第7話
back or enter⑦
俺は空雄のいつも使っているパソコンに彼等へのメッセージを書いている。
彼等との思い出を書き終え…enterを押した。
久しぶりに集まったメンバーとモンハン大会を始めた。
「矢吹さん来たら空雄の断髪式やろうぜ」
「そうだね」
どことなく大人びた彼等は去年と同じくこの教室でモンハンをしている。
「最近やってないから、操作がわからん!」
「俺もだよ!」
わいわいしている。
空雄はなんとなくパソコンを起動したー。
ワードが開かれていた。
ニート諸君ごちけんよう
矢吹だ。
俺は勘違いされしていた。
君達の将来を考えて想像していたが、それは違っていた。
君達は今を生きている。
それが全てだったんだときずいた。
俺が面倒を見ていたのではなくて君達が俺の面倒を見ていてくれていた。
全員で空雄の断髪式をやってくれ。君達に俺はもう必要ない。俺は君達を見ていて自分の限界が知りたくなったからここから消える事にした。
俺も巻けないから君達も負けるな。また会うことがあったら酒でも飲もう。
じゃあな
矢吹
「…誤字多いな…」
空雄は教室に戻った。
「矢吹さん来ないよ…あの人は異世界へ旅立ちました」
「なにそれ!」
「PC見てこいよ」
全員でパソコンを覗いた。
「誤字多くない?」
「かっこつけようとして文章残したけどカッコ悪いな!」
「あの人らしいわ」
「俺はああなりたいな…」
「俺も」
「崇君も笑ってるよな」
「そうだね」
「よし!髪を切ろう」
彼等は順番に空雄の髪を切り始めた。一週じゃ足りなくて皆で椅子取りゲーム見たいに切り始めた。
「真面目に切れよ!」
「解ってるよ」
「前髪切るなよ!」
「もう切っちゃったよ」
「可愛いね」
「おかしいだろ!これ」
「おかっぱになった!」
「前髪揃ってるね!」
「揃えなくていいよ!」
「シロみたいになったね」
「クロが良かったな!」
空雄はおかっぱになった。
皆で笑った。
皆で教室を掃除した。
皆で教室を出て行った。
戻るのは怖くない、閉じ籠るのも勇気がいる。目の前の扉を開けるのが怖いんじゃない、第一声になんといって良いのか解らないだけ。普通って何?と疑問なんて持たなくていい。我らはそれぞれが違う個体だから、他人と違うのが当たり前なんだ。孤独だけど一人じゃないって解っていれば悩むことなんてどうでもよくなる。なりたいものなんて要らない、自分は自分にしかなれない、決して他人にはなれないんだ。だから、自分を知っていくしかないんだよ。他人を知るから自分に気づく。
その為に次にいくー。
大久保の公園で野球の練習を見ている。
あの時と同じように孤独を感じている。
でも、あの時よりも色んな事を知っているから悲しくない…。
悲しくない。
おわり
Back of enter 門前払 勝無 @kaburemono
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