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Arthur12 一人目の犠牲者
午前六時、窓から命を吹き込むような朝日が、レインとカリーヌの顔に当たる。
「うーん、朝か」
レインは、非の打ち所がない美麗かつ透き通った自分の体をさらけ出しながら、起きた。彼女の肩を揺すり、目を覚まさせた後、シャワーを浴び、身支度を整える。
午前七時、二人は、朝食を済ませ、制服を着る。バックを持って、カリーヌと部屋を出ようとすると、玄関の扉から、ノック音が聞こえる。
レインが扉を開ける。
「よぉ、レイン」
そこに立っていたのは、隣の部屋に住む男子生徒だ。
「どうした? 珍しいな。まさか、お金を借りたいのか?」
歯を見せ、笑いながらジョークを放つレイン。
「あぁ、そうだ。と、言い返しをしたいが。そんなんじゃないんだ。今日についてだよ」
「ん? なにかあったのかしら?」
愛する人との登校が邪魔されてなのか、カリーヌが少し、眉を内側に寄せた。
「寮の管理人に学園の先生から連絡があってな。三日間、休校になった」
「なんだって?」
「どうしてよ?」
「ほら、レイン。お前が、ベテランの騎士の目を刺そうとした、下の奴を止めた件だよ。正確には、可哀そうなの集団が、襲ってきただけど。まぁ、それがきっかけで、騎士庁と学園長が話し合いをしたらしい」
「で、休校の結論に至ったと」
「まぁ、授業が予定よりも先に進んでいたからな。別に、大丈夫だろう」
「そうだね。あと」
レインは、目を細めながら、続けて言う。
「中流以下の彼らを下の奴とか可哀そうなと言うな。人々を魔術や剣術などで人々を護る騎士を目指している。皆平等。金や権力を持っているからって、馬鹿にしていいものじゃない」
「レイン、なにを訳の――」
反論をする男子生徒にレインは、血管が浮き出るぐらい目を吊り上げた。男子生徒は、背筋が凍るような彼の殺気に怯えたのか、二歩、後ずさりした。
「わわわわ、悪かったって! じゃ、俺は、部屋に戻るわ! そ、そそれと、言い忘れていたけど、寮の付近エリア以外は立ち入り禁止になっているからな!」
そう言って、男子生徒は、猫に見つかったネズミのように、逃げていった。
彼の様子を確認したレインは、顔を地面に向けた。両手に腰を添えて、ため息を吐いた。
「やはり、差別意識を持つ人は、そうそう変わらないか」
「レイン。人間というのは、ロボットみたいに、数秒で変わらないわ。出来たら、苦労はしないわ」
「とりあえず、制服を脱ぐか」
レインは、玄関の扉を閉め、カリーヌとリビングに戻った。レインは、黒のチノパンツに青の半袖シャツ。カリーヌは、黒のジーンズに巨乳を強調させる赤のへそだしの半袖シャツに着替えた。私服姿になった二人は、生活用品を買う為、近くにドラックストアへ向かった。
二人は、薫風に包み込まれるように当てられながら、目的地へ歩いている。
「えーと、買わなければならない商品は、なんだったかしら?」
「シャンプーとリンスの詰め替えと洗顔フォーム、ティッシュペーパーとトイレットペーパー、食器洗い用とトイレ掃除用とお風呂掃除の洗剤だな」
「そうだったわね。あと、ジェル五本ね」
カリーヌの言葉に怪訝な顔つきになるレイン。彼女は、レインの表情を見て、面白いのか、クスリを笑った。彼の耳元で、男を魅了していくサキュバスのように囁く。
「私の自慢の胸で、おもてなしをするに決まっているじゃない」
レインは、自分の耳に入った瞬間、顔を血よりも赤く染まった。
「おい、やばいぞ。あれ」
レインとカリーヌの近くに男性の声が聞こえた。二人が右の方向を振り向くと、中年男性の二人が、何かを見ながら、会話をしている。
「あぁ、物騒になってきたな」
「あの、すみません。どうしたのでしたか?」
レインが、左にいた中年男性に話しかけた。
「あぁ、雑貨屋の裏路地で首を裂かれて死んでいる男性の死体だよ」
「殺しですか。
「あぁ、早番の店員が通報したらしい」
レインは、殺人現場に小走りで向かった。
「ちょ、ちょっと、レイン!?」
カリーヌは、少し慌てて追いかけた。
「こら! 見世物じゃないぞ! 離れて!」
レインとカリーヌが雑貨店の裏路地に辿り着くと、
レインとカリーヌは、市民の波を掻い潜り、出来るだけ、前に行く。
「こ、これは!」
レインの目には、自動販売機に倒れた、男性の死体があった。首の動脈を深く斬られており、白目を向いていた。青のジャージの一部は血によって赤黒く染まっていた。男性の両目からは、まだまだ生きたいのに、死ぬことになった無念さを語るように、涙が流れた跡らしきが残っていた。
「れ、レイン‥‥‥」
「あぁ、見れば分かるさ。カリーヌ」
レインが、チラッとカリーヌを見ると、彼女は、時間が止まったかのように、目を大きく開け、口を両手で覆っていた。
すると、一人の赤髪の
「あ、あの、レイン・アルフォード様とカリーヌ・マルース様ですか?」
「えぇ、そうですが」
「なんすか? 先輩。こいつら、頭を下げるほどですか」
近くにいたやる気のない
彼は、顔を真っ赤にして、やる気のない彼の頭を空気が振動させるぐらい手のひらで叩いた。
「馬鹿野郎! この方々は、アーサーの血を受け継いでいらっしゃる四大騎士家のアルフォード家のご子息とマルース家のご令嬢だぞ!」
それを聞いたやる気のない騎士は、一秒足らずで顔を真っ青にする。
「申し訳ありませんでした! 今の無礼な態度をお許しを!」
音速の如く、土下座する彼。住民は、困惑をした。もちろん、レインとカリーヌを同じ反応だ。
「ちょっと、待ってください。恥ずかしいですよ。僕とカリーヌは、ひよっこ程度しかない学生です。やめてください!」
「そ、そうよ。特別扱いしないでよ! 周りから――」
「え、あの二人がレイン・シルフォードとカリーヌ・マルス?」
「そうみたいね」
後ろにいたマダム二人が、こそこそ話をしているのが聞こえた。こそこそ話は、周りの住民に伝播していく。
「おぉ、アイドルよりもかっこいいな。うちの娘をお嫁にしてほしいな」
「彼女がカリーヌ様! グラビアアイドルよりもスタイル良いし、他のお金持ちの息子や娘よりも気品さが、すぐ伝わるな」
二人に、称賛の視線と言葉を浴びせる住民。レインは、さらにパニックになる。
「ほ、ほほほほ本当に、止めてください! 僕らは、たたたたたた、ただの学生に過ぎませんから!」
「れ、レイン! 落ち着いて! ささっと離れましょう! 目立つのは良くないわ」
二人は、事件現場から離れようとするが、先ほどの二人の
「さぁ、レイン様! 事件の捜査に、ご参加ください」
「いや、だから! 僕とカリーヌは、学生です! 邪魔になってしまいます!」
「逆です! レイン様。お二人がご成長なさる場でございます。さぁ、行きましょう!」
「え、どういうこと?」
「さぁ、カリーヌ様も」
「ちょっと、離しなさいよ!」
レインは、助けてと、住民にアイコンタクトをする。が、心から喜んでいるのか、お釈迦様のような顔つきで見ていた。
「た、助けてくれぇぇ!」
「なんで、こうなるのぉぉぉ!」
レインとカリーヌは、宇宙まで聞こえるような大声を出しながら、
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