3話
次に目を覚ましたら、もしかしたら病院のベッドだったりして、なんて淡い期待をよそに目蓋を開くとアンナと男性と女性がいた。夢ではなかったことに何とも言えない気持ちになっている私に男性が大きな手を私に近づけて、頭を撫でてきた。
「パティ、怪我の具合はどうだ?可愛い顔に傷が残ったら大変だからね」
彼は多分パトリシアの実父アルバートだ、パトリシアのことを溺愛しているため、パトリシアはわがままに育つ。まあパトリシアが悪女になった原因と言えば原因だろう。因みにパトリシアのことを愛称で呼ぶのは彼しかいない。
「パトリシア?これから御夕食だけど食欲はある?こちらに運んで貰うようにすることもできるわよ」
彼女はこの流れから察するに義母のベアトリスだと思う。アルバートがパトリシアの実母エリザベートが他界した後に再婚をした相手だ。お互いに子供がいることを承知の上で結婚をしたらしい。ベアトリスの子こそがアリシアである。
小説だとあまり両親は出てきてなかったが二人とも悪い人ではない。
「御夕食はみんなと食べたいから運んで貰わなくても平気、です」
私がそう言うとベアトリスは優しく微笑んだ。
「良かったわ、やっと私とお話しをしてくれた。嬉しいわ」
パトリシアはベアトリスのことを気に入らなくてろくに口を利いてなかったんだっけ、
「じゃあ私達は先に行くからゆっくりおいで」
父と義母が部屋から出ていくのを見送ったあとベッドから降りた。
今のパトリシアの年齢は推定八歳、父が再婚をして間もない段階だ。それならアリシアをまだいじめていないはず、
私はアンナに着替えを手伝って貰いダイニングに行くとすでに父と義母そしてアリシアは席に着いていた。
私は空いている席に着いた。向かいには義母、斜め前にアリシアという席だ。私が席に着いて間もなくしたら、食事の用意が整った。愛実だったときには食べれなかった豪華なディナーに顔が綻んでいると三人の視線が私に集まった。子供でも侯爵家の娘が行儀良く食べてないのは流石にまずいのか、私が食べる手を止めると父が笑った。
「そんなに美味しいのか、また作って貰うように頼んでおこう」
私は少し恥ずかしくなったが、子供である今なら何をしても可愛いと言われるだろうという自信から、小説の中のパトリシアが絶対に言わないようなことを始める。
「はい、とっても美味しいです。頬を落っこちちゃいそうです。」
なんて頬を両手でおさえながら満面な笑みで言うと、周りの大人は一気に和やかなムードになった。
そんな中アリシアだけが緊張しているのか落ち着きがない様子だった。もしかしたら私がパトリシアに転生する前にアリシアに何かしてしまったのかもしれない。そんなことを考えているうちに食事は終わってしまった。
小説の設定の通りアリシアはプラチナブロンドのストレートの髪に、エメラルドの瞳をしている。パトリシアに負けず劣らずの美少女だった。パトリシアは可愛さに嫉妬していたのだと私は勝手にそう思った。
入浴後ベッドに入り寝る支度をするも、昼間にたくさん眠ったせいで全然眠たくない。
「アンナ、眠れないよ」
あまりにも甘えるような声が出てしまい自分で驚いているとアンナも驚いた顔をしていた。
「昼間にお嬢様が頑張って取った本をお読みして差し上げましょう」
と優しい声色で言った。パトリシアが取ろうとしていた本はタイトルのない本だった。その本はわがままなお姫さまが周りから愛想を着かされて独りになってしまうというストーリーだ。
なぜその本をパトリシアが選んだのかは分からないが、もしかしたら自分のわがままっぷりを自覚しているのでは?何て思っている間に眠りについたみたいだ。
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