case12 街を放浪する金髪JKの話 12

私が小学校高学年くらいの時だろうか。姉との決定的な違いを感じたのは。


姉は私がまだ幼い頃、よく一緒に遊んでくれた。縄跳びをしたり、かけっこをしたり、あの頃はとても幸せだったなぁ、と今でもふと思う事がある。

姉は勉強は良く出来なかったけど、とても優しくて、楽しい人だった。

だけど、姉が中学に上がると、だんだん様子がおかしくなっていった。

「あんたまた学校で殴り合いしたんだって!?」

「うっせぇなー!死ねよクソババァ!!」

毎日のように両親と姉はケンカを繰り返し、私の家に平穏な日が訪れることはなくなった。

それでも姉は私にだけは優しかった。姉は私にとっては何も変わらないお姉ちゃんだったはずなのに‥


いつの間にか、私が姉を見下していた。


私はお姉ちゃんみたいになりたくない。影に隠れて涙を流す母を見て心からそう思った。

私はお母さんを泣かせたりしないし、学校ではよく褒められるし、何よりお姉ちゃんなんかよりずっと勉強が出来る。私とお姉ちゃんは違う。

「モエー、遊びにいこーぜー。」

「あ、待ってお姉ちゃん。」

だるいなぁ。心ではそう思いながら、なぜか私は実の姉に取り繕った表情を見せ続けた。


私は中学三年になり高校受験を迎えた。私の両親は私に期待を寄せてくれていた。正直必死だった。私の学力は学年で見て中の上レベル。

志望しているK高校に入るのはかなり厳しかった。

私は必死だった。K高校に入らないと意味がない。この地区で一番優秀な高校に入って、底辺校に入った姉との違いを証明してみせる。それしか頭になかった。


「やった!あった!あったよ!!」

K高校の合格発表日、私は感極まって叫んでいた。

「すごい!よくやったわね、モエ」母は一緒になって喜んでくれた。

「すげーじゃん!モエ!」もちろん姉もだ。

その時、撮った写真は今も私の部屋の勉強机の上に置いてある。

中学の制服を丁寧に着こなし、黒髪を後ろで束ねた私と、ぶかぶかのジャージ姿に長く乱雑に伸びた金髪の姉。側から見て私達は姉妹に見えるだろうか?

しかし入ってみると、K高校は私が思っていたほど甘い場所ではなかった。

何をおいても勉強、勉強。勉強ができない人間は、はっきり言ってクラスで見下される対象となった。

高校のボーダーラインぎりぎりで滑り込んだ私はあっという間に落ちこぼれた。

あいつと同じになりたくない。あいつと自分は違う。毎日のようにクラスの人間からそんな視線を受け続けた。

私がクラスメイトに声を掛けると、なぜか彼らは取り繕った表情をした。勉強で分からないところがあればどこでも聞いて、と言いつつ内心は下の者に優しくする事で優越感に浸っているのだ。

そんな事ばかり、私ははっきり分かってしまう。だってそれは、私がずっとずっと姉に抱いてしまっていた感情だから。

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