Arthur10 成長とは
財閥寮に戻ったレインとカリーヌは、ジュードとエリーと別れて、自分達の部屋に帰った。
「はぁー、疲れたわ」
カリーヌは、操る糸が切れて、倒れた人形のごとく、ソファーに飛び込んだ。
「ちょっと、ホコリが飛び散るだろ」
「ごめんね、レイン君。それにしても、予想していた事態が起きたね」
「あぁ。騎士達……いや、学園の制度が異常が原因で……と言いたいところだ」
「ねぇ、それじゃ、あたしらの両親に頼んだらどうかしら? 中流以下の生徒には申し訳ないけど、四大騎士家かつ学園の生徒で頂点の存在だから、理事長に――」
「暖簾に腕押しになる。月曜日のホームルームで、理事長の顔を見ただろ。いくら、財閥や上流をもてなす、あの人が考えを改める可能性は、良くても一パーセント以下だ」
カリーヌがソファーから起き上がり、ため息を吐く。
「まぁ、そうね。失礼な言い方になるけど、あのバカは、聞く耳は持たないわね」
「今の段階で、僕達は、名家に生まれた子供。確かな実力や人望を得るには、精進するしかないよ」
「けど、今のあたしらで、出来るかどうか分からないよ」
顔を下に向きながら、弱弱しい声を出すカリーヌ。レインは彼女の左肩に手を置く。
「カリーヌ。思い込みは、より自分を弱くしていくよ。人は、得意不得意はあるよ。だからといって、やらないのは、違うと思う。人生というのは、目標を達成するために挑戦し、経験を積むものだ。それが成し遂げてこそ、楽しいと感じる。なにもしないで、生きていくのは、自分の未来を暗くするよ」
「……レイン」
「それに、今日、校庭で
レインからの問いに、カリーヌは、数秒沈黙すると、口を開く。
「常に知識と経験を得て、心を鍛えることかしら?」
「そうだ。僕達が通っている学校だけではない。会社や普通の学校など、失敗や成功から得たことを教訓に実践し、慢心してはならない。そうやって、人は成長するのだ」
「そうね。出来ないと、くよくよしてはいけないわね。ネガティブな思考をしていたら、成長のチャンスを逃してしまうわ」
カリーヌは、心にかかる黒い雨雲が消えたかように、目をキラキラさせ、口角を大きく上げた。
「あぁ。とにかく、僕達がやるべきことは、東京本校で騎士としての戦闘技術や知識の習得と精神を鍛える。アーサーには凶悪な犯罪者がいるが、今は、この二つを専念しよう」
「うん!」
誰でも安堵できるような彼女の心地よいかつ爽やかな返事を聞いたレインは、微笑を返した。
「さて、話は終わりにして、晩ご飯の支度にするか。と言っても、疲れたしな。インスタントラーメンと冷凍食品で済ますか。炭水化物だらけだけど、たまには、いいだろう」
「レ、イ、ン!」
カリーヌが彼の胸に自分の顔を付けながら抱きついた。
「その前に……一緒にお風呂にしよ! もちろん、タオル無しで」
レインの顔が、血よりも濃い赤に染まっていく。数秒後、彼の首は、錆びたネジが回っているかように、縦に振った。
二人は、ルーティンになっている生まれた姿同士の愛のスキンシップをするため、脱衣所に入った。
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