Arthur13 事情聴取
レインとカリーヌは、二人の騎士にスタッフルームに連れてこられた。コーヒーのシミがある白のテーブルとパイプ椅子。右側にはロッカー室や給湯器。どこの職場にもある光景だ。
「レイン様、カリーヌ様。あちらが、第一発見者です」
赤髪の騎士が微笑みながら、その人物を指した。
パイプ椅子に座っている黒色のエプロンで茶髪の女性が、向かい合って、騎士と話している。近くには、スタッフと思われる三人が立っている。
赤髪の騎士が、事情聴取をしている騎士の肩を叩く。
「おい、お前、変われ。この方々に実践の場を与えてくれ」
「あぁ? どうしてだよ? 誰だ? こいつら」
「馬鹿者! 四大騎士家のアルフォード家とマルース家のご子息とご令嬢。レイン様とカリーヌ様だぞ」
それを聞いた彼は、驚く反応もせずに、左の口角を上げた。
「へぇー、本物が来たか。やっぱ、アーサーの血を継ぐ者は、事件の捜査に遊びで来れるのか。羨ましいよ」
「おぉぉい! 無礼千万だぞ! アーサー様がいなければ、我々は、存在していないぞ!」
赤髪の騎士が喉から出血するほど、目を三角にした。
「関係ない。血を受け継いでいようが、いまいが、どうでもいい。俺は、経験も苦しみも知らない連中が偉そうにするのが大嫌いだ。特に……」
と、事情聴取をしていた彼は立ち上がり、レインとカリーヌの顔を至近距離で見た。レインとカリーヌは、彼の威圧で、思わず、目を逸らす。
「金と権力で威張る奴がな。まぁ、ごゆっくりどうぞ」
事情聴取をしていた騎士は、鼻で笑うと、外に出た。
赤髪の騎士がレインとカリーヌに謝罪する。
「申し訳ございません。あの者には、厳しく言っておきますので」
すると、茶髪の女性が赤髪の騎士に尋ねる。
「あ、あの、すみません。四大騎士家の方のなのですか?」
「そうだ。すまんが、経験を積ませてくれないか」
「で、でも、学生だと聞いていますよ。いくらなんでも、場違いというか」
「二人の騎士が、強引に僕とカリーヌを連れてきましてね。本当にすみません」
「私からも謝ります。ごめんなさい」
レインとカリーヌは、深々と謝罪した。茶髪の女性と他の店員と思われる人は、ぎこちない愛想笑いをした。
「まぁ、せっかくだし、レインさんとカリーヌさんに勉強させてあげましょうか」
「話が分かって助かる。さぁ、さぁ、どうぞ」
レインとカリーヌは、赤髪の騎士に言われるがままに、パイプ椅子に座った。
レインが口を開く。
「では、先ほどの騎士に言っていたと思いますが、死体を見つけた経緯を教えてくれませんか?」
「はい、分かりました」
茶髪の女性は、二人に発見した時を話した。朝八時半、裏口の扉を開けるため、裏路地を進むと、血生臭いさが鼻に入った。いたずらで生ごみが捨てられているのかと思い、奥へ進むと、男性の死体を発見。周りに、不審な人物や物は見当たらなかったらしい。
「なるほど、で、騎士庁に通報したのですね」
「はい、そうです。まさか、死体が見ることになるとは、藪から棒です」
次にカリーヌが、彼女に質問した。
「では、お姉さん。事件の前日から一週間前に不審な人物や変な出来事がありませんでしたか?」
「いや、特には。……ただ、二日前にオーラのある人が来店したのは、覚えていますね」
「どういう方でしたか? 僕と同じ性別ですか?」
「えぇ、背が高く、栗色の髪をした若い男性でしたね。レインさんと互角、いや、それ以上の美貌でしたかね」
すると、カリーヌは、彼女の言葉が気に入らないのか、両手でテーブルを激しく叩いた。
「なんですって! 私のレインよりも上なんてありえないわ!」
「か、カリーヌ」
「レインは、顔立ちは、王子様みたいで完璧。肉体は、世の女性が魅了されるほどの引き締まって、シックスパックの細マッチョ体型なのよ! それにね、内面も完璧! 人を思いやれるし、誰にでも優しく、謙虚。で、栗色の髪をした若い男性が私のレインより上!? ふざけるのもいい加減にして!」
「べ、別に、私はレインさんをバカにしたつもりなくて――」
「カリーヌ様、落ち着いてください! 考えすぎです!」
息を荒くながら、怒髪冠を衝くカリーヌに、赤髪の騎士が宥めた。彼女は、一呼吸をすると、茶髪の女性を睨みつきながら、座った。
「すみません。醜いところをお見せして。カリーヌ、謝って」
カリーヌは、レインに注意されるが、「ふん!」と言って、顔を壁側に向けた。
「では、僕からも質問しますね。栗色の髪をした若い男性が来店されたとのことですが、彼について、まだ、ありませんか?」
「レイン様、どうして、その人物についてを聞くのですか?」
「新聞に載っている殺人事件や強盗事件の記事で見るけど、起こった前日以前、事件に関係していなさそうな、印象が強い人物が関係しているというケースが多いのです」
「つまり、事件と関係があると?」
「えぇ、あくまで可能性ですが」
「そうですね……あ、そういや」
茶髪の女性が、両手を叩いた。
「彼を接客していた時に、妙なことを言っていましたね。お会計をしていると時に、『近いうちに、面白い思い出が見られる』と」
「どういう意味だ? すみません、騎士さん。近日中に大きなイベントがありますか?」
「いや、例の指名手配の件で、全てのイベントは中止になっています。別に、思い出になるようなことは」
「そうですか。では、これにて失礼します。ご迷惑をかけて申し訳ございませんでした」
レインは、立ち上がり、店員である茶髪の女性に頭を下げた。
「えぇ、お、おお、お帰りになられるのですか!? まだ、じ、時間がありますよ!?」
赤髪の騎士が、早口になりながら、レインを止める。
「はい。これ以上いたら、僕とカリーヌが、貴方達の迷惑になります。第一、僕達は学生です。騎士庁の捜査に首を突っ込む事態、おかしいです」
「では、栗色の髪の男を探しますね」
「それは、上層部の人に報告、相談してください。僕らは関係ありません。行くよ、カリーヌ」
レインは、茶髪の女性を般若のように睨みつけるカリーヌを連れて、外へと出た。
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