第四章 約束された成就

第一話 復帰

 合宿から数日が経ち、透はようやく松葉杖がなくても歩けるようになっていた。まだ走ることはストップされているとはいえ、以前より格段にマシになった。


(けど、これで葛城院とのラブラブ登校にピリオドを打つことになるな……)


 一緒に学校に行けなくなるのは残念だったが、いつまでも世話になっているのも気が引ける。なので、松葉杖を卒業したことは彩香、健一、圭たちには伝えておいた。もちろんお礼の言葉も添えて。

 するとすぐに彩香から返事が来て、『良かった! まだリハビリが必要でしょうから困ったことがあったら何でも言ってね』と書いてあった。


(本当にいい子だなあ……)


 透はしみじみと画面を見つめながら思った。

 翌日からは松葉杖なしでの登校となり、普段通りに健一と元の時間で学校へ向かうことになった。

 すると圭が、透の松葉杖卒業祝いに学校の帰りにみんなで遊びに行こうと提案してくれた。


(ナイス提案だ、御坂! 本当にお前は色々きっかけを作ってくれるよな)


 かくして彩香と健一も加えて、部活のない日に四人で数駅離れたところに遊びに行くことにした。


「よーし、今日はカラオケ大会だ」


 圭がはりきって言うと、透はニヤリとして「カラオケか……俺の大得意ジャンルじゃねえか」と呟いた。


「お? じゃあ勝負だね」


 駅を出て近くのカラオケ店へ向かうと、ちょうど同じ制服を着た女子生徒たちが店の前にいた。どうやら向こうも気が付いたようだった。


「へえ、アンタらも来てたんだ」


 そこにいたのは天音たちの女子グループだった。


「天音ちゃんたちもこれからカラオケ?」

「まあね」


 そう言うと透の方に近付いて、「順調に進展してんじゃん」と耳元で囁くように言った。

 思わず透は天音を見る。悪戯っぽく自分を見る天音は、この間合宿で少し話した時からまた進化して今度はアイシャドウまで入っており、香水っぽい淡い香りがした。


(コイツ――何のつもりだ?)


「いいなあ、リア充様たちは」と言ってアハハと笑いながら天音はみんなと店の中に入っていった。


「どう見てもあいつらの方がリア充だろうが――とりあえず俺らも入ろうぜ」


 透はみんなを促した。



 ◇ ◇ ◇



 カラオケはとても盛り上がって楽しかった。


「さっき、雲英さんに何か言われたの?」


 帰り、駅に向かって歩いている途中で彩香がそっと透に訊いた。


「え? いや、別に大したことじゃないよ」

「そう」


 何だか誤解を持たれそうだったので慌てて弁明するように、


「いや、雲英とは合宿の時ちょっと鉢合わせになったことがあって、その時にちょっと」


 何の回答にもなっていなかったが都合よく健一たちも会話に加わってきた。


「雲英って俺も話したことないな。なんていうか、ギャル様って感じだし」

「私は何度かあるよ。結構話しやすい子だった。まあ、確かにギャルだけど。この学校ってあまりいないよね。ああいう系のヒト」


 圭が思い出すように言った。


「俺もちょっとタイプじゃないけどな」


 透は彩香にアピールするように言った。

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