出発
「コンランスさんお帰りなさい。なんだか今日は顔が暗いですね」
いつものようにリアが出迎える。その表情はいつも通りの明るさだった。
リアに言われるということは、オレの表情はとてもひどいものなのだろう。
「実は、お前を使いたいと魔王から話があった」
「使う…とは、どういうことですか?」
リアに父とのやりとりを話す。リアの表情は初めこそ驚いていたものの、真剣な表情で聞いていた。
「では、私を人質として連れて行きたいと」
「そういうことなのだが…」
「別に構いません」
秒で返事が返ってきた。人質として使われるということは死ぬかもしれないのに抵抗はないのか。
「万が一、死ぬことがあるかもしれないぞ」
「前にも言ったじゃないですか。その覚悟も決めています。それに、私を大切にしてくれるあなたも一緒に来てくれるのなら、死ぬことはないはずです」
「人質にするのは魔王だ。リアが殺されそうになった時にオレの力では止められない」
「大丈夫です、きっとなんとかなりますよ。神に祈っておきます」
リアが手を組んで祈り始める。
もしリアが殺されそうになったら相手が誰であろうと全力で止める。それがたとえ父であったとしても。
オレは密かな決意を抱いた。
「では行きましょうか」
オレはリアと並んで部屋を出ていった。
宮廷に入ると、魔王が尻尾を振り回している。焦ると尻尾を動かしたくなるのはドラゴンの癖だ。
「やっときたか。早くこちらに渡せ」
リアと向き合い、互いに軽く頷く。リアはオレの元を離れ魔王の元へ向かった。
魔王は尻尾でリアを捕らえる。尻尾の締める力がきついようで、時々リアが苦悶の表情を見せる。
「もう少し丁寧に扱ってくれませんか」
「そうだな…骨が粉砕して死なれては困るからな」
オレの忠告を受け入れ、ドラゴンの尻尾の締め具合が少しし緩くなった。これで少しはリアが楽になるだろう。
魔王は翼を広げ、玉座の背後にある宮廷の大きな窓に向かって飛び立つ構えを取る。
「コンランス、お前の準備ができているのなら今すぐ行くぞ」
「いつでも行けます」
「では出発する」
ドラゴンは一足先に飛びたった。
「フリーゲン・シュネル!」
飛行魔法を唱え、オレもドラゴンの背を追いかける。
オレたちは窓から外へ出て、戦場へと向かった。
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