第167話 成り行き対決 ゼビウスVSムメイ

 あまりにもあっさり勝ってしまい、逆にどうすればいいか分からずムメイは場外に落ちたまま今も気絶しているトクメを見つめたまま動かずにいた。


「油断しすぎだよ、ムメイちゃん」

「え? ああっ!」

「ムメイ!!」


 その隙をついてゼビウスは雷でムメイを場外へと弾き飛ばした。

 雷はそのまま闘技場を囲うようにグルグルと回りだし、バチザチと近づくだけでも感電しそうな危ない音を出している。


「ここだと俺も敵だよ、トクメを倒して終わりじゃない。さて、この後シスとの戦いもあるからあまり時間をかけるのは良くない。この十秒で決める」

「……っ、私の目的は一応果たしたけど、だからと言ってこのまま大人しく負けるつもりはないわっ」

「ははっ、その心意気やよし! やっぱ戦いはこうじゃねえとなあ!」


 一瞬怯んだように見えたがすぐに戦う事を決めたムメイにゼビウスは楽しそうに笑うと雷はよりいっそう激しく、強くなった。

 しかしムメイは慌てる事なくゼビウスを見上げたまま視線を鋭くすると、周りの土が舞い上がりゼビウスの雷と混ざるように回りだした。


「……? 何が起きるんだ?」

「ん? ああ、なるほどね」


 シスは何が起きるのか分かっていないようだが、ゼビウスはすぐに分かったのか確認するように軽く顔を上げスンと鼻を鳴らしてからパチリと指を鳴らした。


「え……?」


 すると一瞬にして闘技場を囲っていた雷はなくなり、同時にムメイが操っていたであろう土も地面へと落ちた。

 その事に何故かムメイは戸惑いキョロキョロと周りを見渡している。


「まだまだ甘いねムメイちゃん、攻撃が失敗した時の想定をしていないなんて。ほら、雷もないから闘技場に戻れるのに来ないから……」

『十。ムメイ、時間内に闘技場に戻らなかったのでお前の負けだ』

「あっ」

「んっふふふ、俺の雷を使って粉塵爆発を起こそうとしたのはいい作戦だけど……石と土しかないこの場所で金属の粉はダメだよ。土で誤魔化そうとしても匂いですぐに分かる」


 狙いだけでなく囮にも気づかれていたと知ったムメイはガックリと肩を落とした。


「あー……炭塵にすれば良かった?」

「粉系纏わせた時点で分かるからダメ。ま、場外に弾かれても焦って闘技場に戻ろうとしなかったのはいい判断だよ」


 粉塵爆発を仕掛けた時点で既に間違えていたと分かり、完全な負けを認めたムメイはまだ気絶しているトクメに近づくと軽く汚れを払ってからもたれるようにして地面に座った。

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