第168話 親子対決 ゼビウスVSシス
ムメイとトクメは試合に負け、残っているのはゼビウスとシスのみ。
ここまで来ると流石にシスも逃げる事を諦め覚悟を決めた。
試合開始の鐘が鳴り最初に動いたのはシス。
真正面からゼビウスに向かって駆け出したが直前で姿を消した。
しかしゼビウスに焦る様子はなく、空中へと飛び上がっていたシスの踵落としを簡単に腕で受け止めそのまま右手でシスの足首を掴み、大きく振り上げ容赦なく地面へと叩きつけた。
「っ!!」
強い衝撃に闘技場はシスを中心に円形へと窪み、破片が辺りに飛び散る。
衝撃に備えていたシスは軽く咳き込む程度で済んだが、それより今もしっかりと掴まれた足首の方が問題だった。
再び振り上げられ、そう何度も受けたくないとシスは叩きつけられる前に身体を起こしゼビウスの顔目がけて火を吐いた。
「!?」
流石に驚いたのかゼビウスの手が離れシスは難なく地面へと着地するが、体勢を整える間もなく火柱から手が伸び胸ぐらを掴まれる。
咄嗟に離そうとするも呆気なく引き寄せられ火柱の中へと入る寸前、火が消えると同時に顔面へ強烈な頭突きを喰らってしまった。
「がっ!!」
目をやられて思わずよろけるシスだがこのままでは殴られてしまうとまだ胸ぐらを掴まれたままの腕を掴み返し、それを支えにゼビウスの顔を狙い蹴りを繰り出した。
何かに当たった手応えは感じだがその際の音と感覚から攻撃は腕で防がれている。
しかし胸ぐらを掴む腕からは解放されたのでシスは咄嗟に後ろに飛び退り、それと同時に辺り一面を囲うように火を吐いた。
先程の頭突きで視界はまだぼやけていてよく見えない状態のシスを今のゼビウスなら好機と必ず攻めてくる。
しかしこうして周りを火で囲めば目が見えずとも熱と風の動きでゼビウスの来る方向が分かる。
視覚は完全に捨てスッと目を閉じると前方で空気が動き何かがこちらに向かってくるのを感じた。
この一撃を防ぎ、そのままゼビウスを場外まで蹴り飛ばせば十秒間闘技場に上がらせず妨害し続ける事なら可能。
しかし……。
「っ、杖!?」
予想通り前方からの攻撃を防ぐもそれはゼビウスの拳ではなくアダマンタイトで造られたあの真っ黒な杖。
この時シスは完全に油断していた。
予想と全く違う事が起きたというのもあるが、ゼビウスは過去に兄のカイウスから父親殺しの冤罪を着せられ罰として両脚を燃やされている。
幸い生活に支障をきたしてはいないが火傷跡は残り、ゼビウスはこの傷跡を忌み嫌い誰かに触らせる事は勿論見せる事も、蹴るなどといった脚を使うような事も徹底的に避けている。
つまり、シスは足元の警戒を全くしていなかった。
その為ゼビウスが杖を投げると同時に姿勢を低くして火の壁を突破していた事に、そして脚を使うとは微塵も思っていなかった為ゼビウスの足払いに簡単に引っかかり見事なくらい綺麗に倒れた。
ようやくはっきり見えるようになった視界に入ったのは雲一つない青空と笑顔で拳を握るゼビウス。
「(殴られる……!!)」
来たるべき衝撃と痛みに備えシスはギュッと目を瞑った。
「……あれ?」
しかしいつまで経っても痛みも衝撃も来ない事を不思議に思いシスは恐る恐る目を開けた。
「ハハッ、俺の勝ち」
目を開けるとそこには先程とは違う嬉しそうな顔で笑うゼビウス。
そしてゼビウスはシスの額を指で軽く弾いた。
『十秒。倒れてから立ち上がらなかった事によりシスの敗北が決まった。勝者はゼビウスだ』
「……へ、え?」
何が起きたかよく分からず弾かれた額を軽く摩り、とりあえず殴られずに試合が終わった事を理解すると気が抜けたのかシスは元の姿に戻った。
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