case17 街を放浪する金髪JKの話17

ダメかな?


恵が私の返事を急かす。


いいよ!H高校の前ね!


私は思わず返事をする。返事をしてしまってから、私は一人暗い部屋で、どうしたらいいか分からなくなってしまっていた。行くと言ったからには、会いに行かなければならない。それに恵には本当に会いたい。でもダイゴとマサルに会う事は嫌な予感しかしない。

そこまで考えて、私は部屋の鏡に映る自分の姿を見てみた。今更なに言ってるんだろ。私はもう堕ちるとこまで堕ちてるじゃないか。むしろ3人に会う事で何かが変わるのなら、その方がいいかもしれない。

そう思い直してから、私はもう一度自分の姿をよく鏡で見てみた。

姉にそっくりだ。ずっとお姉ちゃんみたいになりたくないと思ってきた。長い間、心の中で見下してきた。姉と私は違うと思ってきた。

実際、姉と私は違った。姉は昔から、優しくて、楽しくて、それで私なんかよりずっと強い人だった。


今の私は姉にそっくりなのに、姉とは決定的に違う。

姉は自分らしく生きている。誰かに褒められるためとか、誰かの気をひくためとか、そんな下らない事のためじゃなくて。

それなのに、私は‥‥。

そんな事本当はずっと分かってた事かもしれない。多分、小学校の高学年ぐらいの頃からずっと。


「ビビった!アカネ先輩が戻ってきたのかと思った!」

久しぶりに会ったダイゴは茶髪から金髪になり、より一層チャラくなったように見える。

「まじそっくり!モエちゃんどーしたのその制服?」

耳にピアスをたくさん開けたマサルは、今日はキャップを被っていた。

「お姉ちゃんに借りた。言ってないけど。」

私は少し気怠げに淡々と答えた。

「モエ、久しぶり!元気だった?」

恵は以前と変わらず、黒髪を後ろで二つに結び、眼鏡を掛けていた。

「うん、まぁ、元気。恵は?学校とか行けてるの?」

「私は、なんとか2年生からはクラスに通えてるんだ。1年生の時はずっと生徒指導室通いだったんだけどね。」

「そうなんだ‥。」

私は呟くようにそう言った。恵は私の知らないところで、ちゃんと前に進んでたんだ。

久しぶりに見たな、この目。この前学校行って以来だ。

「な、まじでいいよな!」

姉はH高校では女子としても人気があったそうだ。だがそれ以上に喧嘩強いことで有名だったので、誰も手を出せなかったと言う。

そういえば、お姉ちゃんって彼氏いるのかな?そう言う話は全然聞かないけど。

「実はこいつもアカネ先輩に惚れてたんだぜ。」

ダイゴはマサルを親指で指して言う。

「ばっか、お前、余計なことしゃべってんじゃねぇよ。」

マサルは怒ったようにダイゴの頭を小突く。

「えー、うそぉ。」と恵。

「いやいや。まじでお姉ちゃんはやめといた方がいいって。」私も知らないうちにその輪の中に入っていた。

「アカネ先輩って家ではどんな感じ?」とダイゴ。

「家でも、怖いよ。寝起きとか特に。この前もホムホムプリンのぬいぐるみに八つ当たりしてたし。」

「待って!アカネ先輩がホムホムプリンのぬいぐるみとか持ってんの!?」

マサルが声を上げる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る