第五話 実力テスト結果

 日にちが経つにつれて次第に彩香狙いと思われる男子が続出し始めた。

 当然といえば当然なのだがこれは充分に予想できたことだし、「前回」でも同じことだった。


(けど、それを止めることは事実上不可能。下手に何かやろうとする方が返り討ちに遭う可能性がある)


 透は「前回」の教訓を心に留めていた。彩香ほどの美人なら不可抗力なのだ。それよりも透は圭とも仲良くなるように親交を深めていった。

 初めての委員会招集があったので、透は彼女と一緒に委員会会議の行う教室に向かっていた。


「私、バイトしたくって。親を説得して、週一、二回だけならバイトしていいって言ってくれたんだ」

「そうなのか。俺もバイトしてみようかな」


 圭は彩香とはまた違い、ハキハキとして話しやすいタイプだった。


「草薙くん、っていうかこの学校ってほとんどが中学から内部進学してるんでしょ? 中学受験って大変じゃなかった?」

「まあ、小学生のころに勉強漬け、っていうのはなかなかハードだったよ」

「やっぱそうだよね」

「俺の場合なんとか受かったけど、燃え尽き症候群って言うのかな? 中学入って遊んでばかりだったから親とか先生にたくさん怒られた」


 透は入学して間もない中一のころに色々怒られたエピソードを話した。


「あはは、でも勉強だけの生活よりかずっといいじゃん」

「……ま、そうなんだけどな。そういえば部活はどうよ?」

「うん、私はバドミントン初めてなんだけど結構楽しいよ」


 圭は打つ動作をしながら言った。結局彩香と圭は「前回」と同じようにバドミントン部に入部した。

 大きな賭けではあったが、あの転落事故イベントのためには必要なことだった。


「そっちは? マネージャーさんとか入った?」

「うん、まあ一人だけどね。それでもありがたいよ。部員もそこそこ入ったし」


 透は圭と話しながら、順調に事が進んでいることに満足していた。



 ◇ ◇ ◇



 数日後、実力テストの結果が返ってきた。


(クッ……!)


 透は思わず笑みがこぼれてしまった。


(ククク……本当に、やっちまった)


 実力テストの結果が返ってきた。気になる理科の結果は九十八点で、科目別では校内一位、全国でも十位という驚異的順位だった。ちなみに平均点は五十五点だった。


(ま、科目全体では並なんだけどな)


 そして校内トップ十位の紙が貼り出されるとたちまち彩香は注目された。葵がいなくなり、順位は一つ上がっていた。

 彩香は大いに注目の的となったが、一方で、透が科目別の理科で校内順位二位に大差をつけて九十八点をとったことでも注目を浴びた。


「お前、すげえじゃねえか!」

「確かに理科が得意だって聞いていたけど、すごい」

「草薙くん頭良かったんだね」


 健一だけでなく、他の友達からも言われていた――なんて気分がいいんだ。最高!


「すごいわ。あんな点数誰もとれない。本当に理科が得意なのね」


 席に戻ると彩香が尊敬するように言った。ちなみに理科の校内二位は彩香だった。


「俺は理科だけなんだよ。ただ、あんなにいいとは思わなかった。それより、葛城院さんの方がすごいじゃん。学年総合三位って」

「私からすればどっちもすごすぎだよー」


 圭はしきりに興奮して言った。


「いや、俺は理科以外並以下だから」


 謙遜しつつも賛美される心地よさはたまらなかった。

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