そこの【老婆】がいうことには

 小高い丘の公園で死んだはずの真琴と再会を果たした。


 オレは今のこの突拍子もない状況についていけないでいる。

「真琴。お前死んだんじゃ」

 オレは木の上にいる真琴に問いかけた。

「死んだよ。けどここにちゃんといる」

 真琴はぽんと跳躍して、オレの目の前に着地する。ふわっと空気が動いた。

「死神になって戻ってきたんだ」

 真琴は平然と言う。

「死神?」

 真琴は頷く。


「死んだら普通、次の転生に向けて天界へ進むの。けど、私はあの世とこの世の狭間、雲の上みたいなところでこの世を見下ろしていたんだ。誰かさんが私をずっと探してたから気が気でなくてね。そうしてるとお婆さんがやって来て言ったんだよ。死神になったら、この世に降りられるよって」

 真琴の話によると、その老婆はこの世に未練のある狭間を彷徨ってる魂に声をかけて、死神となる者を募っているらしい。死神はこの世に降りることを許された魂で、一度死神になると転生できなくなるという。


 オレに会うために死神になったということはつまり、オレのせいで永久に生まれ変われなくなったということなのか。

「まぁ、生まれ変わった先でどういう親に当たるかわからないしね。また同じような目に遭うのは嫌だからいいんだよ」

 真琴は薄く笑う。

「それから、正式な迎えの時以前に死神に遭った人は寿命が半分に減らされて、死んだら強制的に死神にされるのだけど」

 ってことはオレは寿命が半分に減って、死んだら選択する余地も無く死神になるということか。


 オレは言葉が出ない。

 その様子を見て、真琴は眉を下げる。

「ごめんね? でも、ずっと下を見て私を探続けるくらいなら、そうした方が良いかなって。寿命が来たらまた迎えに来るよ。そしたら、ずっと一緒にいよう?」

「そんな勝手に」

「うん。勝手だよね。でも、私は知らない世界へ行くより、ずっと一樹といたいんだ」

 真琴は切なげにオレの方を見た。その視線はどうか拒まないでと全身で訴えている。

 オレは大きなため息を吐いた。

 真琴は肩を震わせた。

「まったく。勝手なやつだな。でも、オレも真琴のいない世界は嫌だよ」

 オレの言葉に、真琴は笑顔になり抱きついてくる。オレはそれを抱きとめた。


「オレはあと何年生きる?」

「あと20年くらいかな」

「まだそんなにあるのか」

「迎えに行くまで精一杯生きて。けど、私より大切な人作っちゃだめだよ」

「なんて我儘な」

「うん。でも諦めて。一樹は永久に私のものだから」

 真琴は楽しげに笑った。

 


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