第3話 【エロトリガー】

 夏休み初日だと言うのに、僕は何てバカな事をしてしまったのだろう。



 結局、給付金の半分の5万円でワケのわからない【エロトリガー】を買ったようなモノだ。


 

 アキラの口車に乗せられるなんて。

 まるで厨二病真っ盛りの重症患者だ。



 だいたい幼馴染みのユリアとは一年近く会っていない。



 彼女が受験だった事もあるが、久しぶりに訪ねて行って彼女に向かって、【エロトリガー】を撃つと言うのは常軌を逸している。



 サバイバルゲームでも誘ってゲームに紛れて【エロトリガー】を撃てば良いのだろうか。


 帰宅途中、あれこれ考えていると、いきなり背後から女子の声が響いた。



「ポチィ〜ー……!!」


「えェ……」この声は。

 声がした方へ振り返った。



「キャッキャァ〜ーッ✨😜✨✨

 きありィ〜!!」

 美少女が駆け寄ってきて、背後から僕の延髄にアックスボンバーを放った。

 一瞬、目から火花が飛び散っていくようだ。



「痛ッてェ……😖💦 バカじゃないのか。

 厨二病か!!」

 まさに言葉通り僕は頭を抱えた。さっきから話しに出てきた幼馴染みのユリアだ。



 彼女は僕の父親のDVDコレクションを観て以来、昭和プロレスの大ファンだ。



 今のは、有名なアン○ニオ猪木が、ハ○クホーガンにアックスボンバーを食らい、場外で舌をダラリと出して失神KOされた場面の再現をしたシーンだ。



「どうアックスボンバーを食らった気分は」

 ユリアはニコニコ微笑んで、誇らしげに腕を掲げた。


 華奢な腕だが、勢いよく後頭部へ放ってきたので強烈な一撃だった。

 


「あのね……、ハ○ク ホーガンかよ!!」

 僕は彼女を睨んだ。



 大学生にもなって、真っ昼間から往来でアックスボンバーを食らうとは思いもしなかった。



「……😳💦」

 他の通行人らもビックリした顔で僕たちを見ていた。



「キャッキャ〜ッ! 痛かった?

 よしよし、ポチィ……✨😜✨✨」

 ユリアは僕をペットでも扱うように後頭部を撫でた。



「あのね……、ポチじゃねェよ。

 なんだよ。急に!!」

 こっちから行く手間ははぶけたが。



「フフ……、アキラ君から聞いたよ。ポチが大事な話しがあるッて!!」

 


「え、ああァ〜…、そうか。

 アキラが連絡してくれたのか」

 アイツにも5万の借金をチャラにした恩義があるのかもしれない。

 まァ、それくらいしてもバチは当たらないだろう。



「ねえェ〜、ポチ✨😝✨」

 ユリアは、ふざけるように僕と腕を組んできた。

 柔らかな胸の膨らみが僕の二の腕に押しつけられる。



「だ、だから……、ポチじゃねェッて……」

 否定したモノの声が少し震えてしまった。


 こんな大きなオッパイを押しつけられたことは初めての体験だ。



「ねェねェ、魔法を見せてよ✨✨」

 甘えるように美少女が僕の腕にすがりついた。


「え、魔法ッて……?」なんの話しだろう。


「だって、童貞ボーイは二十歳になると漏れなく魔法使いになるンだろう✨😜✨✨」



「あのねェ、なるワケねえェだろう!!

 魔法使いなんかに!! 

 どこのラノベだ。二十歳の童貞が魔法使いになるなんてデマを書いたのは!!」

 


「ンゥと、ポチの家まで瞬間移動してみて」

 僕の腕にまとわりついて強請ねだった。


「だから……、出来るか!!

 魔法なんて」

「じゃ、魔法でユリアの周りだけ涼しくしてェ……」



「だからァ〜、魔法なんて使えないよ!!」



「なによ!! 童貞ボーイのクセして!!

 役に立たない魔法使いねェ……」

 ユリアが何度も僕の事を『童貞ボーイ』と呼ぶので、通りすがりの通行人らもクスクスと笑っていた。



「ン……😓💦」恥ずかしくて僕は顔が真っ赤になった。


「誰にも言わないから魔法見せてよ」



「バカなのか! とにかく家へ行こう!!」

 慌てて、ユリアの手を引き帰り道を急いだ。








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