第34話 意外な再会
次の日、同じ冒険者ギルドで今度はウィルフとルシアが依頼板をジッと見つめていた。
「見事に上位ばかりだな。もうこうなったら依頼は受けずに森に入るか? うろつくだけでもワイルドウルフには会えるだろう」
「何の悪さもしていないのにランクの為だけに狩るのはどうかと思うんだけど」
「ワイルドウルフは家畜を襲うからな、未然に防ぐ意味で狩るのもありだ。それにこっちを獲物と認識して襲ってくる場合は対応しないといけないだろう」
ウィルフの言葉に納得したのかルシアはまた掲示板へと視線を戻して依頼を探し始め、その様子を眺めつつシスはウィルフに声をかけた。
「ワイルドウルフってのはそんなにしょっちゅう会うのか?」
「結構適応力も高いからな、様々な場所に生息している。俺達はもう何度も遭遇しているからCランクに上がっているが……シスは違うのか?」
「昨日も森に入ったがあの洞窟で見た奴以外には会わなかったし、そもそも今まで会った事ねえんだけど」
「なあ、あんた」
「ん?」
肩を叩かれたシスが振り返ると、そこには大剣を担いだ見知らぬ男が立っていた。
「……誰だお前」
「やっぱり! あん時のオルトロスの兄ちゃんだよな! ほら! ターチェスで兄ちゃんがオルトロスに戻って大騒ぎになった時の!」
男は大声で話しながらブンブンと両手を振っているが、シスは思い出せず首を傾げているとウィルフが思い出したのかパシッと自分の手を叩いた。
「もしかしてあの腕輪の女の仲間でシスを真っ先に斬ろうとした奴か?」
「そう! そうだよ! あん時の事謝りたくてあんたを探してたんだ!」
「謝る?」
「そう! ほら、知らなかったとはいえ魔物だからってだけで斬ろうとしちまったからな。それにその腕輪をした子はサリアって言うんだけど、あいつにも俺が魔法を撃てって言ったから……だからサリアは悪くねえんだ、全部俺が悪い! 本当にすまなかった!」
男は勢いよく頭を下げて謝罪した。
「特に気にしていないからいい」
「……ありがとうな兄ちゃん。俺はルドラってんだ、良かったら兄ちゃんとそっちの嬢ちゃん達の名前教えてくれねえか?」
「シス」
「俺はウィルフと言う」
「ルシアよ」
「そっか、いい名前だな。よろしく!」
そう言ってルドラは右手を出したが、握手を知らないシスは少し悩んでから同じ右手を出した為ルドラは一瞬固まった。
しかしすぐに笑顔になり両手でシスの手を握り返した。
「そういや今日はそのサリアって女はいないのか?」
サリアが、というよりあの腕輪があるとシスは人の姿になれなくなるのだが、今は何の変化もないのを不思議に思いキョロキョロと辺りを見まわしている。
「ああ、サリアは今買い出しに行っててここには来ていないんだ。俺が依頼を受けてから合流する予定なんだが……そうだ! 折角だし一緒に依頼受けねえか? 俺もうちょっとあんた達と話したいしさ。このキラープラント討伐なら丁度いいと思うんだ」
サッとルドラが依頼板から取ったキラープラント討伐の依頼にはBランクと記されている。
「俺Dランクだから受けれねえぞ」
「大丈夫! 俺Bランクだし、依頼を受ける奴が規定満たしていたら後は誰を連れて行こうが自由だ。勿論何が起きても自己責任になるけどなっ。でもキラープラントならBランクだけど対応さえ間違えなきゃ安全だし、他の魔物が来ても俺が戦うからさ。あんた達もいいか?」
「俺は構わない」
「ええ、私も構わないわ」
「よっしゃ! じゃあこの依頼受けて、ちょっとサリア見つけて話すから待っててくれよ! すぐ戻ってくっから!」
素早く依頼受注の手続きを済ませギルドから飛び出していったルドラをシス達はポカンとした表情で見送った。
「いい奴、なのか……?」
「さあ……まあ、謝る為に探していたのだから悪い奴ではなさそうだな」
「それにしてもせっかちな男ね。声も大きいし、もう少し落ち着けないのかしら」
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