『やましんに出会ったとき』

やましん(テンパー)

『街でやましんに出会ったとき』

  『これは、あくまでも、フィクションであります。』




 やましんは、普段は家に籠っていますが、主に病院や、スーパーや、中古やさんに行くために、出てくることがあります。


 気が小さく、おとなしい生き物ですが、大声で叱ったり、脅かしたりすると、パニックになり、どうしていいかわからずに、その場で固まることがあります。


 最近は、老化のため、記憶力があやしくなり、勘違いや、忘れ物が多くなっています。


 たとえば、スーパーでお餅を買った時・・・


 『ありがと、おばさん。』


 と言って、帰りかけましたが・・・


 『あ、お客さん、おもちお持ちかえりください。』


 『あららああ。すいません。はははは。じゃ、これで・・。』


 『あああああ、お客さん、財布お持ちかえりください。』


 『あああああ。はははははは、すいません。じゃあ、これで。』


 『あらあら、お客さん、おもち、また、おいてるよ。』


 てな、感じ。


 これで、うっかり叱ったりすると、二度と来なくなりますから、そのほうが良い場合は、まあ、良いのですが、本人は、一週間くらい、ショックで寝込みますし、お客さん、無くします。(脅迫ではありません。)


 時々、50年以上やってる、フルートのレッスンを受けに、中心部に出かけますが、『このところ、行き帰りだけで、疲れる。レッスン減らそうかな。』とか、奥さんのビーちゃんに、照れ隠しで、こう、言いますが・・・


『そんなに疲れるなら、もう、発表会とかも、出るのやあめたら? 社会の役に立つわけでもなし。下手ったくそなんだし。』


 と、言われてしまいます。


 これは、でも、正しくありません。


 これだけが、やましんを社会に繋いでいるのだから、そこを断ち切るのは、事実上の、死刑宣告なのです。


 もっとも、実際、そうしたいのかもしれません。


 それはともかく、街でやましんと出会ったら、そっとしておくことが、一番です。


 『あんた、なんかさあ、余計な事を、言ったり書いたりしたとか、らしいじゃない。』


 なんて、言うと、かなり、危険です。


 もちろん、これは、言わなければ、話にならん、と、お思いのような、まことにけしからん、という場合は、忠告してやってよいのですが、まずは、くだらないことでも何でもいいから、ちょっと、まずは、いったん褒めといて、それから、批判することが大切です。


 外交や、商談、交渉、お手紙、メールなどでも、一定の礼儀というものが、ありますでしょう?


 攻撃性は、非常に低いので、襲われることは、まず、ありません。


 お酒は飲まないので、酔っていることは、これも、まずありません。


 ぼけてはいますが、しらふです。


 こううつ薬とか飲んでますが、危険性を生じるような影響は、まず、ありません。


 お金はいつも3千円くらいしか持ってないので、役には立ちません。


 文章を書かせると、いくらか、ちょっと皮肉になったり、少し攻撃的になることがありますが、くまさんのように、相手に危害を加えるようなことは、よほどのことでもないと、やりませんし、偉い人に対してしか、やりませんし、気弱なため、それも、お話の中に隠してしまうことがほとんどです。


 というわけで、もし、街でやましんに出くわしても、攻撃したりしないで、しずかに、やりすごしましょう。


 もう、あまり、長くはないのですからね。


 老害なんてことばも、最近、若い世代から、良く聴くことばではありますが、やましんは、なんにも、力がありませんのです。


 え? 金儲けにならない老人は、山に捨てろ? ですか。


 それをいちゃああ、おしまいよ。



                🐻



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『やましんに出会ったとき』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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