case19 街を放浪する金髪JKの話19
そっからの事は、あんまり思い出したくない。
そうやってお巡りさんに言ったら、彼は優しい目をして、
無理に思い出さなくていい
と言ってくれた。
とにかく私はそこで、複数の男に強姦された。
痛くて、怖かった事だけは覚えている。
それから、頭の隅で友達の事を思っていた。
恵は?恵も同じ目にあってるの?お願い!恵には手を出さないで‥
全ての事が終わった時、私はほとんど意識がなかった。
完全に意識を失っていればよかったのにって、今でも思う。
本当の事知らなければ、私は乱暴な男子に襲われただけだって思えたのに。
「終わった?」
その声に、私は遠くにあった意識を引き戻される感覚を覚えた。
「ああ、アカネ先輩とやってるみたいで最高だったぜ。」
「ふぅん、よかったじゃん。それより、紹介料、ちゃんと払ってよね。」
マサルの目の前にいたのは、恵だった。
惨めに侵された私の事など見向きもせずに、欲深い顔でマサルに右手を差し出していた。
でも‥そんな‥嘘だよ‥‥こんなの‥。
「1万だっけ?」
「あんたのお望みの女を連れてきてやったんだからもうちょっと出せよ。」
信じられなかった。信じたくなかった。さっきまで笑い合ってた人たちが今は私の事を「モノ」を見るのと同じ目で見ていた。
「それとさぁ、ちゃんと写メ撮りなよ。警察にチクられたら終わりなんだから。」
「わぁってるって。」
私は誰かに目隠しされた。それから何も見えない暗闇の中で、何回もスマホのシャッターが切られるのを聞いた。
「モエ、起きてる?」恵の声。
「誰かにチクったら今撮った写真ネットにばらまくから覚悟しとけよ。」彼女は特にこれといった感情も込めずにそう言った。
その瞬間、私の中で何か細いものがプツリと切れるような音がした。
それは今まで、私の顔を前に向けていた、糸のようなものだった。辛いことがあっても、私はまだ前を向けるんだ、まだ幸せになれるんだ、と引っ張ってくれていた糸。
だけど、もう無理だよ。お願い。幸せになんてなれなくていいから、どうか私をこれ以上不幸にしないで。
私はぼんやりとした意識の中で懇願していた。
もういいや。もう終わりにしたい。家に帰って、引き出しからカッターを取り出して、それを手首に当てて深く切りつける。うん、いつもより深く。それで終わり。それでこれ以上不幸になる事はないんだ。
「おい。」
声を上げたのは、リーダー格と見られる背の高い男だった。
周りの男達は咄嗟に静まり返る。その男は恵の事をじっと見ていた。
「‥何ですか?」視線の不快感に耐えられず、恵が不安そうな声を出す。男の視線はまっすぐに恵の大きな胸に注がれていた。
「こいつも侵す。」
男の一声に周りの男達がさっと恵を抑える。
「ちょっと何言ってんの!?離しなさいよ!」
恵は大声を上げた。敵対心を剥き出しにして、手足をバタバタさせるが複数の男の力には敵わない。
「あんた達、こんな事してどうなるか分かってんの!ねぇ!ダメ!お願い!やめて!!」
恵の声がだんだんと涙声になっていく。だが、一人の男が恵の首筋にスタンガンを当てると、彼女は途端に静かになる。
「下の階連れてけ。」
リーダー格の男の命令により、男達は恵を連れて部屋を出て行った。
後には無惨に虐げられた私だけが、古びたソファの上に残された。
ざまぁみろ!!
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