case20 街を放浪する金髪JKの話20

ざまぁみろ!!


私は心の中で思っていた。もう何もかもどうでもいいと思ったはずなのに、私の心が戻ってくる。


そうだ!あんなやつ、不幸になっちまえばいい!!

私と同じかそれ以上に苦しんで、怖い思いして、地獄に堕ちやがれ!!


「動くな!!」

下の階から聞こえた声に、私は正気に引き戻された。

「警察だ!動くな!!」

その後に、ちくしょう!何でだよ!?ふざけんな!と口々に罵声を吐く若い男達の声がする。

「近隣から通報があった!逮捕だ!これで全員か!?」

男達の声が、徐々に遠ざかっていく。

それと一緒に、私に戻りかけていた「心」みたいなものも遠のいていく気がした。


なんか、もう、だるいや


私はイモムシみたいに身体をもぞもぞさせて、服を身につけて、よろよろと立ち上がった。

下半身がジンジンして、上手く立ち上がるのも一苦労だった。ソファを見ると、乾いた血が情けなくこびりついている。


ほんと、最悪。


それからは虚脱感と一緒に夜の街を亡霊みたいに歩いた。よく覚えてないけどたしか、なけなしのお金を払って、郊外にあるくたびれたネットカフェで夜を過ごしたと思う。

そこでシャワーを浴びた気がするけど、体にまとわりついた汚れは、どれだけ洗っても取れたような気がしなかった。


夜が明けて、私はいよいよどうしたらいいか分からなくなった。

夜のうちは自分がどこにいるのか分からなかったけど、明るくなってみると、自分の家まで頑張れば歩いて行ける距離だと知って少し落胆した。


どっか知らない土地で、誰にも見られず、誰にも知られず、終わりにしたかったのに。

まぁ、いいや。


あれ?こんなとこに交番あったっけ?

私は何かに導かれるみたいに、フラフラとその交番の入り口まで歩いて行った。中では1人の男性警察官が事務作業に没頭している。しばらく見ていると溜息をついて彼は言った。

「お嬢様はまた遅刻かなぁー。」

それからふとこちらを向いて、不思議そうな、ちょっと面倒くさそうな顔をした。

「ん?君、どうしたの?」

「いや、別に‥」

見下した目してんなぁ、と正直思った。そういえば私、H高校の制服着てるんだっけ。それだけでこんな風に見られるんだ。

「高校生だよね?学校は?」

「だるいから行かないんです。」

私がそうやって答えると、彼は再びはぁと溜息をつく。それから一つ椅子を用意して言った。

「こっち来て座りな。」

私は意外に思った。まぁ、間違いなくこの人は私の事面倒くさいやつだと思ってるんだろうけど、厄介払いとかはしないんだ。私は言われるがままに席に座る。

「で、どうしたの?なんかあった?」

「なんかぁ、最近だるいんすよねぇ。」


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