第112話 ようやくCランクに

「シス、冒険者ギルドへ行くぞ」


 街へ着くと同時にヴィルモントはそう言うと、ゼビウスが口を挟む間もなくシスを半ば強制的に連れて行ってしまった。


「何あいつ、トクメみたいじゃん」

「私はあそこまで強引ではない」

「ふむ、つまり妾に似て自由奔放という事じゃな! 流石は妾の子供、見た目だけでなく内面のこういう内側からでも血の繋がりを感じられるのは良いの」

「…………」


 トクメ達がヴィルモントについて話している中、ムメイは何だか置いてけぼりをくらったようでなんともいえない表情をしていた。


 ******


「よし、さっさとこれを受付へ持っていき手続きしてくるがいい」

「これって……」


 ヴィルモントがシスに渡したのは三匹のワイルドウルフ。

 特に外傷は見当たらないが、シスが触れてもピクリとも動かない。


「え、いや、何でだ?」

「お前はまだDランクだろう。Cランクに上がるにはワイルドウルフが三匹必要だが、オルトロスのお前では倒す以前にまず見つける事が無理だ。だが実力にともわないランクのままでいさせては主である私の名折れもいいところ、いくら私がヒールハイに戻るまでという短期間とはいえ従魔契約を結んでいる以上は主としての義務は果たす。何より、お前が周りから実力のない者と勘違いされ舐められるのはともかくそのせいでお前を従者にしている私まで低く見られるのは辛抱ならん」

「あ、ああ……」


 一息に、しかも途中早口で話され半分ぐらい何を言われているのかよく分からなかったがとりあえずシスはワイルドウルフを受け取った。


「でもいいのか? 魔物の討伐依頼は受けた奴が倒さないと規約違反になるんじゃ……」

「問題ない。テイマーは自ら戦わず従わせた魔物に対象を倒させ報酬を得ているが違反行為にはならんだろう? ならば逆に主が倒した魔物の手柄を従者に譲ったところで咎められる事はない」

「そういうものなのか……?」


 いまいち理解しきれていないシスだったが、ヴィルモントにさっさと済ませろと急かされ戸惑いながらも受付に向かい、あっさりCランクへと昇格する事が出来た。


「これがCランクのカード……」


 ウィルフがCランクに上がった時にも見ているが、自分の物だと思うと全く違う物に見えるのかシスは鈍色から赤銅色に変わったギルドカードを裏返したり掲げたりと様々な角度から興味津々に眺めている。


「言っておくが、今後のランク上げに関して私は一切手伝わんからな」

「えっ。Cランクに上がればもう十分じゃないか?」

「そんなわけないだろう。Cランクはまだまだ駆け出しに過ぎん、冒険者にしろ従者にしろランクは上の方が群がってくる相手の対応も楽だ。ギルドや他の者から一目置かれるだけでなく注目もされるしな」

「上って……ドラゴンは倒せねえからな。他にも俺より強いの結構いるし……」

「そこまでは求めん。だが従者として最低限Bランクまでは上げろ、お前ならオークやゴブリンの集落は簡単に陥とせるだろう。今から行くか? 送るだけならやってやろう」

「絶対嫌だ」

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