っていくと


「失礼します、弘人を連れてきました」


 ノックをしてから扉を開ける。

 そこにいたのはきっちりとしたスーツを着ていて身長高めの男性が書類仕事をしていた


「ご苦労、白峰隊長。久しぶりだね、弘人君」


 書類仕事が終わったのか、視線を書類から俺に向けた。

 俺は姿勢を正して敬礼をした。


「お久しぶりです、九重ここのえ長官」


「まぁとにかく座りたまえ、白峰くんも」


「失礼します」


 長官室にある客人用のソファーに腰掛ける

 姐さんは俺の隣に座った。


「何年ぶりかな、弘人君」


「約二年ぶりだと思います」


「もう二年か、生活はどうだね?楽しくやっているかい?」


「はい、楽しくやってますよ。それでなんで俺をまたこの場所に呼んだんですか?昔話に花を咲かせるためによんだんじゃないんですよね」


 堅苦しい話が苦手なので話を切り出した。

 長官は一呼吸おいてから


「弘人君、君にお願いがある」


「お願い?なんですか?」


「君に戻ってきてほしい、元特殊犯罪急襲捜査課の隊員、鬼龍弘人きりゅうひろととして、犯罪組織に恐れられた最強の隊員、鬼人オーガの力を借りたいんだ」


「それはお断りします」


 俺は即答でそう返した。








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