case10 街を放浪する金髪JKの話 10
交番から出たところで、京太郎と富永は先ほどのK高校の生徒とすれ違った。
眼鏡を掛けており、長い髪を後ろで二つに結んでいる。
彼女は京太郎と富永のそばを通る時、分かりやすく目を背けた。
そういえば、彼女を襲った人物は、富永と同じ学校に通っているのだったっけ?そりゃあ向こうも怯えるわけだ。
対する富永は通り過ぎる彼女の背中を凄まじいまでに睨みつけていた。
「おい、富永。やめろ。」
「え?何がっすか?」富永がとぼけたように言う。
「お前あの子のこと知らないって言ってたじゃないか。なんでそんな睨んでんだよ。」
「別に、胸大きいなぁと思って見てただけっす。」
京太郎はそれには何も答えなかった。それから二人は黙って午後の町中を歩いた。
蝉の鳴き声がうるさい。暑いし、腹減ったし、ほんとに嫌になる。そういえばカツ丼食い損ねたな。今ごろ幸田先輩が3人前平らげてるところだろう。
「ねぇ、お巡りさん。」
「なんだよ。」
「‥‥何でもない。」
変なやつ。そう思って富永を見る。赤いジャージ姿で、日差しが差す道を淡々と歩いている。
昨日はだるいだるいと言っていたくせに、今日はやけに静かに、文句も言わずに淡々と歩いていた。
「お前、腹減ってないのか?」
京太郎が声をかける。
「別に大丈夫っす。」
「暑くないのか?」
「いや、平気っす。」
「そうか‥‥」
それから二人は黙って歩いた。蝉時雨と暑い日差しが降り注ぐ午後の町を、何も文句も言わずにただ淡々と。
階段のその先は昼間なのに随分と薄暗く感じた。
富永の背中を追って、暗くて、深い場所へと、京太郎は一歩一歩近づいていく。
「そっちはお姉ちゃんの部屋なんで勝手に入ったら殺されますよ。」
富永はキョロキョロしている京太郎に向かって言った。
それから廊下の奥の扉の前で立ち止まる。
「あたしの部屋はこっちっす。どうぞ。」
富永が扉を開け京太郎を招き入れる。京太郎はその部屋に入った瞬間に違和感を覚えた。
ここは‥?そこはきれいな部屋だった。勉強机とその上に飾られた写真。本棚。服掛けにかけられた制服。違う。どれを取っても、京太郎の知っている富永の部屋ではなかった。
「驚いたって顔してるっすね。お巡りさん、ずーっとあたしを見下した目をしてたのに。通ってる学校だけで、そんなに人を見る目って変わるもんすかね?」
「富永、お前は‥‥」京太郎は富永の方を見て言う。
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