4話
暖かい日差しが差し込んできて私は思わず目を覚ました。アンナがカーテンを開いていた。
「おはようございます。パトリシアお嬢様」
私が軽く伸びをするとアンナはヘアブラシを持って私を手招きした。
パトリシアの髪は癖が強いためブラシをするのも一苦労だろう。私はドレッサーの前の椅子に座る。
「可愛くしてね」
私は無邪気な笑顔で言うと、アンナは優しい手付きで髪を梳かしながら
「お嬢様はもともと可愛らしいですよ」
何て言った。私もそう思うけど、パトリシアのことを可愛いというのはアンナと父親であるアルバートぐらいだと思う。今はアリシアを可愛いって言う人しかいないから。
髪を梳かし終わるとアンナはドレスを二種類持ってきた。ピンクを基調としたリボンやレースがたくさんのドレス、黄色を基調とした控えめなレースのふわふわのバルーン型ドレス
「私、黄色のドレスにする」
私は黄色のドレスを指差した。
「お嬢様がピンク以外を選ぶなんて珍しいですね」
一応、中身が成人の女だから流石にフリフリのものはキツイ。
「今日はどちらに行かれますか?」
アンナは私を着替えさせながら聞いてきた。
「今日はね、庭園に行くの」
「今日は教えてくださるのですね。とても天気が良いので庭園に行くにはちょうどいいですよ、お嬢様の大好きなお菓子を持っていきましょうね」
私は元気に返事をするとアンナは嬉しそうにしていた。
そりゃそうだ、つい最近までわがまま放題のじゃじゃ馬娘が聞き分けのいい可愛い女の子になったんだから
朝食を終え、アンナと庭園に向かうとたくさんの花が咲いていた。
私はあることを思い出した。小説だとアンナとアリシアが初めてあったのは庭園で、パトリシアはアリシアがパトリシアのお気に入りの花を触っていたのを見て、それからアリシアに対するいじめが始まったのだ。
私はアリシアが触った花のところへ向かった。その花はルピナスという育てるのが大変な花だ。
「お嬢様が頑張ったので綺麗なお花が咲きましたね」
当たり前だ、この花はパトリシアが亡き母親エリザベートを思い育てた花だからだ。
「私…ね、このお花持ってアリシアに謝りに行くの」
アンナは驚いていた。
「ですが、このお花はお嬢様がエリザベート様を思って育てたお花ではありませんか」
私が勝手にそんなことをしていいのかは分からないが、私が悪女にならないようにするには、アリシアからの好感度をあげないと
「お母様は、もうお空に逝ったからこのお花はあげることはできないけど、あのときアリシアがこの花を見てきっと綺麗だと思ってくれたと思うの、だからね、酷いことを言ったお詫びとこれから仲良くしてくださいって言うために」
私はそっと花に触れながら言った。
アンナは泣きながら
「お嬢様がそんなことをお考えになっていただなんて」
とか言っていた。
私はそっとハサミで茎を切った、十本あった花を四本を切り、それ以外にも庭園にたくさん咲いていたバラなども切った。
自室に戻るとアンナに用意して貰ったリボンとラッピングペーパーで花束を作った。花束は四つ
もちろん一つは
「これは、大好きなアンナにあげる」
私はオレンジ色のリボンの花束をアンナに渡した。アンナは口元に手をやりながら涙目になった。
「お嬢様、私のこと、大好きって、ついこの前は大嫌いって言っていたのに」
何て言い出すから、私は申し訳なくなった。
「あのときは大嫌いなんて言ってごめんね、ほんとはアンナのこと大大大好きだよ」
私がアンナに抱きつくとアンナはそっと抱き締め返してくれた。
小刻みに震えてるのが分かる。泣いているのだろう。
「アリシアは喜んでくれるかな?」
私はドレスの裾をギュッと握る。
「こんなに素敵な花束を喜ばない人なんていませんよ」
私はさっきよりも強く、アンナにギュっと抱きついた。
私はアリシアに花束を渡すのは、みんなが集まるお昼ご飯のときに決めた。
食事が終わり、私はアンナに目で合図を出した。アンナは頷くと私が作った花束を持ってきてくれた。
「お部屋に戻る前に渡したいものがあるの」
私は席を立つとアンナのところへ走った。みんなはきょとんとした顔をしている。アンナから花束を受け取り一番にアリシアのところへ行く。アリシアはビクビクしている、私はエメラルド色のリボンの花束をアリシアに差し出した。
「このお花、アリシアにあげる。」
私がそう言うとアリシアは大きな目をさらに大きくした。
「あのときはごめんなさい、私ね、このお花頑張って育ててたの、それでねやっと咲いたお花でね、そのお花をいたずらされるって勘違いしちゃったの。アリシアはそんな子じゃないのにね、だからねアリシアにこの素敵なお花あげる」
私はどうにかして理由を作ろうとしていたら本当に子供のような話し方になってしまった。
アリシアは私から花束をそっと受け取ると上目遣いで私を見た
「素敵なお花でしょ?あのね、もう酷いこと言ったりしないから私と仲良ししてほしいの」
私は手を差し出した、するとアリシアは私の手をそっと握り
「私も勝手にお花を触ろうとしてごめんなさい、素敵なお花、ありがとうございます」
と満面な笑みで言った。私はそれが嬉しくて嬉しくてついつい握った手をブンブンしてしまった。
「嬉しい、私はアリシアのお姉さんだからね」
私の言葉に目を輝かせたアリシアは小さな声で「お姉さん」って言っていた。小説だとパトリシア様って読んでいたんだっけ。
私達のやり取りを見ていた使用人達は微笑んでいた。そして、アリシアと同じように目を輝かせていたのは両親だった。
「あぁ、パトリシア、お姉さんになったんだね」
「良かったわね、アリシア」
何て言っている。
私はそのあと二人にも花束を渡した、頭を撫でられたり、抱き締められたりと悪い気はしなかった。
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