経路 ♮

第6話 黄金神倫

 私審議官、果心居士の内申が始まる。


 魂の修練場所異世界のアズーラ一国制度は、アズーラ正導王朝を大きく仰ぐ、4州の統治によって循環される。

 工業の進化確実なフレイ州。兵農分離進んだラカン州。巫女を多く輩出するキモン州。肥沃な農業を生業とするイーズウェル州。国境線は長らくの諍いから押しつ引かれつでも、農業生産で大きく生活の安定したイーズウェル州以外は、やや等分の形で、歴代女性首長の元で合議される。


 ただ、それもアズーラ正導王朝の霊的権威に疑問を投げ掛ける、キモン州の女性首長モヴァイの新たな霊的主導権で、隣接国フレイ州の民衆が大きく傾き併合運動が展開される。これも新時代の流れとアズーラ国民の潮流が出来つつ有り、強かなラカン州は、キモン州は同盟を結ぶ。ここで次の標的国は、どうしても潤い豊かな中立州イーズウェル州への侵攻がいつかになり、同州内にあるアズーラ正導王朝の権威は大きく削がれようとしている。


 そのアズーラ一国制度の大きな節目に、修練への光の輪道を潜ったのは、日本国とアズーラ国の混成の宮本武蔵協同組合の面々。子の位:土師静仁・辰宮久住・独郷。卯の位:新免玄信・村越ジュリアーノ・遊佐。午の位:柳生利厳・諸積双葉・戯量。酉の位:佐々木巌流・隠原才蔵・円蕪。

 位の組に準じて4州に初期配属されるも、熟成された各州の厳密な院政はただ深謀遠慮が激しく、嫌気を差した宮本武蔵協同組合の離反合流が定めとなる。

 そうした中で、結果各州を巻き込みながら宮本武蔵協同組合は、日本国に帰投したい争いが凄まじくなるも、三位一体で一体となる結身を教えずとも、存分に能力を引き出し修練を加速させた。

 果てに得た知見としては、アズーラ正導王朝による政道こそが健やかではと。ただ、これは日本国で長らく争われてきた、一院制の忌避とはなんだったのかと、深く思案を巡らす事になる。


 そして、初めて一人も欠ける事の無い宮本武蔵協同組合の総意は、大きな問題を醸し出した。

 歴代の宮本武蔵はアズーラ正導王朝に傅き、現在2期目を務める異端児宮本一泊は、これでは修練の意味が全くなくなる。日本国そしてアズーラ国も、その緩い心構えでは、どうしても巨大な悪を生みかねないと叱咤した。それは女性正導王シーズも同意見だった。


 そして一泊が纏めて面倒見てやると、宮本武蔵だけの持つ、無制限に魂を加速させる黄金神倫を発動させ、シーズ正導王に共する火之迦具土神と融合し、流動的な火炎を撒き散らす。

 4組が結身し束になって飛び掛かるも、ただ剣圧に押され解印される。そこでもめげないのが今季の宮本武蔵協同組合で、立ち上がれるものが、勢いで位が違えどの結身し挑む。

 一泊の怒りは凄まじく。皆は鋭い斬撃の果てに最後の結身へ。一泊が渾身の一滴で振り抜くも、それは才蔵の残影。一泊、本能で本体は後ろかも姿は無し。ただそれも遊佐の白糸で視野を奪い存在無き者として、一泊の心を手繰った。そしていつの間に、一泊の土手っ腹から血が流れ滴る。貫くは二本の刀身。主体幹は円蕪も玄信と巌流の両腕からなる二天一流で終わりを告げる。


 そうしてあるべくしての宮本武蔵の代替わりは行われた。ただ、剣豪二人への黄金神倫への神授は初めてだった。審議官の立場から、どうにか一人へと決着つけてくれも、それなら全員日本国に戻せで、折り合いを付けた。


 後日。下関の舟島で、新免玄信と佐々木巌流の決闘は行われたのだが、徹頭徹尾茶番でただ爆笑するしかなかった。

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異世界♮宮本武蔵協同組合 判家悠久 @hanke-yuukyu

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