第6話

「な、な‥なにを」


竹下君の言葉に固まる、

しかし、それも一瞬、すぐに頭の中に浮かんだのは


〝否定しなくちゃ!!〟


早く否定しないと竹下君に誤解されちゃう!!


「真理と俺は付き合ってない」

「え?」


口を開こうとした私の声に被せるように発せられたのは聞きなれた幼馴染み、春斗の声だった。私は驚き振り替える。するとそこには壁に寄りかかりながら座りこちらを見据える春斗がいた。


「俺と真理は小学校からの仲で、親同士も仲がいいが、俺と真理は別に恋人なわけじゃない、ただの腐れ縁だ」


春斗は静かに淡々と言いはなつ。


私が言いたかった事を簡潔に説明した春斗、

普段ならナイス!!

と誉めたいとこだけど、なにか引っ掛かるような気がする‥‥なんだろ?


「えっと~、そうなんだ、ごめん、クラスで大塚さんが毎日登下校を一緒にしてる男子がいるって言ってたからてっきり‥‥こほん、じゃ、改めて、大塚さんと、大杉のクラスメイトで、竹下雅人だ、よろしく!!」

「大塚春斗、よろしく」


そう言うや竹下君と雅人は握手を交わした。


男の子ってなんかいいな~


二人を眺めながらしみじみと考え、竹下君と簡単に友達になった春斗が羨ましいという嫉妬混じりな視線を向ける。


とりあえず後で春斗の手を触ろう!!


「うんうん!!仲良きことは善きかな!!春くんを誘った私ナイスだね!!」


決意する私の横で愛ちゃんがうんうんと頷きながらそんな事を言っていた。

そこで私はふと気づく


「そう言えばさ、竹下君の状況は分かったけどなんで春斗が?愛ちゃん、春斗と連絡先交換してたっけ?」

「ん?んん!!交換してないよ?購買で竹下に奢る飲み物買いに行ったら偶然春くんがいて折角だから誘ったの!!ただ、春くんお昼ご飯教室だから一回別れて後から来ることになってたんだよ~、どう?びっくりした!?」

「うん、びっくりしたよ」

「あ、でもそうだな~、また集まりたいし、春くんの連絡先知っといたほうが何かと便利そう!!という事で春くん!!私とふるふるしよ!!」


そう言うや愛ちゃんは春斗の方へと駆け寄り詰め寄った。


「‥‥やだ、」


詰め寄る愛ちゃんと反対に春斗は素っ気なく断った。


たしか、中学時代も春斗はあまり連絡先を同級生に教えていなかったような気がする。

なんでだろ?


「えー!!そんな事言わずに交換しようよ!!ほら!!スマホ出して出して!!」

「‥‥‥」


へこたれずに詰め寄る愛ちゃん、

春斗は愛ちゃんを無視してお昼のサンドイッチを食べ始めた。

愛ちゃんも春斗の隣に座り、お弁当を広げながら尚も春斗と連絡先の交換を要求する。


「春斗の奴すげーな、うちのクラスの男子は大杉の連絡先知りたくても教えて貰えないのに」

「え?そ、そうなの!?」


二人の様子を見ながら私もお昼を食べ始めるといつの間にか隣に座っていた竹下君が話しかけてきた。


え?い、何時の間にっ!!


驚く私を他所に竹下君は続けた。


「ああ、大杉は誰に対してもあんな感じだし、あの見た目だからね、入学してまだ間もないけどうちのクラスでも大杉を狙ってる奴もそこそこいるんだよ、」

「そ、そうなんだ‥‥」

「大杉も分かってるのかあんな感じでもクラスの男子とは一切連絡先交換しないんだ、はぐらかすのが上手くて、話題を逸らすし、その大杉があんなに連絡先を強張ってるなんてクラスの男子が聞いたら即倒するかもな」


そう言って笑う竹下君、

ああ、やっぱりこの笑顔、好きだな~

というか知らなかった、愛ちゃんってそんなに人気あるんだ、

たしかにものすごくかわいいけど!!

そんなかわいい愛ちゃんなら連絡先交換しよって言われたら絶対頷くよ!!


春斗はなんであんなに嫌がるんだろ?


そんな事を疑問に思いながらもその後春斗に最後まで邪険にされた愛ちゃんと竹下君が中心になって私達は和やかな昼休みを過ごせた。



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