有効活用

自室に戻り、あれこれと考えてみるものの、特にこれという案はなかなか浮かんでこなかった。


 そんなことを考え続けていて、次にリアに会う時にはもう5日も過ぎていた。


 リアは前と変わらず、牢の奥で座っていた。ここ数日で少し痩せた気がする。


「お久しぶりですね」


 オレをみると、リアは微笑みながらそういった。


「なぜそんな嬉しそうにする。お前は今からどうなるのかわからないのだぞ」


「それはわかっています。でも、誰かと話せるのが嬉しくて。誰にも言葉が通じないものですから」


 よくよく考えるとオレ以外の魔物は人間の言葉を理解できない。だから見回りの魔物とも話ができず、ここ5日の間リアは誰とも話せなかった。それが寂しかったのだろう。


「ここにきたということは、私をどうするか決めたということですよね。私は今は虜囚の身。どんな決定でも受け入れます」


 リアは手を組み神に祈っているようだった。人間の神に対する信仰は魔物のオレには理解できない。だが目の前で真摯に祈るリアを見ていると、大切なものだということはわかる。


「オレはどうしたいのかは決まった。しかしそれはお前が嫌と言うのならできないことだ。それでお前に相談がある」


「相談とは、捕虜に対する言い方ではないように思うのですが。それはともかく、言ってください」


「それだが…リア、お前をオレの従者ということにしたいのだが、どうだろうか?」


 記念すべき初めての獲物であるのだから、牢の中で腐らせてしまうよりもオレの近くに置いておきたかった。それに、いつまでも監禁しておくよりもオレに貢献してもらった方が彼女の使い方としては合理的だ。

 この案は父とかなり揉めた。もし白の勇者が仕えている間に逃亡することになっては、そのことを許した魔王として恥をかくことになる。そこで、オレは彼女に首輪をつけ、位置探索と死の呪いを付与するで逃亡できないようにするということで父を納得させた。



 リアはしばらく考えていた様子だが、急に顔が赤くなった。


「従者ということは、あなたに喜んでもらうためにそういうこともしないといけないのでしょうか…?」


 リアは体を隠すように腕を動かす。


「断じてそんなことはない。そもそも人間とダークエルフは別の種族だ。人間のお前にそんなことは要求しない」


「それなら安心です。それで、私はいつここから出て働くことになりますか?」


「明日には出られる手配が整うはずだ。だが、人界に戻れるとは期待するなよ」


「わかっています」


 そういうとオレは一瞥し、牢の前を去った。

 明日からリアはオレの従者だ。そう思うと、なんとなく嬉しかった。

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