case16 街を放浪する金髪JKの話16

姉は私の事を笑ったりとか、軽蔑したりする事なく、じっと話を聞いてくれた。

「ダイゴとマサルだぁ?そいつらH校にいるんだな!?今度シメてきてやるよ!」

「ちょ、待ってお姉ちゃん!別にダイゴ君とマサル君が悪いってわけじゃないから!」

「あ?じゃあ誰をシメりゃあいいんだよ!?」

「えっと、それは‥」私は困惑した。

誰が悪いかと聞かれても、それは‥

「分かった!多分モエは学校がだるくなっちまっただけなんだよ!」

「え?」

何かを納得したように言う姉に私は聞きかえす。

「だってほら、お前の通ってる高校なんかお堅そうじゃん?」

「うん、それはある。」

「そーだ!モエも金パにしてみたらいいんじゃね?」

「は?それはダメ!絶対無理!」

姉に言われるがまま、なされるがままに金髪にしてみると、何故だか鏡に映る自分が自分じゃないみたいに見えた。でも、なんかこっちの方がいいかもしれない。姉と並ぶと私達はやっぱり姉妹なんだな、と感じた。

「モエ、遊びにいこーぜ!」


「うん!」

その時、気持ちが解放されていくような気がした。一体私は今まで何に縛られてたんだろう。

心を開いて姉と話をするのは何年ぶりだろうか。

それから私は学校をサボって、姉と共に昼夜構わず遊びまわった。

「ちょっとモエ!あんた、学校どうする気よ!」

母は私に失望し、毎日のように家で怒鳴り散らかしたが私は聞く耳を持たなかった。


年が明け、姉が高校を卒業し働き始めると、再び私は独りぼっちになった。私は当然留年して、再び一年生をやり直す事になった。

その頃には父も母も私を怒鳴りつける事はほとんどなく、ただ悲しそうに私に尋ねるだけだった。

「モエ、どうして学校に行かないんだ?」

「私、モエが学校にまた行ってくれるって信じてるから。お父さんもあなたを信じて学費を払い続けてくれてるのよ。ねぇ、学校に行かない理由だけでも教えて。」

その度に私は答えた。

「なんかぁ。だるいんだよねぇ。学校行くの。」


家にいると親がうるさいので街をふらふらとうろついた。特にあてもなく、私は同じところを巡回していた。あぁ、私は、いつになったら前に進めるんだろ。ずっと、同じところをぐるぐる、ぐるぐる‥


そんな私の元にある日、一通の連絡が届いた。


久しぶり!元気?


清水恵からだった。私と恵はあの夜から一度も会っていなかったので、正直驚いた。


めっちゃ久しぶり!元気だよ!恵は??


私も元気だよ!

突然なんだけど、今から会えないかな?

あの日の事、直接謝りたくて‥


私はハッとした。恵はずっと、あの日の事気にしていたんだ‥

でも、別に恵は何も悪くない。

そう思ったら、私は恵に会いたい気持ちが溢れた。直接会って、私はもう何も気にしてないって事を伝えないといけない。


いいよ!会お!

どこ行けばいい??


H高校の前でもいいかな?


H高校?私の頭に疑問が湧いた?どうしてH高校なんだろう?会うだけなら、もっと家の近くとかでもいいのに。

私はその疑問を恵に尋ねてみた。


実はね。ダイゴくんとマサルくんもモエに会って謝りたいって言ってて‥


私はなんとも言えない不安が胸に広がるのを感じた。剃り込みを入れた坊主頭で、耳にピアスをたくさんつけたマサルが、カラオケの店員を身の毛もよだつ様な凶暴な顔つきをして殴っているのが頭に蘇る。

姉の知り合いにも見た目が派手な人はいるが、ダイゴとマサルは何かもっと醜悪なものを内側に抱えているような気がした。

出来ればもうあまり関わり合いになりたくない‥

私は直感的にそう感じていた。

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